リクエスト:どちらの青春、送りますか?
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HRの間、姫川と因幡は肩越しに一緒に神崎の様子を窺った。
神崎は茫然とした顔で、飲み終わったヨーグルッチを膨らませたり萎ませたりしていた。
姫川と、その前の席に座る因幡は声を潜ませて会話する。
「うわぁ、考えてるよあいつ…」
「ああ。ヨーグルッチからまったく口を放さねぇ…」
実はそれほど気にしてないんじゃないか、とか思っていた2人。
淡い期待だった。
1限目の授業も、神崎はその状態から変化はなかった。
遠目で夏目と城山も気にしている。
休み時間、神崎は城山達を連れて自販機へと向かった。
教室から出て行くのを見届けた因幡と姫川は同時に立ち上がり、廊下へと出て、窓際からそれを見下ろす。
「さて、何十個ヨーグルッチ買ってくるかな…」
そう呟いたのは姫川だ。
神崎のあの様子だと、普段の倍は買ってくるだろう、確信はあった。
「…相手の名前、見たのか?」
「ああ。野郎じゃないことは確かだ」
「オレはてっきり野郎かと思ってたけどな(笑)」
「それ、本人に言ったら殺されるぞ」
「で、相手は?」
「待ってろ。写真撮らせてきたから」
いつの間に、と因幡は姫川の迅速な行動に小さく驚く。
姫川はケータイを操作し、先程受信したメールと写真を開いた。
「あ」
「? うわっ!」
横から覗くと、黒の長髪の女子が写っていた。
制服から、聖石矢魔の女子だということが判明。
隠し撮りしたのだろう、教室で友達と笑い合っている場面だ。
因幡が仰け反ったのは、予想以上に端麗な容姿だったからだ。
「……クラス一の美人ってカンジ。しかも清楚で純情っぽいな」
神崎が好きそうだ。
「…このコ、アレだ。この間、帝毛の奴らに絡まれてるの、神崎が助けたんだ」
一緒にいた姫川は覚えていた。
「……こういう清楚系の女子って、悪そうに見えて実は良い不良にコロッといくタイプだな…。神崎ってそういうギャップ備えてるから、助けられたとなったら、もう惚れるしかないだろ」
因幡は悟ったように言った。
「クラスは…と」
「1年だな」
「なんでわかる?」
写真を見ただけで情報がわかるはずがない。
姫川は一度視線をケータイから外し、横にいる因幡に移す。
「あそこ、1年の教室だろ?」
因幡が窓越しに向かい側の校舎を指さすと、3階の窓から自販機でヨーグルッチを大量買いする神崎達を見下ろしているその女子が見えた。
頬を赤く染め、神崎に熱っぽい視線を送っているのが丸わかりである。
「…超…見てるな」
「ああ。ガン見だ」
片思い中の女子の雰囲気をかもしだし、見ていると切なさと小っ恥ずかしさを感じてしまう。
ピュアな乙女心に打たれたのか、姫川は目を逸らし、苦しげに呼吸した。
「どうした姫川っ」
「直視できない」
「心が邪悪だもんな、おまえ」
眩しいのだろう。
気持ちはわからなくもない。
因幡はポケットからキャンディーを取り出して口に咥えた。
「……神崎があんな美人な女の子と付き合う…。絵にならねえこともねーが…、姫川はどう思う?」
「……知るか」
一緒に2人並んで歩いている様を想像してみたが、姫川は軽く頭を横に振って払い、無愛想に答えた。
「随分気にしてるように見えるけど? いきなり名前からあの女の子のこと知ろうとしたし…」
「野郎だったり、ブスだったら笑ってやりたかったけどな。…興醒めだ」
「じゃあもうほっとくのか?」
「……………」
どう答えていいものか。
姫川がじっくりと考えてから口にしようとした時だ。
姫川のケータイがメールを受信した。
気付いた持ち主は「新しい情報か?」と呟いてメールを開く。
「!」
送信者:神崎一
件名:話がある
本文:あとで、ちょっと相談に乗ってくれねーか?
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