ラビット西遊記
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翌日、まるで徘徊するゾンビのように3人は西へと向かっていた。
水の一滴さえ飲めず、体力は衰えるばかりだ。
空腹の合唱に耳が慣れてきた。
「元はといえばな、因幡が…」
「もう何度目だよソレ…」
「しゃべんな。余計に体力消耗するぞ…」
「……肉食いたい…。……ウサギの肉…」
「神崎こっち見んなっ!!」
「神崎…、おまえヨーグルッチ出せただろうが…」
「腹減りすぎて妖力が限界だ…。カラのヨーグルッチパックしか出せねぇ」
「さらに虚しい!!」
ぐぎゅるるるるぅぅぅ~
どさ…、とその場に背中合わせで座り込む3人。
立ち上がる気力はもうない。
「うう…。オレ達このまま干からびちまうのかな…」
「泣くんじゃねえぞ。水分は大事にしろ」
「ここで死んじまったら、いい笑い物だぜ…」
そんな3人を見下ろす馬は、器用に腰に吊るしたバッグから食器セットを取り出し、3人の前に置いた。
3人は「?」と馬を見上げる。
馬はその場に座り、「好きにしてくだせぇ。あっしは元々馬肉用の馬。食われる覚悟はずっと前からとっくにできてまさぁ。なぁに、旅をお三方の腹の中で楽しむのもおつなもんでさぁ」というように目を閉じた。
通じた3人は感動のあまり貴重な水分を目に浮かべた。
「なんて肝のすわった馬なんだ!!」
「漢だぜ…」
「たかが馬だと思っていて悪かったな。てめぇにはこのオレが「ヤス」って名前をつけてやるよ。ヤスゥ!!」
「あ」
盛り上がる途中で因幡は何かに気付いた。
「なぁ、あれ!」
指をさす方向を見ると、砂漠の向こうに緑が見える。
「森だ…!」と神崎の目も輝いた。
因幡の杵もそちらに反応している。
臼は森の先にあるようだ。
懐かしささえ感じる植物の存在に3人はヤスとともに森へと走った。
到着した森は鬱蒼としていたが、因幡達は杵の指し示す方向へ歩きながら、木の枝についている木の実などをとって口に放り込んでいた。
毒実などは平気なのかという心配は無用だ。
こちらには優秀な薬剤師がいる。
「それは大丈夫。あ、それはダメ。青いうちは毒もってるから」
こういう時は役に立つ、としみじみ思う神崎と姫川。
ヤスも草や木の実を食べて体力を回復させる。
「! おいアレ」
神崎が見つけたのは小さな泉だ。
水も透き通っていて飲めそうである。
「水…!」
喉も渇いていた因幡達は早速泉へと走った。
あれだけあれば満たされるまで飲めるはず。
胸を躍らせてそう思った直後だ。
「「「!!!」」」
先頭を走っていた神崎の右足が、細い紐のようなものに引っかかった途端、因幡達の足下から何かが飛び出し、勢いよく上へつり上げられた。
「「「おわあああああっ!!?」」」」
「お、御三方―――っ!!」と言うように、ヒヒーンッ、と鳴くヤス。
因幡達は突如出現した網にまとめられ、宙づりになる。
傍から見れば間抜けな図だ。
「罠か!? くそ、魚じゃあるめーし…、狭い…っ」と姫川。
「姫川っ、どこ触ってんだコラ!」と神崎。
「どこ触ったんだ姫川!?」と因幡。
網の中でジタバタと暴れる因幡達。
すると、近くの茂みから数人の人間が現れた。
「ようやく捕まえたぞっ」
「おとなしくしやがれ妖怪めーっ」
全員、子どもだ。
因幡達を見上げ、敵意の眼差しを向けている。
「ガキ…?」
網の間からそれを見下ろす神崎は首を傾げた。
子ども達の小さな手には、クワや竹ぼうきなど武器として使えるものを握っている。
「あれ? ちょっと待って。こいつら…」
「うん…。なんかおかしいね」
「髪型。カッコも違う…」
「えー?」
「じゃあ…」
肩を組み合って相談し合い、しばらくして再度因幡達を見上げる。
「おまえら、帝毛盗賊団か!?」
なんのこっちゃ、と疑問を浮かべる因幡達。
しかし、ここで正直に答えなければずっとこのままだろう。
子どもの罠に引っかかって放置されるくらいなら、砂漠で野垂れ死になったほうがまだマシだ。
代表して姫川が答える。
「違うぞ。ガキ共、何か勘違いしてねえか?」
またもや肩を組み合って相談し合う。
「違うってさ」
「バカ。罠かもしれねーじゃん」
「でも、頭ハゲてないよ。フッサフサどころかモッサヌメだよ」
「「ぶっ(笑)」」
「今失礼なこと言ったガキ名乗り出ろ。つーかデケェよてめーらのひそひそ声」
神崎と因幡が噴き出すよそで子ども達を睨みつける姫川。
「帝毛盗賊団ってなんだ? この理不尽な罠はそいつらに仕掛けるためだったのか?」
因幡の問いに、別の方から声が聞こえた。
「そのとーり」
現れたのは、5歳児くらいの子どもだ。
ツインテールで、偉そうに腕を組んでいる。
「二葉ちゃんっ!」
「「リーダー!!」」
どうやら子ども達のまとめ役らしい。
「おまえらよそモンか? 二葉達の縄張りに入り込んできやがって。たとえ帝毛盗賊団じゃなくても、落とし前はつけてもらわねーとな」
「…なんか、おまえに似てねぇか? 神崎」
「あ? どこが。あんな生意気じゃねえよ」
「落とし前ねぇ…」
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