リクエスト:どちらの青春、送りますか?
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放課後、神崎は夏目達を先に帰らせて屋上へとやってきた。
そこには、神崎に手紙を送った張本人がいた。
振り返り、頬を紅潮させて嬉しそうな笑みを浮かべる。
「嬉しい。来て下さって、ありがとうございます」
「…おう」
その様子を、姫川と因幡はペントハウスの上から窺っていた。
うつ伏せになり、目立たないように隠れている。
因幡は「その悪目立ちリーゼント下ろせ」とたしなめるが、姫川は無視だ。
「それで…、その…、お返事は…」
期待と不安の表情。
「……その…、手紙は嬉しかったけどよ…」
それを見た神崎は胸を痛めながらも、頭を下げ、言葉を継ぐ。
「悪い。アンタとは付き合えない」
「!」
一歩たじろがれたのが足下で見えた。
神崎は顔を上げ、目を合わせる。
「ど…、どうして…ですか?」
「…お付き合いなんてガラじゃねえ。オレは3年だ。残りの時間は、同じ不良とバカやってたいんだ…」
恋愛と友情なら友情を取る、と言いたいのだ。
察したその子は「…わかりました」と笑顔を浮かべ、
「来て下さって、ありがとうございました」
そう言って一礼し、屋上の出入口へと足を向けた。
扉をくぐったのを見届け、因幡は姫川の肩を叩く。
「用事思い出した。姫川、神崎は任せた」
そう言って神崎がこちらに背を向けている隙に、因幡はペントハウスから飛び下り、出入口をくぐった。
「任せたって…」
姫川は、柵にもたれ、ポケットや懐を漁る神崎を見る。
「……………」
因幡と違い、梯子を使ってペントハウスから下り、神崎に近づいた。
「よー」
「!」
神崎がこちらに振り返ると同時に、ポケットから取り出したヨーグルッチを投げ渡した。
「今、持ってねーんだろ?」
「…姫川……」
神崎は遠慮なくストローをパックにさし、一口飲む。
まるでタバコを吸っているかのようだ。
「―――で…」
「フッた。セントの奴が石矢魔と付き合ってたら、そのコが白い目で見られるだろ」
まさか始終を見られていたも知らずに、神崎は言った。
姫川は苦笑する。
「ああ、そのことも入ってんのか」
「……?」
「帰ろうぜ、神崎。夏目達は一足先に帰ったようだし、どーせ、ぼっちなんだろ?」
「姫川、てめーがぼっち言うなっ」
神崎はその背中を、パンッ、と軽く叩いた。
*****
翌朝、神崎達と姫川とともに登校してきた因幡は、自分の靴箱に入ってあった手紙を手に、硬直し、大量の冷や汗を流していた。
それを背後から見る神崎と姫川も硬直している。
「え…」
「どういうこと?」
封筒の色から見て、神崎が受け取ったのと同じ手紙だ。
因幡にも、心当たりがないわけじゃない。
昨日、姫川に「用事」と告げたあと、階段の踊り場で泣いているそのコに声をかけ、ハンカチを渡しただけだ。
ああ、そういえばこんなことを言ったっけ。
『神崎のこと、好きでいろとは言わねえけど、嫌いにはならないでやってくれ』
『アンタみたいなカワイイ子なら、また新しい恋ができるはず』
(あれか…。あの言葉がいけなかったのか…?)
その心当たりを2人に話すと、神崎と姫川は露骨にニヤニヤと笑う。
「それは責任とらねえとな」と神崎。
「頑張れよ、色男」と姫川。
「面白がってんじゃねーっ!!」
その時、物陰から熱視線を感じた因幡だったが、振り向くまいと耐えた。
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