不良だって歌います。
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学校の帰り、カラオケ店に来た神崎組+因幡。
下校途中、因幡が「カラオケに行ったことがない」と言いだしたのがきっかけだ。
神崎と城山は乗り気ではなかったが、「いい機会だしこの際みんなで行こう」と夏目が提案し、今に至る。
近所のカラオケ店は、1階がファミレスになっていた。
2階に上がった4人はカウンターに立ち、受付する。
「会員証はお持ちですか?」
「会員証?」
首を傾げる因幡。
夏目はサイフから会員証を取り出し、受付スタッフに見せた。
「おお、金持ちのカードみたいだな」
黒いカードと銀色の文字に因幡は目を輝かせる。
カードを見せてあげる夏目は微笑ましげだ。
「機種はどちらになさいますか?」
「機種?」
「因幡君って、ホント初々しいよね」
受付スタッフも夏目と同じく微笑ましい顔をしている。
神崎は、オレも初めてきたときはこんなだったなぁ、と懐かしく思っていた。
フリータイムでドリンクバー付に決定し、マイクを渡され、部屋を案内された4人。
部屋は204号室。
廊下を真っ直ぐ行って突きあたりの部屋だ。
「隣のデカい部屋はなんだ?」
夏目は丁寧に説明する。
「VIPルーム。デカいし、パーティー向きだけど、ルーム料金は今から使う部屋より高い」
「ふーん…」
扉が閉められているということは、誰かが使用しているようだ。
「おい、早く入れよ。時間の無駄だろうが。…なにしてんだよ」
夏目と城山が先に部屋に入ったあと、いつまで経っても入ってこない因幡に、神崎が廊下を窺うと、VIPルームで耳を澄ませる因幡の姿があった。
「いや…、いい声してるから、つい…。あ、この曲知ってる。新曲もう出てたのか。…ほら、あれだ。「たとえば今ここでキミが消えてさ~」から始まるやつ」
「やめとけ。向こうからはこっちが丸見えなんだぞ」
神崎は因幡に近づき、早く連れて行こうと腕をつかみ、動きを止めた。
「…確かにいい声してるな…」
「でもどこかで…」
神崎までも聴き入る。
その時、VIPルームの扉に押され、2人は「ヤバい!」と離れ、自分達の部屋に戻ろうとした。
「おまえらなにしてんの?」
出てきたのは、姫川だった。
マイクを片手に持っての登場だ。
「「おまえこそなにしてんの!!?」」
「つうかさっきの歌声おまえかよ!!」と神崎。
姫川はVIPルームで一人カラオケをしていたと話す。
「なんて寂しい奴なんだ」
神崎の言葉にムッとして言い返す。
「ヘタな奴の歌聴くくらいなら一人で歌いてぇんだよ」
「VIPルームでか」
姫川らしいといえば姫川らしい。
「それで、てめぇらはなに堂々とこっちの部屋に移ってきてんだ」
姫川がギロリと睨む先には、自分達のドリンクと荷物を持ってVIPルームへと移動してきた夏目と因幡がいた。
「まあまあ、せっかくこのメンバーだし、姫ちゃんも一緒に歌おうよ」
「ふざけんじゃねーよ、コラ。てめーらのヘタな歌なんざ…」
「じゃあオレ先に入れよー」
「聞けよ!!」
分厚い曲本を机に叩きつける姫川に構わず、夏目はリモコンでピッピッと曲を入れ、城山にまわした。
「神崎さん、お先にどうぞ」
「いいから、先、おまえ入れろ」
いきなり部屋を占領され、姫川は呆れたのか諦めたのか、ソファーに腰を下ろし、「もう好きにしてくれ」と項垂れた。
曲が始まり、夏目はマイクを手に持った。
部屋のライトがそれに合わせて自動的に調整される。
どこかで聴いたことがる。
「バレンタインデー・キッス♪」
サビ、ポーズもバッチリ。
「中の人オタじゃねーとわかんねェ!!」
「しかしムカつくことにウメェ!!」
因幡に続き、姫川もツッコむ。
さすが歌も爽やか男子。
これなら盛り上がるうえに、女の子にモッテモテだ。
夏目が歌っている途中で城山が「デューワ、デューワ」と合いの手を入れる。
練習でもしていたのか。
曲も終わり、次は城山の番だ。
「ガーラスのじゅーうーだーい♪」
「古っ!!!」と因幡。
「光/ゲンジ…」と神崎。
「平成のコはちょっとわかりにくいかな」と夏目。
「声渋いな」と姫川。
城山はそんなツッコミなど聞かずにマイクを右手に、左手はコブシを握る。
