ただの日記には書ききれません。
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新年の早朝、神崎は緑のちゃんちゃんこを羽織い、欠伸をしながら玄関で靴を履く。
外にいる部下達に新年の挨拶をするためだ。
「よう、あけおめ…」
その光景に、神崎の眠気が一気に覚める。
数人の部下達がボロボロになって玄関先で倒れていたからだ。
「カチコミ…!!?」
警戒した神崎だったが、倒れた部下達の中心に見慣れた人物が立っていることに気付いた。
「…因幡?」
息の荒い因幡はその声にビクッと体を震わせ、右手に持っていたなにかを背中に隠し、「よ、よう神崎。あけおめー」とムリヤリ笑みを作って挨拶する。
「これ、おまえがやったのか?」
「え? あ、あー…。他の組のモンかと思われたのかいきなり襲ってこられて…」
「いや、何度もオレんチ来たことあるだろ」
ほとんどの部下達が因幡の顔を知らないはずがない。
「正月ボケって怖いよなぁ」
「始まったばかりだし」
「いいから! いちいちつっこむなよ。はいこれ、本当の年賀状」
因幡は神崎に近づくと、手提げの袋から一枚の年賀状を取り出して押しつけるように渡した。
年賀状の裏には、家の庭で撮影された因幡姉弟の写真と“あけおめ!! ことよろ!!”と因幡の文字で大きく手書きされていた。
「本当の?」
気になるワードに首を傾げる神崎だったが、因幡は急いだ様子で「今年もよろしくなっ」とだけ言うと、ジャンプして神崎家の塀に飛び乗り、忍者のように駆けて行った。
あとで、神崎のケータイに夏目達から連絡があった。
新年早々、因幡が年賀状を配っていることに。
*****
数時間前、早朝、因幡は自分の机の右端に、ポストに出したと思っていた年賀状を見つけてしまいフリーズしていた。
表には、パソコンを使用して印刷したはずのみんなの住所や名前がない。
しばらく考えたあと、「まさか」と冷たい汗が頬を流れた。
因幡姉弟の写真つきの年賀状の他に、コハルが用意した年賀状があった。
コハルに送られたファンレターのファンに送るための特製年賀状だ。
裏には、コハルが手書きした“ヨーグルッチとリーゼント”の姫川と神崎のイチャイチャイラストがある。
「桃ちゃーん、これも印刷しといてほしいんだけど」
「そこ置いといて。あー眠い…」
あの時、まさか間違ってコハルの年賀状に、神崎達の住所を印刷して気付かずにそのままポストに出してしまったのではないか。
自分のミスに気付いて、早朝の眠気から覚めた因幡は、本来送るはずだった年賀状を持って窓から飛び出した。
最初に夏目の家、次に城山の家とまわっていく。
神崎の家に行った時は、すでに部下の手に取られていたので、力づくで奪い取ったのだった。
そして現在因幡は、
「姫川のポストどれだ―――っ!!?」
何十個もある姫川の郵便受けの前で右往左往していた。
新年早々、とんだ年賀状騒ぎ。
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