ただの日記には書ききれません。
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「やっぱり陰謀だ…」
因幡はプールサイドに座り、足だけプールの水につけたまま、8月を思わせるような真っ青な空を見上げながら呟いた。
それを聞いていたのは、近くで泳いでいた神崎だ。
ぷかぷかと仰向けに気持ち良さげに泳ぎながら「なにがだー?」と抜けた声で尋ねる。
「石矢魔校舎だけクーラーが効かなくて、詫びとしてプールを使わせてもらったのはいいとしよう」
「うん」
「だが、学校から水着を借りてからプールに来た途端、アレ(うちの母さん)と偶然出くわすのはおかしくねーか?」
「……………」
それは神崎も思っていた。
プールに到着するなり、コハルと出くわしてしまったのだ。
相手が言うには、「専用の水着が必要でしょ?」ってことで因幡に水着を届けに来たらしい。
現在コハルは、日傘をさしながらプールサイドの隅で資料用の写真を撮りまくっていた。
「「出てけ」って言ったら、「水着をビキニに替えるわよ?」って笑顔で脅してくるし…」
校長と手を組んでいたのではないかと疑わずにはいられなかった。
「プールで泳ぐっつーからどうするのかと思えば…」
神崎は改めて因幡の格好を見る。
下は真っ青なサーフトランクス、上は白のタンクトップだ。
サラシもきつくして胸の膨らみもおさえているので、一目で女とはバレない。
「ちゃんとそれ用の水着を用意してくれてよかったじゃねーか」
そう言ったのは、プールサイドに置いたビーチベンチの上で寝転がっている姫川だ。
「てめーもいつの間に何持ち込んでんだ。ビーチ気分か」
神崎は呆れてつっこむ。
ため息をついた因幡は辺りを見回してみる。
真夏並みの暑さの中、冷たいプールではしゃぐ石矢魔の面々。
烈怒帝留はビーチボールで遊び、それを遠くから眺める古市、男鹿とベル坊は浮き輪で浮かびながら昼寝し、東条はアイスを売って…。
「本当にビーチ気分だっ!!」
海でよく見かける光景にさすがにつっこんだ。
「因幡、競泳でもするか?」
そこで神崎が勝負を持ちかけてきた。
「お。なに、やる気じゃねーか」
「勝った方がアイス奢りとかどうだ?」
「のった」
因幡は頷き、移動して神崎とともに飛び込み台の上に立つ。
「向こう側に到着した方が勝ちな。おまえ、何で泳ぐ気だ?」
神崎に聞かれ、因幡は鼻で笑って答える。
「オレは、フリーしか泳がない」
「わかる奴にはわかるセリフ言うのやめろ?」
ほとんどの石矢魔勢は2人のジャマにならないプールサイド沿いからその勝負の行方を見守っていた。
中には、賭けまでしている輩までいる。
審判は夏目だ。
「よーい」
夏目が「どん」とかけ声をかけると同時に、神崎と因幡がプールに飛び込み、水しぶきを上げた。
どちらもクロールで競っている。
出だしが遅れた因幡だったが、足をばたつかせて遅れた分を取り戻し、ぐんぐんと神崎と距離を縮めていく。
「因幡ちゃん! もうちょっとだよ!」
「神崎さん! 頑張ってください!!」
夏目、城山、姫川はスタート地点からそれを見守っている。
神崎と因幡が並び、両者の瞳が一瞬ぶつかる。
((負けるか…!!))
たかがアイス1つだが、勝負ごとに関しては本気でぶつかり合う2人だ。
ゴールは目の前、どちらが先に壁にタッチするか。
「「!!?」」
その時、突然目の前に男鹿とベル坊を載せた浮き輪が流れてきた。
バシャーンッ
競泳中の2人にぶつかって浮き輪はひっくり返ってしまい、男鹿とベル坊が水の中へと落ちてしまう。
「あ…」
「やば…」
因幡と神崎、それを見守っていた石矢魔勢も顔を真っ青にする。
同時に、プールがカッと光った。
その数分後、水着に着替えた早乙女がプールに現れ、生徒たちが黒焦げでプールに浮かんでいる惨状を目撃した。
「土左衛門!!?」
「電気プールなので今は入らない方がいいですよ」
見ていたコハルは警告する。
プールサイドで観戦していたおかげで無事だった夏目と城山と姫川と他の生徒は、竹ぼうきや長い枝を使って浮かんでいる因幡達を壁際に寄せ、救出していた。
うつ伏せに浮かんでいる男鹿の背中ですんすんと鼻を啜っているベル坊はあえて後回しだ。
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