リクエスト:母をたずねて。
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“リアルに時間がねえんだよっっっ!!”
神崎の携帯越しの因幡は、弟の携帯を叩きつけそうな勢いで怒鳴った。
“母さんは絵とか写真ならともかく、ナマに激しく敏感なんだ! つうか…、てめーら、オレがあと一歩ってところでさっさとタクシーに乗っていっちまいやがって…っ!”
携帯を強く握りしめているのか、ギリギリ、という音まで聞こえる。
因幡でも車は追えなかったようだ。
“それで!? 次はどこ!? っていうか、さっきから返事ないけど、どうした!?”
神崎は携帯を耳に当てながら、目の前の物に絶句していた。
隣に座っている姫川も同じ状態だ。
「…今、テラス。ほら、前に夏目達と一緒に行った…。…それ以上は聞くな。早く助けに来い」
それだけ言うと一方的に電話を切った。
目を閉じて深呼吸し、再び目を開いてそれを見る。
シャレたグラスに入った、トロピカル風のドリンクと、それを飲むためのカップルストロー。
今の時代、めったにお目にかかれない代物だ。
2人は青い顔でそれを見下ろしていた。
向かいの席に座るコハルは嬉しそうにデジカメを構えている。
録画モードだ。
「ほら、なにしてるの?」
「いや…、さすがにこれはちょっと…。周りの目もありますし?」
イケメンモードの姫川は意見を申し出るが、コハルは「大丈夫大丈夫。周りの子も、どん引きどころか釘づけよ」と言った。
「あの人達、モデルかしらー」
「かっこいいー」
「雑誌の撮影?」
コハルの言う通りだ。
ブレザーからまたシャレた服を着せられたのでそう見えてもおかしくはない。
「…これ以上人が集まる前にさっさと終わらせるぞ」
「…そうだな」
口にストローを咥える姫川に続き、神崎も口に咥えた。
すぐ隣には姫川(イケメン)の顔があり、緊張する。
「目線こちらにお願いしまーす」
2人の視線はコハルに移り、コハルは撮影モードに切り替えて2枚ほど写真を撮る。
「じゃあ次、見つめ合ってー」
「っ!」
左に目を向けると、姫川の目はすでにこちらに向けられていた。
(なんでこいつ平然としてんだよ…っ!)
「…目、泳いでるぞ」
姫川はストローを咥えたまま言った。
「もうおまえグラサンしろよ。顔近いし」
小っ恥ずかしさを感じた神崎は、姫川の目を右手で覆い隠し、軽く押した。
それでも2人はストローを口から離さない。
「神崎君カワイイ!!」
吐血(鼻血)。
「また!?」と神崎。
「弱すぎ」と姫川。
他の見物人も大口を開けて仰天している。
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