リクエスト:母をたずねて。
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
“…なんだと?”
ロープを片手に、家から走って喫茶店に到着した因幡は、今度は姫川に電話をかけていた。
因幡到着の30分前に3人は喫茶店をあとにしたらしい。
事情を聞いた因幡は、宙を睨みつけた。
“なんで引き止めなかった? つうかなんで引き受けた?”
電話越しから因幡の怒りが感じ取れる。
「おまえの母親苦手なんだよ。おまえの言う通り取り押さえてみろ。即効警察沙汰だ」
“それにしたって、行き先だけでもメール送ってくれよ”
「行き先も告げられてねーんだよ、こっちは。…用件が済んだらそっちに送り届けるから」
“シメ切は明日の朝までだ。こっちはちんたら待ってられねーんだよ。それで…、今どこ?”
「公園。ほら、喫茶店の近くの」
“近くねぇぇ!! だいぶ前に通ったとこじゃねーかっ!!”
「姫川君、早くー」
水飲み場の近くで、神崎と一緒に待っているコハルが手を振りながら呼んでいる。
先程からずっとだ。
今、姫川は公園の奥にある木の下で因幡と話していた。
「…おまえから、ここにいるように言ってくれるか?」
姫川は手を振り返しながら言う。
“すぐに切られるのが目に見えてんだよ。とにかく、オレが行くまで時間稼ぎしててくれねーか?”
「まあ、努力はする。……大変だな、おまえも;」
これからまた走ってこちらに来るわけだ。
「ひーめかーわくーん」
“……ごめんな”
声が聞こえたのか、因幡が謝った。
「謝んなっ」
姫川は通話を切ってコハルのところに戻った。
コハルはデジカメの調整をしている。
その間に、姫川は神崎に因幡がこちらに向かっていることを伝える。
「…因幡が来るまでの時間稼ぎだ」
「わかった」
神崎が頷いたとき、コハルは「そのまま動かないでー」と試し撮り。
「じゃあ、あそこの木に…」
コハルは近くの手ごろな木を指さし、神崎と姫川に指示を出した。
神崎はその木に背をもたせかけ、姫川は神崎の顔の横に手をつき、顔を近づけて見つめ合う。
「…なんだこの画。つうか、オレが女役?」
「ガタイはオレの方がいいからな」
「リーゼント、オレの頭にのってるしっ」
「この距離じゃしょうがねーよ」
コハルは2枚ほど写真を撮ったあと、キャリーバッグからブラッシングセットを取り出した。
それを手に、姫川に近づく。
「そうね、下ろしましょうか」
「え?」
姫川はデジャブを覚えた。
「やめろおおおおお!!!」
神崎は助けもせずに両手で目を覆い、その光景を見ないようにした。
次に目を開けた時には、ポリシーがすべて外されたイケメン姫川、略してイケ川がげっそりした顔でそこにいた。
「…誰だてめぇ」
「姫川だよ」
お決まりのセリフである。
「ついでにこの服に着替えてくれる?」
続いてコハルがキャリーバッグから取り出したのは、男子制服のブレザーだった。
あまりの用意周到さに神崎と姫神は若干引いている。
「たまにはブレザーもいいわね」
どこで買ってきたのか、いつサイズを測られたのか、ブレザーのサイズはぴったりだった。
「さっきのシーン、もう一度お願いしまーす」
言われるままに、2人はさっきと同じ体勢になる。
だが、リーゼントがなくなった分、顔の距離も近くなった。
「ちょ、近い! 近いって!」
見慣れないイケメン顔が近づき、神崎は焦った。
それがおかしくて、姫川は小さく笑う。
「神崎、緊張してんのか?」
「い…、イケメン慣れしてねーんだよ、オレはっ」
「なにそれ、褒めてんの?」
「だから顔近ぇって!」
その光景を撮影していたコハルは、
「がはっ!!」
口から血を吐いた。
「「えええええ!!?」」
大口を開けて仰天する2人。
急いで駆け寄り、具合を窺った。
「どうした!?」
座り込んだコハルは口元の血をハンカチで拭い、天使のような笑顔を見せた。
「気にしないで、ただの鼻血よ」
「鼻血!?」と神崎。
「口から出ましたが!?」と姫川。
「フフ…。女が鼻血なんてはしたないことはしないわ。こんな荒技くらい、身につけて当然よ」
「むしろ男前だよっ!!」
神崎がツッコんだあと、コハルは「さてと」と立ち上がり、キャリーバッグを手にした。
「さて、次、行きましょう」
「え!? もう!?」
因幡の姿はまだ見えない。
時間稼ぎをしなくてはと考えていた姫川はコハルを引き留めようとするが、コハルは真摯な面持ちで言い放つ。
「もう私には時間がないのよっ!!」
「あんた今日で死ぬんですか!?」
口から垂れた血がリアルだった。
.