プレゼント:反抗期ですか!?
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喧嘩というか、姫川と神崎が一方的に相手を完膚なきまでに叩きのめしただけなのだが、とにかく騒ぎは終息した。
二人の周囲には「鬼が……」「悪魔が……」と呻き声を上げながら、ボロ雑巾の様になった不良達が折り重なって倒れていた。
物陰から全てを見ていた三人はそれぞれ違った感想を述べる。
「小規模な人類滅亡を見た気分……」
「わお、すっごいイイ眺め~」
「……」
「男鹿もベル坊も不貞腐れんなよ。今回はしょうがないじゃん。ていうか夏目先輩、イイ眺めって……」
「え、だって因幡ちゃんにふざけた事しようとした連中がコレだよ?姫ちゃんと神崎君、グッジョブ!みたいな」
「……」
腹黒さは否めないが、夏目も因幡に対してどこか甘いところがあると分かってるだけに、古市は敢えて何も言わなかった。
「んだよ、もう終わりか」
「弱っちぃ奴はいくら集まったってカスに変わりねぇんだよ」
そんな三人に気付かぬまま、姫川と神崎は足元に転がる体を足で突き意識の有無を確認していた。
口にする言葉は相当酷いが、溜まった鬱憤を晴らせたからか眉間の皺は幾分か減った様に見える。
二人は突いた体が動かないのを確認すると用済みとばかりに軽く蹴り飛ばし、そして後ろを見た。
「おい」
神崎が因幡に声を掛ける。
しかし、因幡は地面に座り込んだまま動こうとしない。
「いつまで座ってんだ」
今度は姫川が声を掛けるが、やはり反応はない。
様子がおかしい因幡に二人は顔を見合わせる。
「どうしたんでしょう?」
「どっか痛いのかな」
物陰から伺う二人と同様に、姫川と神崎もどこか痛めたのかと因幡に尋ねる。
すると。
「……た」
「あ?」
「何だって?」
ボソッと因幡が何か言っているようだが、小さすぎて最後まで聞き取れないらしく、二人はしゃがみ耳を澄ます。
「聞こえねぇからもっかい言ってみ?」
「……けた」
「だから聞こえねーって」
「抜けたあああああ!!」
「「うおっ!?」」
「「「うわっ!?」」」
いきなり立ち上がったかと思えば拳を突き上げ叫び出した因幡に、姫川と神崎、そして夏目と古市に不貞腐れていた男鹿も驚きの声を上げた。
そんな五人を他所に、因幡は抜けた抜けたと嬉しそうに飛び回っているが、周囲は何がどうしてこうなったのかさっぱり分からず呆気に取られている。
「あー……因幡」
「ちょっとこっち来い」
ハッと正気を取り戻した二人がテンションの高い因幡をちょいちょいと手招きして呼び寄せると、因幡は立ち止まりテテテッと走り寄り「何だ?」と首を傾げる。
「何が抜けたって?」
「ん?コレだよコ・レ!」
そう言って因幡は二人の目の前に手を出して開いて見せた。
「何だろ」
「ここからじゃよく見えませんけど……あれ、何か二人も首傾げてません?」
「でもって何か変な顔してねぇ?」
見せられた二人の反応から何かを探ろうとしたが全く分からなかった。
「「……は?」」
握り拳の中にあった物を見た二人は、古市が言うように首を傾げ、男鹿が言うように変な顔を見せた。
「そう、歯。いやーもうさー、最近ずっと歯が痛くてよぉ。虫歯になっちまったみたいで」
はははと恥ずかしそうに笑いながら告白する因幡に、今度は三人が「「「……は?」」」と首を傾げ変な顔になった。
「飯食う気にならないし、キャンディも舐めれないし、遊ぶにしても気が乗らないし、ジャンプしたり喧嘩したりすると痛みが響くしでさぁ」
でもさっき殴られた衝撃で抜けたんだ、と嬉しそうに語る因幡に五人は絶句した。
この一週間、姫川と神崎だけでなく、石矢魔全体をも巻き込んだ事件の始まりが今、解き明かされた。
それは歯、たった一本の虫歯だったのだ。
「歯医者行くのも嫌だし、どーしよっかなーって思ってたんだよなー……って二人して黙っちゃってどうした?」
因幡は自分を苦しめてきた痛みから解放されたのが嬉しくて気付いていなかった。
姫川と神崎、双方の頭上にまたしても暗雲が立ち込め始めている事に。
