男を返してください。
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性別が入れ替わってしまった。
因幡が男の体になり、姫川が女の体になってしまったのだ。
それは外見が大きく証明していた。
因幡の身長は神崎より高くなり、喉仏は出現し、サラシで巻いていた胸もまっ平らになっている。
姫川の身長は神崎より低くなり、喉仏は消え、因幡を越える胸を持っている。
「…ポリシー取ると、スゲー美人だな。オレより胸あるし。なにそれ、メロンでも入ってんのかよ。つーか、誰だおまえ」
「姫川だ」
女の声で因幡に答える姫川。
そこで夏目が因幡に小声で尋ねる。
「ちなみに…、あるの?」
セクハラ発言に入るが、それは因幡も気になっていたことだ。
夏目に背を向け、そっとズボンの中を確認してみる。
「………これは……、立派なものなのか?」
「あったんだ」
姫川は横から覗きこみ、「中の上」と答えた。
なぜか誇らしげになる因幡。
「ヒロインらしくない反応だぞ」
城山がもっともなツッコミを入れる。
姫川も一応隠れて確認してみたが、案の定、なくなっていた。
持ち合わせていたいものだったのか、こちらはショックを受けている。
「この展開なら、心と体が入れ替わるのがよくある展開だろ。なんだよ、性別が入れ替わるって」
神崎は肩を落とし、驚きを通り越して呆れかえっている。
姫川はそんな神崎の目の前に近づき、見上げた。
「新鮮だな。この光景…」
「てめーは呑気になにを…」
言いかけたとき、突然神崎は姫川に両手で頭をつかまれ、ぐいっと強引に胸に押し付けられた。
「!?」
「なにやってんだ!?」
その光景に愕然とする因幡達。
男の幸せに挟まれている神崎は息苦しさに顔を上げようと試みるが、しっかりと頭を抱えた姫川の腕がそれを阻止する。
姫川の背中を叩き続けていた神崎の手がだらりと下がった。
窒息寸前だ。
「おお…。女の胸って窒息可能なんだな」
「実験するなっ!!」
解放された神崎の顔は真っ赤だ。
両手両膝を地につけ、酸素を貪っている。
「嬉しかったろ?」
「苦しかったわっ!!」
「…古市なら絶対そんな反応しねえだろな」
古市が両手を広げて「大歓迎です!」「もっとやってください」と言ってる図を思い浮かべてしまい、自分で言っておきながら姫川は気分を悪くした。
「神崎いじめて頭も落ち着いたし、元に戻る方法も思い浮かんだ」
「もう1回階段から一緒に落ちる、だろ」
「…すげーな、因幡」
本気で驚いている姫川に、因幡は、バカにしてんのか、と眉をひそめて声を上げた。
「普通考えるだろ! マンガでも、大体それで元に戻ってんだろ!」
「また痛い思いすることになるけど…、ほら…」
姫川は因幡の手首を引っ張るが、因幡は足の裏に根が生えたように動かない。
「因幡?」
神崎達も怪訝な顔をする。
「……………」
因幡は自分の喉仏と胸を触り、姫川を見下ろし、意地の悪い笑みを浮かべた。
姫川はその表情に嫌な予感を覚え、それは早くも的中する。
「もう少しこのままでいいんじゃね?」
「はぁ!?」
「だって、性別が変わる機会なんてもう一生ないだろうし」
「おい待て因幡、てめー、なに言ってんだ。2度となくていいんだよ、こんな機会」
そう言う姫川に、因幡は「くくっ」と怪しい笑いをする。
「姫川だってあるだろ? 一度でもいいから女になりたい、とか。オレの場合、その願望を子どもの夢のように持っていた」
因幡は姫川の手を払い、背を向けて神崎と夏目の間を走り抜ける。
その素早い動きに、神崎達も反応が遅れた。
「おい因幡!」
神崎は追いかけて因幡を捕まえようと手を伸ばすが、肩をつかむ前に因幡は大きくジャンプし、街路樹の木の枝に飛び乗った。
「もうちょっとこの体で楽しく過ごさせてもらうぜ!」
神崎達を見下ろしながらそう言って地面に着地し、ダッシュで逃げて行く。
瞬きの間に米粒に見えるくらい距離を離した。
「速っ!」
「オレの体…いや、性別返せ―――!!」
4人は因幡を追いかけるが、男の脚力を得てしまった因幡には追いつけなかった。
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