不安を胸に抱いてます。
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
こちら因幡家。
お休み中の日向は、因幡の部屋のクローゼットの手前にかけられてあるサラシを見つけた。
「…桃ちゃん…!?」
嫌な予感を覚えたパパ。
*****
「突然悪いな」
「悪いことしてるのこっちの気がしてきた」
姫川は抱きついてきた時に味わった弾力を思い出す。
(宝の持ち腐れってやつか…)
「…あ、トイレットペーパーとかどうよ!?」
閃いた因幡は人差し指を立てて意見を窺った。
「千切れるに一票」
夏目が挙手する。
「オレも」と神崎と姫川も挙手した。
「胸が注目されないように、おなか痛いフリしてずっと屈んでおけば? あとはカバンを胸に抱いて隠したり…」
「挙動不審だな」
夏目の提案で想像してみた因幡だったが、客観的に見ても怪しさこの上ない。
「何か隠してるんじゃないかって思われそうだ」
「そういえば、邦枝もサラシを巻いてる時があったな」
城山が思い出して口に出す。
「あー、なるほど。邦枝から借りればいいのか」
“撫子!!”
頼んだ瞬間に『撫子』をかまされるシーンを想像した。
肩を落として諦める。
「女だって打ち明けてたら、すんなりいくんだけどな…」
女子からは借りにくい。
「サラシってどこに売ってんだ?」
神崎が尋ねると、因幡は「さぁ?」と肩を竦ませる。
「オレのはおさがりだから」
姫川は「誰の?」と尋ねた。
「父さんの」
「「「「あー…」」」」
石矢魔OBだ。
腹に巻いて釘バットを振り回しながら暴れまわっていた頃など容易に想像できる。
変な輩が寄ってこないように、愛娘の男装に手を貸しても不思議はない。
「……しょーがねぇ。今日は早退するか」
深いため息をついた因幡は、カバンを手に空き教室から出ようとする。
「さっさと他の奴らに打ち明けちまった方がいいんじゃねーのか?」
神崎の言葉に足を止め、肩越しに振り返って困ったように笑う。
「簡単に出来たら苦労しねーの」
ドアを出ると、ちょうど教室に入ろうとした早乙女に出くわした。
「せんせー、今日は早退しまーす。胸に腫れ物できたんで」
「オレが薬塗ってやろうか」
「転がすぞセクハラ教師」
廊下を渡って帰ろうとする因幡の背中を、神崎達は開けっ放しのドアから窺った。
表情は不安げだ。
「無事に帰れる気がしねーって思うのはオレだけか?」と姫川。
「奇遇だな。同じこと考えた」と神崎。
「オレ達もついてった方がいいんじゃない?」と夏目。
「まるで親バカだな」と城山。
「おーい、てめーらはこっちで授業だ。サボんじゃねえクソッタレ共」
新たな早退者を今のうちに引き留めておく早乙女。
*****
その頃、親バカパパは、
「わが娘ながらうっかりさんだな」
サラシを握りしめ、車で聖石矢魔学園へと向かっていた。
.