「「因幡ああああああああああっっ!!」」
「ぎゃあああああ!?」
ドガシャーンと、因幡の頭上に特大雷が落ちた。
姫川と神崎が一発ずつ拳骨を食らわせた後は、ここが外で硬い地面だろうと関係なく、有無を言わさず正座をさせた。
「いつもあんだけ飴食ってんだったらしっかり歯磨きぐらいしとけこのバカがっっ!!」
「いや、その、後でやろうとは、思ってたんだけど……」
「そうやって後回しにする奴は絶対やらねぇんだよボケッッ!!その結果が今だろうがっっ!!」
「うう……」
仁王立ちで説教をする神崎の言っている事は至極真っ当なだけに、因幡は悔しそうな顔をするが何も言い返せない。
神崎の隣では姫川がどこかに電話を掛けていた。
「蓮井か?俺だ。ちょっと頼みがあってな。歯医者探してくれ。ああ、腕の良い医者頼むわ」
姫川が口にした単語にビクンと肩を揺らしたのは因幡である。
そして恐る恐る姫川に声を掛ける。
「あ、の」
「あ?」
「歯医者って……」
「嫌だっつっても連れてくからな」
「え!?だって抜けたじゃん!もう痛くねー、しぃ……」
言葉尻が段々と小さくなり、顔色も悪くなっていく。
先程因幡を怒鳴りつけていた神崎と同じぐらい恐い顔をしていたからだ。
「何、お前それマジで言ってんの?この俺が親切に腕の良い歯医者探して連れて行ってやろうってのに断んの?……まあ、どうしても嫌だってんならしょうがねぇか。抜けたとこから細菌が入り込んで腫れあがったり膿が出たり顎の骨溶かしたりありえねぇ激痛に襲われたり、下手したら生死に関わってくるかもしれねぇんだが……行かないってんならしょうがねぇか」
「行く!行きます!俺歯医者超行きたい!!」
姫川の言葉、というか脅しに因幡は半泣きになりながら手を挙げ歯医者に行くと約束した。
その言葉に姫川が満足そうに頷くと神崎がまた説教を始めた。
姫川からの歯医者強制連行宣言と神崎からの容赦ない説教に半泣きから本泣きへとチェンジしたのを見て、物陰に居た三人は溜め息をついた。
「今回は因幡ちゃんが全面的に悪いわ」
「まさかの虫歯ですよ。誰が予想出来ました、コレ」
「アホだ。アイツアホだ」
「……ていうか」
古市が未だ説教を続ける二人と正座してそれを聞く因幡を見て、ふと頭に浮かんだ事を口にした。
「あの三人……こうして見てると親子、みたいですね」
それに反応して夏目も三人をぼんやりと見る。
「……古市君、言い得て妙だね、ソレ」
「でしょ。配役は当然因幡先輩は子供、姫川先輩はお父さん、神崎先輩はお母さんってとこですかね」
「わかるー。あの怒り方はお母さんだよねー。でもって普段は放任ぽいけど締めるとこはきっちり締めるとかお父さんぽいわー」
「因幡先輩に無視されて動揺したあたりは、子供の初めての反抗期にどう接していいかわかんなくて右往左往する両親みたいな」
「ぶはっっ!?古市君それ超いいよっっ!!男鹿ちゃーん、パパとしては先輩だしあそこのご家族に何かアドバイスでもしてきてあげたら?」
「何でだよ!?てか俺もう帰りてぇんだけど!?」
古市の発言でテンションの上がった夏目に散々絡まれ、それを止める術を持たない古市に放置された結果、男鹿の願いが叶うはずも無く。
結局解放されたのは因幡が神崎と姫川と共に迎えの車に乗って歯医者へと連れて行かれた後であった。
ちなみに後日、事の顛末を女子班に伝えたところ、邦枝は脱力し、大森は「何じゃそりゃあっっ!!」とどこぞの刑事ドラマの如く絶叫し、谷村と花澤は「家族……ぶはっっ!!」と爆笑、という実に様々な反応があったという。
.END
ビーコ様からいただいた作品でした!
私のわがままで作っていただいた作品なのですが、驚くほど安定の夢姫神!
初っ端からハラハラしていましたが、原因がまさかの虫歯!
確かに機嫌が最高潮に悪くなりますね、アレは←経験者
アットホームな3人と石矢魔メンバー!
楽しそうに尾行するので混ざりたくなりました(≧▽≦)
ビーコ様、ありがとうございました!!
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