不安を胸に抱いてます。
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学校に来るまでのことを回想してみる。
朝目覚め、いつもより起床時間が遅れていることに気付いて慌てて学ランを着た。
この時点でおかしかった。
「あー、やっちまった」
頭を掻いてシャツの下をのぞき込む。
「最悪だ。パジャマの上に着ちまった」
「見て見て」と袖から寝間着の袖を見せつけて苦笑いした。
「二重の失敗だ」
城山はつっこむ。
「え―――…どうしよ」
「オレ達に聞かれても、ね」
「とりあえず囲んで隠しちゃったけど」と肩を落とす夏目。
「このまま女だって暴露しちまうか? いいんだぜ。おまえがその気だったら」
姫川はそう言って離れようとしたが、因幡はその袖をつかんで引き止める。
「待った待った待った! ホントうっかりなんだ! ごめん、ちょっと慌ててきたわ!」
じわじわと込み上げてきた焦りをようやく自覚する。
「どうしたんですか?」
「邪魔」
「!!」
ドアの前で立ち止まっていたので、登校してきた男鹿と古市に声をかけられた。
「な、なんでもねーよ」
因幡は手をあげて振り、神崎達と一緒に廊下に出てドアを閉める。
それから隣の空き教室に移動した。
「そういや、女ってブラ付け忘れた時ってどーしてんだ?」
「ああ、たまにいるらしいよね」
神崎と夏目が聞くが、そもそもブラジャーをつけたことすらない因幡にもわからない。
「保健室で絆創膏とかもらってトップに貼ったりするんだとよ。女が気にするのはトップの部分だし」
代わりに姫川が答えた。
因幡は「へー」と頷くが、神崎は「なんで知ってんだ」と引く。
「引いてんじゃねえよ。たまたま知っちまっただけだ」
「でもオレが保健室行ってもなぁ…。気になってんのはトップじゃなくてカップの方だし、代わりのブラとかもらっても意味ねーんだよ。付けたいんじゃなくて隠したい」
かと言って、保健室のサラシがあるわけがない。
「学ランのボタン全部留めとけ!」
「うわっ」
神崎が手を伸ばし、因幡の学ランのボタンを全部留めてみる。
「「「「……………」」」」
膨らみは多少抑えられたが、違和感が目立つ。
「ボタンしたら嫌でも目が向けられるな」と姫川。
「胸筋で誤魔化すのはムリだよね。華奢だし」と夏目。
「真面目っぽいのは因幡じゃない」と城山。
「普段きつめに縛ってるクセに健全に育ちすぎなんだよてめーは」と神崎。
「文句言うなよ!!! オレが一番このデカいのに文句があんだよ!!! 成長すんなって言っても反抗期なんだよ!!! もぎ取っててめーらにつけてやりたいわっ!! 代わりにてめーらのシモよこせ!!!」
「コブとりじいさんみたいに言うな!! コエーよ!!」
ボタンを全部外して逆切れする因幡に神崎がつっこんだ。
隣の教室では響き渡る声に「なんだなんだ」とざわついている。
胸を大きくしないために、普段から牛乳を避けているというのにすくすくと成長しているのが最近の因幡の悩みだ。
口に出せば女子達を敵に回すだろう。
叫んだあと、はっとする。
「そうだ、タオルが持ってたんだ。ちょっと手伝え」
カバンから出したのは長方形の青色のタオル。
思いついたのは、これで胸を縛ろうという事だ。
「結んで」
裾をめくって胸を覆い、後ろの端と端を結ぶように神崎達に頼む。
「女を自覚してるのかしてないのかわかんねーやつだな」
大胆な頼みごとをしてくる因幡に神崎達は呆れた。
城山は赤面して「ムリだ。手伝えない」と背を向けている。
目のやり場に困りながら神崎は手伝ってあげることにした。
タオルの端と端をつかみ、結ぼうとする。
「……………っ」
端同士の距離が短くて届かない。
「……届かねえ…っ」
力強く引っ張るとタオルが千切れそうだ。
「本っ当にもったいねぇ奴だな」
姫川は頭を垂れて呟く。
その時、ドアが開いた。
入ってきたのは古市だ。
「何騒いで……何してんスか?」
因幡は咄嗟に目の前の姫川に抱き着き、後ろは神崎に抱きついてもらった。
「さ…」
「「「サンドイッチ…?」」」
「オレ具の部分」
クラス代表で教室に戻ってきた古市。
「あいつら何やってたんだ?」
質問する男鹿に、古市は答えづらそうに答える。
「サンドイッチって…」
「は?」
「ダブ?」
女子達の間で流行ってるから気になってやった、と適当にごまかされた。
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