リクエスト:どちらの青春、送りますか?
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その朝、いつも通り夏目達と登校してきた神崎は、玄関を潜り、下駄箱から靴を取り出そうとした。
「…?」
上履きの上になにか載っている。
薄い水色の封筒だ。
後ろには“神崎一様へ”と自分の名前が書かれていた。
「……………」
「? 神崎さん、どうしたんですか?」
いつまでも靴箱の中に手を入れたまま身動きしない神崎を見て、不審に思った城山が背後から声をかける。
神崎は一瞬ビクッと体を震わせた。
「なんでもねえよ…」
ぶっきらぼうに返し、最初に上履きを取り出して履き替えてから素早く封筒をカバンと自分の脇に挟んで隠す。
「……城山、夏目、おまえら先に教室行ってろ」
「「?」」
首を傾げる2人を背に、神崎は1階にあるトイレへと向かった。
2人が追いかけてこないのを肩越しに確認し、小走りになる。
「…ここしか空いてねえのか」
男子トイレに駆け込んだ神崎は、3つ並ぶ個室トイレのうち、唯一空いている真ん中の個室トイレに入り、すぐさま扉を閉めた。
蓋を閉じたままの便座に座り、隠し持っていた手紙の封を切って中の2つ折りの紙を取り出す。
誰もが好印象を持つようなキレイな字だ。
「………!!」
“ずっと前からあなたのことばかり見ています。好きです。付き合ってください。放課後、屋上でお返事お待ちしています。”
簡単かつ、想いがそのまま綴られた手紙。
最後には、知らない女子の名前が書かれていた。
(これってアレか…! ラブレタ―――!!?)
神崎は叫ぶのを堪え、ラブレターをガン見する。
そこで予鈴が聞こえ、はっと我に返り、用を足したと見せかけるようにレバーを引いて水を流し、そそくさと個室トイレから出て行った。
神崎が出て行ったのを見計らうかのように、奥の個室トイレの扉がゆっくりと開き、中から姫川が出てきた。
神崎が出て行った出入口のドアを見つめ、茫然とする。
「……ラブレターって…、マジかよ…」
神崎の声が聞こえ、上からのぞいたところ、ラブレターの内容から緊張している神崎が見えたのだ。
姫川は複雑な気持ちを抱え、トイレから出て行こうとした。
その前に、一番手前のトイレの扉が、ギィ…、とゆっくり開く。
「……………」
「下駄箱にラブレターなんて…。まだこの現代に残ってたのか…」
感心するような口調の嫌でも聞き覚えのある声が聞こえ、開かれた扉をのぞく。
そこには、蓋の閉まった便座に腰掛け、両手を組んで考える体勢の因幡がいた。
「……おまえ…、ここ男子トイレ…」
「用を足しにきたわけじゃねーけど、男子の制服で女子トイレ入れるかバカヤロー」
因幡は上目遣いで睨み、「んなこたぁ、どうだっていいんだよ」と立ち上がる。
玄関にいた神崎達に声をかけようとしたところ、神崎が靴箱からなにかを隠すのが見え、先回りして個室に入ったのだ。
「神崎がラブレターもらった方が気になるだろ!」
「ま…、まあ、正直なところ…」
真剣な表情に気圧される姫川。
先程の焦る呟きも聞かれていたことだろう。
「神崎、返事すると思うか?」
「どうだろな…。……神崎の様子、見に行くか?」
「つうかもうすぐHRだし」
遠慮なく様子が窺えるはずだ。
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