リクエスト:母をたずねて。
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休日のAM10時。
「あ?」
「なんでてめーが…」
神崎と姫川はこれから入ろうとした喫茶店の出入口前で出会った。
これは偶然かと考えたが、姫川は自分の携帯を取り出し、メールボックスを開いて受信メールを見せる。
「もしかして、因幡からこのメールが来たのか?」
「あ…、ああ」
まったく同じメールだ。
姫川はアドレス詳細表示を見て、神崎にも送りつけられたことを知る。
「あの女…、なに考えてんだ」
呆れる神崎に対し、姫川は「オレ達仲良しこよしだと思われてんじゃねーの?」と言った。
“大至急相談にのってほしいんだ。おまえにしかできないことだ…!”
切羽詰まったようなメール文に、2人がとんできたというわけだ。
真っ先に会ったら文句を言ってやろうと、姫川に続き、神崎も喫茶店の中に入る。
「いらっしゃいませー」とウェイトレスが出迎え、姫川は連れが先に待っていることを伝えた。
すると、ウェイトレスは「あちらの席のお客様ですか」とそちらに手を差しのべた。
先に姫川が硬直した。
続いて、神崎も同じく硬直する。
窓際の席にいたのは、因幡ではなく、その母親のコハルだった。
コハルは2人に気付き「あ、神崎くーん、姫川くーん」とにこやかに手を振っている。
「……………」
神崎はコハルを見つめながら携帯を取り出して因幡に電話をかけた。
すると、コハルは自然な動作でポケットから携帯を取り出し、電話に出る。
“どうしたの、神崎君”
神崎と姫川はまだ突っ立ったままだ。
ウェイトレスも怪訝な目をしている。
「…おふくろさん、それ…、因幡の携帯じゃ…」
「借りてきちゃった。ちなみに、呼びだしたのも私よ」
コハルは平然と答える。
神崎が通話を切ると、姫川が踵を返した。
すかさず、神崎はその肩を力強くつかんで踏みとどまり、声を潜めて唸るように言う。
「どこ行こうとしてんだコラ」
「ごめんなさい。任せます」
「敬語になるな! オレじゃ荷が重すぎんだよ! てめーなら、女相手はお手のもんだろ!」
「そういう次元じゃねえんだよ。オレあの人嫌いじゃないけど苦手」
「だからってオレに押しつけんなっ。呼ばれたモン同士、仲良く話くらい聞いてやってもいいだろ。つうか頼むからひとりにするな」
普段なら口が裂けても言わないことだが、神崎も必死だった。
コハルと2人きりになるのは、姫川と同じくらい恐れている。
「ほらもうなんかこっち見てニヤニヤしてるし」
神崎と姫川は顔を見合わせ、とりあえずコハルと向かいの席に、並んで腰を下ろした。
コハルはにこやかのまま、2人にメニューを渡す。
「好きなもの食べていいわよ」
「そんなことより…、オレ達に相談ってなんだ? …旅行先で不良に絡まれた時の対処法とか?」
姫川はコハルの隣に置かれたウサギ柄のキャリーバッグに目を留めた。
「旅行じゃないわ。2人に相談っていうのは、手伝ってほしいことがあって…」
コハルの顔が真剣になる。
なにを言われるのかと待ち構えていたとき、「ぐーるぐるぐる」と神崎の携帯が鳴った。
緊張感の欠ける音楽に姫川の体がガクリと傾く。
神崎は携帯を取り出して開き、着信相手を見た。
(因幡弟…)
春樹からだ。
「ちょっと失礼…」
神崎は許可をとってから、通話ボタンを押して耳に当てた。
“もしもし!?”
出るなり、耳をつんざくような声が電話越しに発せられた。
神崎は思わず携帯を離し、おそるおそる再び耳に近づける。
声の主は、春樹ではなく因幡だった。
「…因幡か? どうした?」
姫川も気になって神崎に耳元を近づける。
“母さんがオレの携帯持ち出した挙句家出しやがって…! 今、春樹の携帯借りて手あたり次第知り合いに電話かけてるとこだ!”
「「……………」」
本日2度目のフリーズ。
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