男を返してください。
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「クソ!」
「もう1回!」
歩道橋に戻った神崎達。
姫川と因幡は階段の上から一緒に転がり、元に戻ろうとした。
だが、一発で元に戻れるというわけではなかった。
胸は戻っても下が女のまま、体は戻っても身長が高いまま、声が女のままなど、中途半端に戻ってしまう。
裂け目が閉じかけているのか、と因幡は考えた。
ボロボロの2人はもう一度階段の上から転がり落ちてみる。
「今度はどうだ!?」
「駄目だ! 片方の胸だけ男のままだ!」
「チクショー」と叫びながら2人はもう一度階段の上に上がった。
それを上から見守る神崎達。
「これはもう心中にしか見えない…」と夏目。
「あいつらもタフだな…」と城山。
「早くしないと警察呼ばれるぞ」と神崎。
「見つけたぞ! あいつだ!」
反対側の階段から不良達が険しい顔で登ってくる。
因幡が倒した不良達だ。
リベンジなのか、数も多くなっている。
「…またてめーは…」
察した姫川は呆れた目を向ける。
「あいつらなんて知らないもん」
因幡は素知らぬ顔をした。
「「もん」じゃねーよっ!」
パンッ、と再び神崎に頭を叩かれる。
「メンドクセーな、一旦離れるか?」
姫川と因幡は先に階段を下りて行く。
続いて神崎、城山、夏目の順で駆けおりる。
「あ!」
その途中、城山は誤って神崎の靴の裏を踏んでしまった。
「!?」
「は!!?」
バランスを崩した神崎はそのまま姫川と因幡に向かって転落した。
神崎がぶつかった2人は巻き添えを食らい、一番下まで落ちてしまう。
「神崎さーん!」
「あらら…」
城山と夏目も急いで駆けおりる。
3人は痛みで顔をしかめ、身を起こす。
「あ…、戻った!」
最初に気付いたのは姫川だ。
胸も下半身も声も男に戻っている。
「あれ? オレ、戻ってねーんだけど」
一方、因幡は男のままだった。
まさか、と思って因幡達の視線が神崎に移り、フリーズする。
「痛ってぇ…っ。あれ、声が…」
神崎も嫌な予感を覚え、おそるおそる胸を触ってみる。
ぐにゃり
「今度はオレかあああああ!!!;」
ヒゲもいつの間にかなくなっている。
「胸は控えめか…。意外とカワイイ系に入るのか?」
姫川は冷静に分析する。
「わぁ、女の子の神崎君だー」
「か、神崎さん…っ、オレは好みです!」
メキッ!
無言で怒った神崎は城山の顔面にかかと落としを食らわせた。
「戻せーっ!!」
そのあと因幡の胸倉をつかんでがくんがくんと揺すった。
吐き気を覚えながら因幡は「むぅーりぃー」と答える。
「今度はオレと神崎が階段から落ちないと…」
階段を見上げると、不良達はこちらを見下ろしている。
一緒に落ちようにも大変邪魔だ。
「反対側からもう一度登るしかないだろ」
姫川が案を出し、それに乗ることに。
反対側の階段から登るためには、一度向こうの歩道を渡るしかない。
「出来るだけ奴らを歩道橋からはがさないと…」
夏目の言葉に頷き、早速行動に出る。
まずは向こうへ渡る信号を通らなければ。
「待てやコラァ!」
「逃げんじゃねえええ!」
因幡は挑発に乗って立ち向かいそうになるが、姫川がそれを止め、腕を引っ張った。
「バカ。てめぇが来ねーと意味ねぇんだよ!」
横断歩道を渡り、反対側の歩道橋を目指す。
「わっ!」
その時、神崎はズボンの裾を踏んでしまい、転んでしまう。
「神崎!」
因幡は立ち止まり、神崎に振り返る。
「しめた! あの女捕まえろ!」
後ろから追いかけていた不良達は神崎を人質にと考えて手を伸ばすが、その手を姫川のスタンバトンが払う。
鉄の塊を当てられた不良は悲鳴を上げた。
「姫川!」
「今度はオレが彼氏役か?」
不良達に囲まれてしまう前に、姫川は神崎を肩に担いで走りだす。
「わっ。おい! 下ろせ! 歩けるって!」
いたたまれない体勢に神崎は姫川の背中を叩くが、姫川は下ろさずに走り続ける。
「また転んじまうぞ。……軽くなったな」
「下ーろーせー!」
城山は羨ましそうに見ている。
夏目は「姫ちゃん、そこはお姫さまだっこでしょ」とからかいを含めて言った。
因幡は写真に収めようかとポケットから携帯を出しかけたが、ジャンルが違うと考えて断念する。
歩道橋の階段を駆け上がり、例の階段へ行くが、
「!」
二手に分かれていたのか、反対側の歩道橋からも不良達が上がってきた。
そして、後ろからももう一方の不良達が駆けあがり、挟まれてしまう。
「……このあと、どうするか考えてんのか?」と肩から下ろされる神崎。
「そりゃやっぱり…」とコブシを鳴らす因幡。
「落とすしかねーだろ」とスタンバトンを構える姫川。
「うらあああああ!!」
次々と向かってくる不良達を歩道橋から容赦なく落としていく。
通行人や車の運転手もびっくりだ。
「!」
神崎と因幡の目に、姫川の背後を狙って金属バットを振りかぶった不良が映った。
「後ろだ姫川!」
「!」
神崎の声にはっと振り返る姫川だが、その前に不良の角材が顔面に当たりそうになる。
「物騒なモン振り回すんじゃねえ!!」
歩道橋の欄干を踏み台にジャンプした因幡は、金属バットを勢いよく踏みつけた。
しかし、勢いがよすぎたのか、金属バットは曲がるどころか折れてしまい、因幡の右足は歩道橋を突きぬけた。
「…うそ…」
夏目が思わず呟くほどだ。
「あ…、ぬ…、抜けない…っ」
その場は静かになったが、不良のひとりがはっと我に返った。
「チャンスだ! こいつスゲーけどバカだ!! 自分で動けなくなってんぞ!」
不良達が一斉に動き出した。
急いで夏目と城山は一緒に因幡の腕や足を引っ張るが、因幡が痛がるだけだ。
「痛い痛い! いいっ! 自分で抜く!」
男の体だと威力は倍に上がるみたいだが、自分の体でも扱えないほどだ。
因幡は歯を食いしばり、足に力を入れた。
「因幡ちゃん早く早く!」
かっこうの的だ。
不良達は動けなくなった因幡と女になってしまった神崎を的にして向かってきた。
「こ…んの…!!」
抜けた。
だが、抜く勢いも良すぎた。
因幡の足が抜けるとそこからヒビが根っこのように広がり、
「は?」
歩道橋が真ん中からぽっきりと折れてしまった。
ズーン!!
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