ただの日記には書ききれません。
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まだ夏の暑さが残る9月の最中。
聖石矢魔学園に来て間もないころ、石矢魔メンバーは特設教室で生き地獄を味わっていた。
学校の陰謀か、ただの故障か、その教室だけクーラーがまったく起動せず、特設教室はサウナと化していた。
誰もが汗を浮かべた顔で唸り、雑誌などで自らの顔を扇ぐ生徒もいれば、温くなった缶ジュースを飲んで水分補給をする生徒もいるし、半裸になった生徒もいる。
「クソ…、残暑め」
その中で、因幡はキャンディーを咥えたまま机に右頬をつけ、教室を籠らせる熱気を睨みつけていた。
「おまえ、顔真っ青だけど平気なのかよ?」
その後ろの席に座る姫川が、こちらもやはり汗を浮かべながら、因幡の心配をした。
「平気に決まってんだろ。今、冷たい川を渡る妄想で誤魔化してるところだ」
「それ三途の川じゃね?」
「う~…。それでも暑い…。マジ暑い。暑い暑い暑い暑い暑い暑い…」
「念仏みたいに唱えんな。ここにいる全員わかってんだよ」
「てめーもその暑苦しい頭やめろよ。その中に熱がこもりにこもってるかと思うと数十倍暑苦しいんだよ。解け。もしくは外せ」
振り返らずに恨みがましく言う因幡に、苛立った姫川は机を叩いた。
「外れねえよ!! 挙句の果てには人のせいにしてんじゃねえ! 因幡、こっち向け」
「あー?」
だるそうに肩越しに振り返ると、
「ジャーンケーン」
「!」
突然姫川がコブシを突き出してそんなことを言い出すので、因幡は咄嗟にグーを出した。
姫川はパーだ。
負けた因幡に渡されたのは、うちわだ。
「ガンバレ」
「くっ…」
腑に落ちないが、因幡はうちわを姫川に向けて扇ぐ。
交代制と言われ、あとで自分も扇がれると思うと断り切れなかった。
「もうちょっと強く扇げ」
「そろそろかわれよ」
「5分経ったらっつっただろ」
「1分にしろよ!!」
「最初に5分って言った」
「脱水症状で死ぬ!!」
「おい押し付けんなっ」
「かわれかわれかわれ―――っ!!」
そこで見兼ねた神崎が止めに入った。
「うちわもめしてんじゃねーよ」ドヤァ
「「ドヤ顔で注意すんな」」
うまいこと言った、と言いたげな顔だった。
「ちょっと職員室に抗議してこよーぜ。先公の奴ら、オレ達石矢魔を熱中症で苦しませて抹殺する気だ。なめやがって。カビたミカンのように腐った教師共が。オレ達もてめーらのカワイイ教え子だっつーの」
暑いあまりに怒りの矛先を教師たちに向けて席から立ち上がる因幡に、クラス委員でもある邦枝は「やめなさい」と止める。
「いや、邦枝、一理あるぜ」
そこで因幡の肩を持ったのは神崎だ。
「陰謀だろ、どう考えてもよ。城山の話じゃ、聖校舎はガンガンにクーラーがかかってるそうだ。カクサ社会がなんぼのもんだ!! それを身を持って知るほど大人じゃねーんだこっちもよぉ!! そうだろ因幡!!」
怒れる神崎に因幡も「その通りだぜ神崎!!」と返し、それにつられて他の石矢魔生徒も次々と立ち上がる。
「そうだそうだ!!」
「いくらオレ達が不良でもよぉ!!」
「この仕打ちはあんまりだぜ!!」
「先公のヤロウ共がぁ!!」
「オレ達にオアシスをー!!」
怒りを露わにした石矢魔生徒達を見て、因幡と神崎は教卓の上に立つ。
「今から職員室乗り込みにいくぞ野郎共ぉっ!!」
神崎が叫ぶと、クラスの半分以上が「おーっ!!」とコブシを突き上げた。
「オレ達についてこいやぁ!!」
「「「「「おーっ!!」」」」」
「ちょ、ちょっと! それこそ退学に…っ。待ちなさい!」
邦枝の制止の言葉も聞かず、因幡と神崎を先頭に石矢魔生徒達が教室から出て行く。
夏目と城山、姫川もその後ろに続くと、突然目の前の生徒達が停止した。
「お、なんだ?」
先頭を見ると、因幡と神崎が、タバコを咥えたまま教室に向かう途中の早乙女と対峙していた。
「なに騒いでんだおまえら」
「どけよ、早乙女。オレ達はこれから職員室に乗り込むんだ」
「おうよ。邪魔すっと先公と言えどもブッ転がすぞ」
ガン垂れる神崎と因幡に、早乙女はタバコの煙をため息とともに吐き出す。
「せっかくおまえらに朗報持ってきてやったっつーのに」
「「朗報?」」
「じーさん(校長)が、この校舎のエアコンが使えなくて暑いだろうと思って、プールの使用許可出してくれたぞ。この学園のプール、9月の中旬まで開いてるって…」
「「「「「先生ぃ―――っっ!!!!」」」」」
因幡と他の石矢魔生徒達が感動のあまり早乙女に抱き着いた。
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