夜の平和を守ります。
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「なんてこったぃ…」
カラッポの箱を見たオレはその場に座り込み、頭を垂れた。
またしても売り切れ。
お気に入りのアメだけど、そんなに人気があっただろうか。
オレは歯を噛みしめ、顔を上げ、勢いよく立ち上がった。
「誰だ!! 名乗り出ろ!! マジブッ転がす!!」
「禁煙中のヘビースモーカーみたいにキレた」
城山とともにコンビニの出入口から眺めていた夏目が言う。
確かにあのアメはオレにとってタバコみたいなものだ。
コンビニの店員もオレの荒れようにビビっているのか、腰が引けていた。
こうなればなにがなんでも欲しくなる。
ここで帰ってたら負けた気がするし。
オレ達は外に出て男鹿達と合流する。
「それで男鹿、おまえもなんでこんな夜遅く出歩いてんだ」
「古市からヘルプメールがあってな。不良に絡まれたから助けてくれ、って。ボコボコにしたその帰りにコンビニ立ち寄ったんだ」
「ダブ」
ベル坊も頷く。
古市絡まれやすそうだな。
「因幡先輩、憐れむような目を向けないでください! 毒をもって毒を制しただけです!」
毒って、オレ達不良か。
「その不良、他校の奴らだった?」
「ああ。最近多いな」
邦枝に問われ、答える男鹿。
「邦枝先輩方もこんな時間になにを?」
古市の問いに、邦枝は夜の見回りをやっていることを話した。
すると、さっき男鹿にヘルプメールを送ったとは思えない発言をする。
「わかりました! そういうことならオレ達も同行します! 石矢魔町の平和をオレ達で守りましょう! な、男鹿!」
「あ?」
男鹿も巻きぞいになる。
「来なくていいから!」と大森。
「帰って」と谷村。
「ま…、まあ、男鹿も、どうしても来たいっていうなら…」
ダメだ。
男鹿も来るとなるとクイーンが劣勢だ。
「姐さん!!」
怒鳴ったのは大森だ。
わかりやすくてカワイイぞ、クイーン。
次のコンビニを目指してオレ達もまた同行させてもらう。
それにしても、たかがコンビニ行くくらいで、どうしてこんなに知り合いがついてくるのだろうか。
オレの脳に、自然と「もーもたろさん、ももたろさん」とBGMが流れ出す。
次のコンビニも遠いな。
その間にも、一般人に絡んだり、壁にラクガキしている他校の不良を見かけては邦枝達に混じって成敗した。
ようやく3件目のコンビニが見えてきた。
その隣のファミレスを通過しようとした時だ。
「……は?」
コンビニの窓から見覚えのあるリーゼントと金髪が見えた。
「っと、なんだ?」
思わず立ち止まってしまい、背後を歩いていた男鹿とぶつかる。
その場にいる全員がオレの視線を追った。
「え!? 神崎さん!?」
「姫ちゃんも一緒だねぇ」
「あいつらなにを…」
男鹿が言いかけたところで、オレは「下がれ下がれ!」とその場にいる全員をファミレスの向かい側にある路地へと押し込む。
ここなら薄暗くてよく見えないはずだ。
そこからファミレスの窓を窺った。
間違いなく、神崎と姫川だ。
向かい合わせになって奥の席に座り、コーヒーか紅茶かを飲みながらなにやら真剣な面持ちで話している。
「どうして隠れるのよ」
声を潜めて尋ねる邦枝にオレはキリッとした表情で返す。
「なにやら密談っぽいからだ!」
「コンビニはいいんですか? すぐそこですよ」
「…古市、あんなとこ通り過ぎようとしたら見つかっちまうだろ! 2人でなんかする予定がオレのせいで狂っちまうかもしれねえんだぞ!」
オレは胸部分の服をつかみ、興奮を抑えようとした。
「因幡? なにを期待している?」
城山が不安げに尋ねてくる。
「あ、動き出した」
夏目の言葉にはっと2人を見上げる。
2人は席を立ち、レジに向かい、会計を済ませて出てきた。
そこで別れではなさそうで、2人は肩を並ばせて先を行く。
「城山、神崎の家ってこの先か?」
「い、いや、まったく反対方向だ。か、神崎さんがオレ達に黙って姫川とどこへ…」
城山も動揺しているようだ。
ますます期待が膨らむオレの胸。
心の中ではガッツポーズをしている。
これはコンビニに寄ってるヒマはないぞ。
「つけるぞ」
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