ただの日記には書ききれません。
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「因幡知らねえか?」
昼休み、神崎組が屋上でだべっていると、そこへ姫川がやってきて尋ねた。
「? 見てねーけど?」
そういえば一緒に登校して1、2限は出席していたが、その後姿を見ていない。
「どこ行ったんだか…」
姫川がため息をついたとき、夏目が言いだした。
「ひょっとして、あれじゃない?」
柵の向こうを見ると、校舎裏に因幡の姿があった。
辺りを駆けまわって落ち葉を一点に竹ぼうきで集めている。
4人は並んでその光景を窺った。
「なにしてんだあいつ…」
因幡はそんな神崎達に気付かず、落ち葉を集め続ける。
教師に掃除をしろとでも言われたのかと思ったが、集めている姿は楽しげに見えた。
鼻唄まで聞こえそうだ。
周りの落ち葉を集め終わり、満足したのかビニール袋からサツマイモを取り出した。
そこでようやく目的が読めた4人。
因幡はそれを5つ袋から取り出し、落ち葉の中に突っ込み、マッチで火をつけた。
黒煙が空にのぼり始め、因幡は儀式でもしているかのように焚き火の周りをぐるぐるとまわっている。
まだかな、まだかな、と目を輝かせていた。
たまにしゃがんだと思ったら、枝で枯れ葉の中にあるサツマイモをつつく。
ワクワク続行。
黒煙モクモク。
しばらくして、頃合いだと思った因幡は枝で中の焼き芋を突き刺して取り出した。
「!!!」
焼き芋は、真っ黒だ。
大事なものを目の前でブチ壊されたようなショックを受け、しょんぼりと肩を落とした。
非常に悲しい背中だ。
ぷるぷると震えている。
((((泣いてる――――ッ!!?))))
見兼ねた神崎達は家庭科室からアルミホイルを借りて因幡の元へと駆け寄った。
*****
城山が言うには、焼き芋はアルミホイルに巻かないと真っ黒に焦げてしまうらしい。
「なるほど―――」
言われた通りにアルミホイルを巻いて焼き上がったイモは、甘くて美味だ。
「オレ達も誘えよなー」
「出来あがってから誘おうとしたんだよ;」
神崎と因幡がそう言っていると、突然、なにかがパンッと弾けた。
火の粉が飛び散り、城山にかかる。
「熱っ!! 因幡、クリも入れたな!?」
風に舞った1枚の紅葉が目の前を通過し、焼き芋の味を堪能しながら因幡は秋空を見上げた。
(すっかり秋だな…)
「ところでこの焼き芋どうしたんだ?」
咀嚼しながら姫川が問う。
「校舎裏の畑からとってきた」
因幡が指をさした先にあった畑には、思いっきり「立入禁止!! 野菜を盗るな、絶対!!」とあった。
他の4人の口の動きが止まる。
「それ完全に野菜ドロボウ…」
「石矢魔クラスの奴らにも焼きたて届けてやろーぜ―――」
因幡はせっせと共犯者作りに取り組む。
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