リクエスト:守りますから暴れないでください。
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「どうしたんですか!? 神崎さん!!」
必要以上の大声に、クラスにいた全員が教室に入ってきた神崎に注目した。
しかめっ面だった神崎の表情が「こっちを見んじゃねえよ」とさらに険しくなる。
神崎の右腕、左足、頭には包帯が巻かれていた。
だから城山と夏目より遅れてきたのだろう。
神崎のその姿に、城山は夏目とともに駆け寄ってあたふたする。
「誰にやられたの?」
「昨日の登校時に喧嘩売ってきた他校の奴らですか!? それとも、一昨日の!? まさか、先週の…!! もしかして男鹿に!!」
「心当たりねーよ」
言いがかりをつけられ、男鹿は口を尖らせて否定する。
「大袈裟なんだよ、城山。ただのねんざだ。…ちなみに原因は後ろの奴らな」
親指で後ろを指すと、教室に入りにくそうな因幡と姫川が立っていた。
「あ、因幡ちゃんと姫ちゃん」
「どういうことだ…!?」
険しい顔で詰め寄ってくる城山に、因幡は両手を小さく上げて引きつった笑みを浮かべた。
「城山、近い近い。落ち着け」
「しょうがねえから、説明してやるよ。オレと因幡と一匹が成した、奇跡の連携プレーで起きてしまった悲劇をな」
姫川は指で色眼鏡を押し上げ、説明し始める。
城山と夏目、クラスメイト達もそれに耳を傾けた。
*****
昼すぎ、授業をサボった姫川と因幡は校舎のすぐ外にある自販機コーナーで、缶コーヒーを飲みながら、いつも通りの何気ない会話をしていた。
「あ」
「ん?」
「ゴミ籠どこだ?」
因幡が空き缶を捨てようとしたところで、本来なら自販機のすぐ隣に設置されてあるはずのゴミ籠がなくなっていた。
「その辺に置いとけば?」
「この不良が」
「不良だし。…お、あそこにあるじゃねーか」
姫川はここから少し離れた焼却炉近くに置かれたゴミ籠を見つけた。
掃除の時間に集められた校舎のゴミがそちらにまとめられるのだろう。
こちらから焼却炉までの距離はざっと見て20メートルほど。
わざわざ行くのも面倒なので、姫川はその場で振りかぶり、自分が持っている空き缶を“空き缶”と書かれたゴミ籠に向かって投げた。
空き缶はゆっくりとした動作でくるくると宙を掻きながら綺麗な弧を描き、ゴミ籠に吸い込まれるように入る。
それを眺めていた因幡は思わず拍手した。
「お―――っ。姫川のクセに」
「一言余計だ。おまえもやってみろよ」
「よっしゃ」
因幡は足下に空き缶を置き、加減を考えながら足を振りかぶり、空き缶を蹴飛ばす。
カンッ、と飛ばされた空き缶は姫川が投げた時よりも速い回転を見せ、ゴミ籠へと入ろうとした。
「ニャー」
「「!?」」
空き缶のゴミ籠のすぐ隣にあった別のゴミ籠から、サケの切り身を口に咥えた野良猫がひょっこりと顔を出し、空き缶のゴミ籠に移ろうとした。
因幡が飛ばした空き缶は、その野良猫に当たろうとしていたが、野良猫は気付かない。
「ネコが…」
姫川がこぼしたところで、因幡は瞬時に弾かれたように駆けだした。
本気で走った因幡は異常に速い。
「ふっ…!!」
自分が蹴った空き缶に即座に追いつき、自身を半回転させて勢いをつけ、右足で空き缶を別のところへ飛ばした。
キンッ、とホームランを打ったような軽快な音だ。
「ニャ!?」
驚いた野良猫は、サケの切り身を口に咥えたままゴミ籠から飛び降り、逃げて行った。
「危なかった…」
ふぅ、と冷や汗を拭った因幡に、姫川が近づいてくる。
「因幡、おまえさっきの缶どこやった?」
「知らねえよっ。オレだっていきなりだったし加減できなかったし…」
辺りを見回しても空き缶も落ちていなければ、どこかに落ちた音も聞こえなかった。
「…い、いいんじゃね? 窓ガラスが割れた音もないわけだから、きっとどこかの木に引っ掛かったりとかして」
どさっ
「「!!」」
言いかけたところで、石矢魔校舎の非常階段から神崎が落ちてきた。
「神ざ…」
神崎の頭には因幡が蹴った空き缶(スチール)が、どういうことか突き刺さるようにめり込んでいた。
原因は明白だ。
非常階段で欄干にもたれていたところを突然因幡が本気で蹴った空き缶が頭に直撃し、そのまま3階の非常階段から落下した。
「姫川!!」
「今かけてる」
姫川はすでに救急車に電話をかけているところだった。
「とりあえずスコップとブルーシートを!!!」
「おまえも大概最低だな!! まだ神崎生きてるぞ!!」
人は極限まで慌てると自分を見失う。
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