ただの日記には書ききれません。
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十五夜に月見をしよう、と言いだしたのは母さんだった。
元からイベントが好きな人だったのは知っていたが、本格的な月見をするのは初めてのことだった。
最初は渋っていたオレだったが、いつものメンバーを呼び付ける。
まあ、普通に「月見しようぜ」に「団子食べ放題」を付け加えれば、神崎組はあっさりOK。
問題は坊っちゃんの方だったが、母さん絡みとなると姫川は渋々OKする。
あとが面倒だと知っているからだ。
午後8時。
呼び付けたメンバーはインターフォンを鳴らしてお邪魔する。
「「「「お邪魔しまーす」」」」
「いらっしゃい」
「よー」
オレと母さんで出迎え、庭へと移動する。
そこにはテーブルと折りたたみの椅子が並べられていた。
テーブルには、大皿に盛られているのはオレ達3姉弟で作った白玉団子がある。
あと、ススキノを飾り、秋のフルーツも並べてある。
「本格的だねぇ」
夏目も感心している。
「やっぱり、団子といえば、あんこ…」
「みたらしだろ」
神崎の言葉を遮ったのは姫川だった。
「「あ゛?」」
2人はその場で胸倉をつかんで睨み合う。
「みたらしだぁ? こしあんつぶあんディスってんじゃねーよ」
「そっちこそ、甘ったるいもんに甘ったるいもんつけてどーすんだよ。醤油の苦味がちょうどいいんだろーが」
「「あ゛あん?」」
たかが、あんことみたらしで喧嘩腰にならなくても。
「オ…、オレはどっちかといえば、きなこ派かな?」
オレは喧嘩を止めようと意見を出してみる。
「「てめーは黙ってろ!!」」
「はい、邪魔してすんませーん」
「よしよし」
あっさり一蹴され、オレは夏目と城山に泣きついた。
夏目は優しく頭を撫でて慰めてくれる。
「味付けは全部用意しているのでお好みで」
見兼ねた弟の春樹がそう言うと、
「そういう問題じゃねーんだよ、春樹!」
「このバカにみたらしの良さを叩きこんでやる!」
もう好きにして。
数分後、そんなこんなでお月見タイム。
空には大きな黄色の満月が浮かんでいる。
「よく見えるな…」と城山。
「キレーだね」と夏目。
「いいとこに越したもんだな」とオレ。
坂道の上だから眺めもいいのかもしれない。
そうそう。
あの喧嘩してた2人だが、
「フン。たまには、みたらしってのもいいよな」
「オレ、こしあん気に入ったわ」
揉めの原因となった互いの好物を食べさせたところ、和解したようだ。
「あ、もうなくなっちまった…」
さすがに人数が多いとなくなりも早い。
そこで母さんはアレを持ってきた。
「じゃあ今度はみんなで作りましょうか」
臼ときねだ。
そんなものうちにあったっけ。
「マジで本格的なのきたよ」
オレは呆れてしまう。
オレ達が作った団子は、白玉粉を水と混ぜて丸め、沸騰した湯の中に入れて固めたものだ。
「正月みたいだな」
最後の一口を食べた姫川も呆れたような声を出す。
「じゃあオレがきねで突くから、てめーはひっくり返せ」
神崎は一番先にきねを手に取って振り回す。
「ベタにオレの手ごとつきそうだ。オレがやる」
そう言って姫川は神崎の手からきねを奪おうと引っ張るが、神崎は負けじと食い下がる。
「そんなグロい団子にしねーから寄こせっ。オレがやる! てめーはすでにきね持ってんだろ!」
「は?」
「頭に(笑)」
すまん、オレも噴き出した。
「貸せコラァッ!! 今からてめーの頭かち割って臼型に凹ませてやる!!」
また喧嘩が始まった。
きねを引っ張り合う2人。
巻き添えになって本当に頭かち割られたくないので、夏目達と一緒に温かい眼差しで見守る。
そこで果敢にも仲裁に入ったのが母さんだ。
「あ、きね役の人にはコレをつけてもらうから」
母さんが取り出したのは、立派なウサ耳カチューシャだ。
月で餅をつくウサギをイメージさせる。
ごとり、と2人の足下にきねが落ちる。
「よし、やれ、神崎」
「いやいや、てめーこそ」
取り合っていたのがウソのように譲り合っている。
「できれば神崎君に…。はぁはぁ」
息を荒くしながら、母さんはウサ耳を手に神崎ににじり寄る。
神崎は姫川の両肩を後ろからつかんで盾にした。
「母さん、そろそろ通報されるから」
満月の下、変態にご注意。
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