プレゼント:反抗期ですか!?
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
あれから更に数日経過したが、三人の機嫌は相変わらず悪かった。
神崎の八つ当たりは更に悪化、姫川が破壊した携帯の数は二桁台に突入、
因幡の周囲には小動物だけでなく虫さえも寄りつかない等々、事態は悪化の一途を辿っている。
このままの状態が続くのは自分の精神衛生上よろしくないと石矢魔クラスの殆どが思っていた、そんな矢先。
「というわけで」
パン!と手を叩いてこの場にいる人物達の視線を集めたのは夏目である。
『件名:あの三人について。本文:昼休みに屋上集合☆』と特定のメンバーにメールで招集を掛けたのだ。
メールを受け取ったメンバーは一瞬何事かと思ったが、内容を見て事態が少しでも良くなるならと全員屋上に集合していた。
「メールにもあった通り、あの三人の事で話し合った方がいいかなと思って」
「ていうか、アンタが率先して動くだなんて珍しいじゃない」
話の中心にいる夏目に向かい不思議そうに尋ねたのは大森だ。
「確かに……」
「どっちかってーと見て楽しむ側っスよね」
「言われてみるとそうね」
大森の言葉に花澤、谷村、邦枝の三人、そして同じく呼び出された男鹿と古市もが同意を示す。
確かに普段の夏目は「あー楽しい」とか言って傍観者になっている方が多い。
それが今回は全く逆の立場にいるのだから、不思議に思われるのは当然の事だ。
「いやぁ、まあ……さすがに城ちゃん見てるとそんな事言ってらんないかなって……」
「「「「「あー……」」」」」
その名前を聞いて「そりゃ言ってらんないわなー……」と全員が目を伏せながら心の中で呟く。
城山は神崎の機嫌が悪くなった当初からずっと一緒にいて、殴られようが蹴られようが罵られようが、側を離れようとはしなかった。
だがそんな無茶をしていれば限界はすぐにやってくる。
現に城山の体はいつ倒れてもおかしくないぐらいにボロボロで、夏目も少し休んだ方がいいと言ったのだが、城山は首を縦には振らなかった。
「城ちゃんも変なところで頑固だから」
その時の事を思い出してか、夏目が困ったような笑みを浮かべる。
「神崎先輩達を先にどうにかした方が城山先輩を早く助けられるし、俺達にとってもいいって事ですね」
「そ―ゆー事。さすが古市君、飲み込みが早い」
「あのさー、手っ取り早くあの三人ぶっ飛ばせばいいんじゃねーの?」
MK5並に場の空気を読まない男鹿の発言に古市は血の気が引いた。
「うーん、男鹿ちゃんのそういうとこ、嫌いじゃないけど……」
「すいません、後で俺からちゃんと説明しときますんで!!」
苦笑いを浮かべる夏目に古市が慌てて頭を下げる。
もちろん男鹿の頭を一発叩くのも忘れない。
男鹿は何で古市に叩かれなければいけないのかいまいち理解しきれてなかったが、古市が後で説明すると言っているのならいいかと深く考えるのを止めた。
「男鹿ちゃんは古市君に任せるとして、時間もないしさっさと始めよっか。まず、あの三人の機嫌が悪くなったのは確か……一週間前、だったよね」
「そうっス。あの日アキチーと学校の帰りにケーキ食べに行ったからよく覚えてるっス!」
うんうんと谷村も頷く。
「朝はいつも通りだった。俺と城ちゃんも一緒だったし、別に問題も起きなかった」
「ですよね。俺も朝は普通に挨拶しましたもん。見るからに悪くなったのは午後からじゃなかったですか?」
「てことは、昼休みに何かあったって事かしら」
「可能性は高いね」
昼休みになると、購買に行ったりトイレに行ったりと個人で動く事が多くなる。
となると、夏目や城山が席を外し神崎が一人になる時だってある。
姫川は元々一人で行動する派だし、因幡も姫川程ではないが一人でいるところを度々目撃されている。
「で、問題はここなんだけど、何があの三人をあそこまで不機嫌にさせたのか、だよねぇ」
「タイミングがほぼ同時って事は原因も一緒でしょうか?」
「うーん、それはどうだろう。断言はできないなぁ」
「つーか、とんだ勇者がいたもんっスよねー。マジパネェ!」
褒める訳ではないが、石矢魔の中でもかなり恐れられている三人に手を出したという点に於いては正に勇者と言っても過言ではない。
「原因が人とは限らないけど、物に対する怒り方にしてはちょっと激しすぎるか」
「でも姐さん、石矢魔の人間であの三人にちょっかいかける物好きいますかね」
「聖石矢魔はもっとなくない?」
「手がかりなしじゃないっスかーっっ!!」
お先真っ暗な状況に花澤が自分の頭をガシガシと掻きむしる。
「うん、だから真正面からいっちゃおうかと思って」
あっけらかんと清々しい笑顔でそう言ってのけた夏目に、花澤だけでなく他の面々も唖然とする。
「あの、真正面って……」
心なしか夏目に尋ねる古市の顔色が少々悪い。
「周囲から原因を探るのが難しいってんなら、いっそあの三人に直撃しちゃおっかなーって」
「「「「「いやいやいやいや!?」」」」」
それはあまりに無謀すぎるだろ!?と突っ込まざるを得なかった。
下手すれば余計ややこしくなるのは目に見えている。
これ以上、事態を悪化させるのは真っ平御免だ。
「まあまあ、話は最後まで聞いてよ。直接聞くって言っても闇雲に行く訳じゃないんだ」
焦る面々を宥めつつ、夏目は作戦の概要を話し出した。
まず、今ここにいるメンバーを三つに割る。
邦枝・大森・谷村・花澤の女子班は神崎担当。いくら機嫌が悪かろうとも、性格からして女子供には絶対手を出さない、という理由だ。
次に、姫川を担当するのは夏目。
姫川は自分に都合が悪くなったら言葉巧みにはぐらかそうとするし、女相手でもどんな手を使ってくるかわからない。
ならば複数で行くより一人で、尚且つ力で攻められても渡り合える人間、という事で夏目に決まった。
最後に、因幡担当は男鹿・古市だ。
接点が少ない女子より、普段からそれなりに会話を交わしている二人の方が警戒されないだろうと夏目の判断である。
話を聞き出すのは古市で、男鹿は万が一何かがあった時の為の護衛だ。
「その万が一が起きない事を願います」
「大丈夫だって。その為の男鹿ちゃんでしょ」
「そうですけど……男鹿!俺を死ぬ気で守れよ!……男鹿?」
そういえば、さっきから妙に静かだったなと古市は気付く。
いつも騒ぎの中心にいる様な男がこれだけ静かだと何となく嫌な予感しかしない。
そして、その予感は見事に当たっていた。
「寝んなあああああっっ!!」
古市の命綱でもある男鹿は、古市を守るどころか隣りで気持ちよさそうに背中にくっついてるベル坊と共に居眠りをしていた。
「夏目先輩!メンバーチェンジお願いします!」
「ごめん、頑張って……」
こうして、約一名の不安が解消されないまま、計画は実行に移されたのである。
.