ラビット西遊記
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神崎と姫川がいた場所はほとんど落石で埋まっていた。
その一部に、なぜか粉々になった岩がひとつ。
そこから、ガラガラ、と音を立てて出てきたのは、潰されたかと思われていた神崎と姫川だ。
砂埃で服は汚れ、頭部は流血している。
姫川は神崎に肩を貸し、岩の上に這い出る。
「し…、死ぬかと思ったぜ…」
「見張りが少ねぇと思ったら、罠だったか…。コレが手元にあってよかった」
姫川が視線を移したのは、因幡から預かった杵だ。
因幡と二葉が入って行った洞穴を見ると、落石で塞がれていた。
「おい、アレ…」
「おそらく罠にはめるための場所だったんだろ…。いくらなんでも、アジトの入口を塞ぐなんて馬鹿はやらねーはずだ。…どこかに抜け道が……」
思案していると、遠くで馬の鳴き声が聞こえた。
そちらに振り返る神崎と姫川。
すると、ヤスが駆けつけてくるのが見えた。
「ヤス!」
目立つと思って村に残してきたのだが、地響きは村にも轟いたようで、危険を察知して馬小屋を抜け出したのだ。
「御二方、ご無事で!?」と言うように神崎と姫川を交互に見る。
そこで因幡と二葉がいないことに気付いた。
「お嬢達は!?」と慌てたように首を振る。
「姫川…」
「慌てるな。抜け道はどこかにあるはずだ。探すぞ」
「御二方、あっしの背中にっ」と言うようにヤスは体を横に向けた。
先頭に姫川が乗り、その後ろに神崎が乗る。
「上等じゃねえか。この金角・銀角をナメやがって…」
「きっちり落とし前つけてもらわねーとな。落石より怖ぇ踵落としお見舞いしてやる!」
「しっかりたずな握っててくだせぇ!」と言うようにヤスは、ヒヒーンッ、と鳴き、2人を背に乗せて走り出した。
*****
因幡と二葉が連れてこられたのは廃寺だった。
縄で縛られて移動していると、檻に入れられままだったり、掃除をしたり、食事を作ったり、盗賊の頭の剃毛をしたりする村人の姿があった。
二葉から聞いた通り、村の大人たちは奴隷のように働かされている。
大広間にやってくると、因幡だけがまた檻の中に放り込まれ、あとで臼も投げ入れられた。
乱暴な扱いに「おい!!」と因幡は怒鳴る。
「もっと丁寧に扱えよボケがっ!!」
丈夫なので滅多な事でも壊れる心配はないが、太陰星君からもらった大事な臼だ。
檻の扉が閉められ、鍵がかけられる。
「玉兎よぉ、おまえにやってほしいことはただ一つだ。不老不死の仙薬を作れ。オレ達全員分だ」
「……だろうな…。そう言うと思ったぜ…」
思った通りなので失笑してしまう。
「けどな…」と因幡は続ける。
「―――アレの制作は天界じゃ禁忌だ。仏様から許可を…」
「っ!」
言いかけている途中で、人質にとられた二葉の首元にまた白刃が当てられる。
「やめろ!!!」
「断れねえのはわかりきったことだろーが…。つくれ」
「…………今は杵を持ち合わせてねーんだ。代わりのものをくれ。…今から言う材料も集めさせろ…」
素直に従うしかない。
二葉や村人のためにも。
(…あの2人は生きてる…。岩に潰されても、あいつらは死にゃしねーよ! とにかく今は、少しでも時間を…)
因幡は自分に言い聞かせるように、耳飾りがついていた耳たぶに触れた。
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