ローラースケートで走りださんとする熱唱ぶりだ。
曲が終わり、城山は自分のウーロン茶を一気飲みする。
しかし、すぐに入れ替えに行こうとはしない。
なぜなら、次の歌い手は神崎だからだ。
本人映像とともに曲が流れる。
「F/L/O/W!!?」
家柄が家柄のため、因幡はてっきり演歌がくるのかと構えていたが、迷いなく最近の曲だ。
「声が良いのは知ってたけど、歌うと威力半端ねーな。…ヤベェ、オレ、かなりテンション上がってきた」
「これ相方必要だろ。デュエットなんだし…。しょうがねーな」
姫川もマイクを片手に相方を歌いだす。
「てめぇ、勝手に、割り込んでじゃねーYO!♪」
「手伝ってやるYO♪」
うまくラップパートにのせる2人。
因幡、かなりハイテンション。
写メも、「Bang!」と合いの手を忘れない。
互いの歌を見せつけるかのように歌いきった2人は「「次!」」と因幡にマイクを渡す。
「2つもいらないんだけど」
因幡がマイクを受け取ると、予約しておいた曲が始まり、男性陣が「ん?」と反応した。
「この曲…」と神崎。
「ノース/リーブス!!?」と姫川。
マイクを手に、因幡は息を吸った。
そして、曲が終わり、因幡以外全員が唖然としていた。
「ど…、どう…だった?」
因幡は緊張で顔を真っ赤にしている。
不安げに尋ねる因幡に全員はっとして拍手を送った。
「上手だったよ、因幡君」と夏目。
「完全に女の声だったぞ。歌ったら絶対バレる」と神崎。
「ホント…、どうして最初こいつの性別に気付かなかったんだろうな、オレ達」と姫川。
続いて姫川の曲が始まる。
この間にドリンクバーに行こうと立ち上がった城山に、神崎は「オレのもついできてくれ」と言って自分のグラスを渡した。
姫川のポ/ル/ノと夏目のH/Yが終わったとき、ちょうど城山も戻ってきた。
「おう、遅かったな」
「か…、神崎さん…」
バツの悪そうな城山の背後には、
「よっ」
「ダッ」
「先輩方もカラオケですか?」
男鹿達がいた。
その手には、こちらに移る気満々でドリンクと荷物が持たれている。
神崎は城山の胸倉をつかみ、壁に押し付けた。
「オレはドリンクついでこいっつったんだぞ。誰が男鹿連れてこいっつったよ!? ああ!?」
「すみません。本当、すみません;」
城山を責める神崎を、夏目は「まあまあ」となだめた。
「いいじゃねーか、神崎。たくさんいた方が盛り上がるぞ」
因幡は選曲しながら言った。
「おまえらも似たようなモンだろうが。ルーム代は出さねぇぞ。神崎、次おまえ」
姫川はそう言って神崎にマイクを手渡した。
「よっ、先輩!」
古市は拍手を送る。
「…フフン、まあおまえらがどうしてもここで歌いたいってなら好きにしやがれ」
期待の拍手に気分を良くした神崎は、ええ声で歌いだす。
「あ、邦枝? 今からカラオケ来ないか? 男鹿も一緒。レッドテイル全員連れてこいよ」
どうせなら、と因幡は携帯を取り出して邦枝に電話をかけた。
姫川は「調子に乗るなっての」とマイクで軽く因幡を小突く。
神崎が終わり、割り込みで男鹿と古市は2人で青春/アミーゴを歌いだす。
その時、店員がVIPルームに入ってきた。
「お客様、勝手に部屋を移動されては困りまーす!」
全員の視線が店員に集まり、「あ」と同時に声を出した。
「東条…」とマイクで言う男鹿。
「む?」
その店員は、バイト中の東条だった。
その頃、モニタールームでは、店長と他のスタッフ達がVIPルームの映像を見て苦渋に満ちた顔を浮かべていた。
「…誰か…文句言ってこい」
「店長、勘弁して下さい」
「あれ全員石矢魔ですよ」
「なんか、レッドテイルまで来ちゃったし…」
「東条君まで歌いだしましたよ」
「っていうか、あれってアバレオーガじゃ…?」
「っていうか、東邦神姫勢ぞろい」
「っていうか…、全員半端なく歌うまいんスけどっ!?」
モニター越しには、盛り上がり、すっかり狭くなったVIPルームがある。
誰も注意に行けなかったので、結局フリータイムを使いきった石矢魔メンバーズ。
帰り際、因幡が「また行こうぜー」と言いだしたのを聞いたカラオケ店スタッフ面々は、引きつった笑いしかでなかったとか。
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