リクエスト:どちらの青春、送りますか?
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メールを受け取った姫川は、教室に戻ってきた神崎に声をかけ、そのまま2人は授業をサボり、2階の空き教室へとやってきた。
この教室の机や椅子はすべて後ろにやられていた。
神崎は先に姫川を教室に入れてから、誰も来ないか廊下を確認してから扉を閉める。
「相談って?」
内容はわかっていた。
けれど、この時の姫川は別の相談事であることを願ったが、
「これだ」
神崎はポケットから例の手紙を取り出した。
やはり、そのことについてだ。
「……ラブレター」
言いだす前に、姫川は当てる。
神崎はわかりやすいほど目を丸くした。
「…オレまだなにも言ってねーだろ?」
「そうなんだろ?」
姫川は苛立ち混じりに返す。
「…そうだけどよ…」
「オレにどうしろってんだ? 代わりに返事返してこいとか…」
神崎は封筒から中身を取り出して開いて見せつけ、差し出し人の名前を指さす。
「いや、このコについて調べてくれねーか? 得意だろ、そういうの」
得意だから先に調べましたけど、と姫川はそっぽを向いた目を細めた。
「知ってどうすんだ。大体、夏目達はこのこと知って…」
「知りてーんだよ。あっちはオレのこと知ってても、オレはこいつのこと知らねーし…。夏目達にはあとで…」
目を逸らす照れた顔に、イラッ、と苛立ちが募る。
その額にはうっすらと青筋が浮き出ていた。
「……この間不良に絡まれたのをてめーが助けたコだ。覚えてるか?」
「……ああ…、あのコか」
絡まれた誰かを助けたのは最近の出来事なので、神崎の記憶にも残っていた。
面白くない、と姫川の不機嫌さが一層増す。
「…なに苛立ってんだよ」
「べつにー。…気になるんなら、付き合えばいいんじゃねーの? まあ、見るからにお嬢様ってカンジだったし、付き合って1週間でガックリされるのが目に見えるけどな」
「あ?」
小馬鹿にするように言われ、照れた顔から引きつった笑みが浮かび、青筋が立つ。
険悪な空気が教室を支配する。
「―――姫川、もしかしておまえ…」
神崎は腕を組み、引きつった笑みを浮かべたまま言い放つ。
「オレがラブレターもらったのが悔しーんだろ?」
「………はぁ?」
ピキピキ、と一気に青筋が増える姫川。
「なに言ってんの」と引きつった笑みを返す。
「付き合っても長持ちしねーから助言してやってんだろーがっ。慰める夏目達の身にもなりやがれ、勘違いヤロー」
「それをてめーが言うか。オレは、金で女を釣り上げる、軽~いてめーと違って好きになった奴は大事にする自信はあるっ」
グサッ
「す…、好きって…。はっ、カタブツすぎる男は嫌われるっつーの! オレだったら相手にしねーよ!」
ズキッ
「あ、相手に…っ。っご心配どーも! なんっの参考にならねえ助言をどーもっ!」
神崎は懐からヨーグルッチを取り出し、一部の情報量として姫川に投げ渡し、教室を出て、乱暴に扉を閉めていった。
姫川は「待て」と手を伸ばしかけたがもう遅い。
ぽつんと教室に取り残される。
…いや、ひとりではなかった。
「!!」
ロッカーの中から、因幡が登場。
すべて聞いていた。
「……神出鬼没な奴だな」
元気のないツッコミだ。
「―――アホ。メンドクセーよ、おまえら…っ」
「だってああ言われたら、てめーだってああ言い返すだろ! なんだよ、悔しいって…、あっ」
吐き捨てるように言ったあと、因幡にサングラスをとられた。
取り返そうと手を伸ばしたのを避けられ、手で制される。
「なに言われてキレたのか、思い出しながら言ってみろ」
「………「オレがラブレターもらったのが悔しーんだろ?」」
やや棒読みで思い出しながら言うと、因幡はさっと姫川のサングラスをかけ、姫川に指をさす。
「そうじゃなくてっ、てめーが他の奴と付き合うこと自体が気に食わね…」
パンッ
「痛たぁ!?」
脳天をしばかれ、サングラスを奪還される。
「似てねえよっ!!」
「けど、てめーが言いたかったのはこういうことだろ! でもって、たぶん神崎もそういうのが聞きたかったんじゃねーのか! 自覚ねえだけで」
「はぁ!?」
「考えてみろ! 名前だけで相手調べるくらいなら、自分が動くか、夏目達にやらせるだろ!」
「……………」
正論だ。
姫川がクラス中に言いふらす可能性だってあったのに。
(なのにあんなイライラモードのうえ、「付き合えばいいんじゃねーの?」。神崎が一番腹が立ったのはたぶんその前半のセリフだ)
それは姫川自身に自覚してほしいので、因幡は口にしない。口喧嘩でお互いが相手の言葉に傷ついてるのも悟っていた。
「……素直じゃねーの…」
呆れたような口調でそれだけ言い残して、因幡は教室を出て行った。
今度こそ教室にひとり取り残される、姫川。
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