リクエスト:どちらの青春、送りますか?
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昼休み、早くもヨーグルッチが尽きてしまい、神崎は考え事をしたいのもあって夏目と城山を教室に残し、ひとり、自販機の前へと来ていた。
「…はぁ…」
買ったばかりのヨーグルッチにストローを差したのはいいが、なかなか口に運ばない。
朝よりイライラしているのは、おそらく姫川のせいだろう。
怒りのままにヨーグルッチを握りそうになったが、中身が入ってあることを思い出し、止まる。
「……………」
神崎は2、3個だけヨーグルッチを買ったあと、教室に戻ろうとした。
そこで、真上から視線を感じ、特設クラス側の3階の窓を見上げる。
「…!」
窓際で頬杖をついた姫川と目が合った。
気付かれると思ってなかったのか、姫川もびっくりしている。
2人は目を逸らそうとしない。
どちらかが逸らすのを待っている。
(こっち見てんじゃねえよバカ。見下ろすな)
(見上げてんじゃねーよ、早く行けよ)
(ヨーグルッチ欲しいのか…? それとも気にしてくれてんのか?)
(オレにどう言ってほしいんだよ)
(…そんなわけねーよな)
(オレになに言わせたいか、はっきりしろってんだ)
(なんか言わねえかな…)
(声ぐらい出せよ)
(口動かせ)
(睨むな)
(睨むなよ)
((言いたいことあるならはっきり言えよっ!!))
その頃、因幡は自販機の陰から様子を窺っていた。
(あれから15分…。会話もないのに、見つめ合う2人…。素直にお喋りできずにテレパシー送ってんのか、てめーらっ!)
2人は微動だにしない。
「「……………」」
珍妙な光景だ。
だからこそ因幡は動画に収めることにした。
「ロミオ…。ジュゥリエェェェット」
立ち位置は逆だが、音声も入れる。
「―――ってやってる場合じゃねえな。あの不器用カップル…どうするか…。!」
反対側の校舎の3階では、またもや例の女子が神崎を見つめていた。
不安げな表情だ。
見つめ合ったままの2人を交互に見ている。
(…熱視線勝負は姫川の勝ちだな)
その時、ケータイの着信音が鳴った。
因幡は慌てて自販機の後ろに隠れ、発信者を見ずに通話ボタンを押す。
「もしもし?」
“因幡…”
「!」
その声に、因幡はもう一度陰から神崎を見た。
未だに姫川と見つめ合ったままだが、ケータイを耳に当てている。
姫川は、誰と電話してんだ、と怪訝な表情を浮かべていた。
“ちょっと相談を…”
「ラブレターのことだろ?」
“だから…、まだなにも言ってねーよ”
「姫川に言ってたのを立ち聞きしてた。だから内容は省略。オレが言えるのは、神崎が決めろってことだけだ。他人に決めさせるのは、オレ達にもそのコにも失礼だと思わねえか?」
“……………”
会話の内容を聞きとろうとしていうのか、姫川は耳を澄ませる。
だが、3階なので聞こえにくい。
「……神崎はどうしたい? どっちを選ぶ?」
なにが、とは言わない。
それは今、因幡の視界に映っていた。
ここから見る限り、神崎の答えは決まっているのかもしれない。
「…これだけ教えてくれるか? 姫川が、気にしてないように見えるか? 相手にしねーとか言ってた奴が…」
“…!”
「そろそろ授業だから、早く戻ってこい」
それだけ言って、因幡は通話を切った。
神崎はケータイを見下ろしてから、もう一度姫川を見上げたあと、教室へと戻って行く。
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