奴らがウチに来ました。
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神崎の写真は一旦諦めよう。
神谷と邦彦の回収もだ。
このまま姫川の写真を撮らせよう。
計画続行だ。
できるだけ神崎の家から逃げるように屋根を飛び移りながら移動していると、ズボンのポケットに入ってる春樹のケータイが着信を知らせた。
画面を見ると、姫路からだ。
移動しながら着信ボタンを押して耳に当てて「もしもし」と出る。
“あ、因幡さん。姫川さん見つけました!”
「おう、どこにいる?」
“超高そうなアロハの専門店に…”
「うわぁ。あいつらしいわー」
“それで今、ようやく店から出てきたところなんですけどね…。あ、神谷達はどうでした?”
そこで聞くな、と眉をひそめたが、一度間を置いて「とりあえず写真は撮れた」とウソはつかなかった。
その写真が無事かどうかは言わないだけで。
作戦が成功したと思った姫路は「それはよかった」と安堵しているから罪悪感が湧いたが、姫川の写真を撮ってから正直に全部話すとしよう。
さて、どうやって姫川の色っぽい写真をおさめてやろうかと考えて真っ先に思い浮かべたのが、ノットリーゼントのイケメン姫川、またの名をイケ川だ。
それならばとオレは姫路と東山に指示を出す。
蓮井さんにメールで今日の姫川の予定を聞いたところ、アロハを買ったあと、ポマードを買いに行くらしい。
自分で選びたいのか、時には自分の足で買いに行くこともあるのか。
アロハはさっき買ったようなので、次に行くとしたらポマードを買うために常連の店に行くだろう。
その店まで教えてくれた蓮井さんに申し訳なくなる。
あんたの主人にはこれから酷い目に遭ってもらうことになるのに。
姫川が行くだろうルートから考えて、一度近道である狭い路地を通るはずだ。
そこへ姫路達を先回りさせた。
何をさせるのかというと、東山に建物の3階の窓からバケツで水をかけてもらい、水も滴るイイ男に変貌した瞬間を、1階の建物の窓から姫路に撮影してもらうのだ。
我ながら、イジメか、とつっこみたくなるような残酷な作戦だが、雨を自由に降らせられるわけでもねえからな。
躊躇はあるものの、作戦決行だ。
オレは路地の出入口の付近にあるクレープ屋の前でクレープを食べながら姫川を待つ。
一応、オレだとバレないように適当なキャップとサングラスを買って装着しておいた。
姫路達はすでにスタンバイはできていた。
10分後、姫川がやってきた。
読み通り、近道として使うだろう路地に曲がる。
「ターゲットそちらに接近。準備はいいか? 合図したら作戦開始だ。遅れるなよ?」
“はい!”
東山が気合十分に返し、オレは一応付け足しておく。
「さっきも言ったが、あいつ、リーゼント降りた上にサングラス外すとスゲー美形になるから、混乱するなよ。終わったらすぐに逃げろ」
“了解です!”
これもいい返事だ。
そう言ってる間に、姫川が目標地点のすぐ目の前まで迫っていた。
何も知らずに。
(姫川っ、悪い)
オレは十字を切って内心で懺悔してから、合図を送る。
「今だっ!」
窓を開けて待機していた東山は、バケツに入れた水を姫川目掛けてひっくり返した。
ザバァッ!
ずれるかとハラハラしたが、姫川は見事にコントよろしくで水を被った。
上から降ってきた水にサングラスも下に落ちる。
「な…んだ…?」
本人は何が起こったのかわからない。
当然の反応だ。
右手で目を拭ってから前髪を掻き上げた。
それを逃さず、すぐに1階の窓を開けた姫路は数秒の間にシャッターを切る。
そして「ありがとうございます!」と礼をしてから窓を閉めて逃走する。
東山も同じだ。
姫川は静かに、姫路が閉めた窓を見つめていた。
それから踵を返して路地から出てきたので、オレは慌てて元のクレープ屋の前に立って素知らぬ顔をする。
路地の出入口付近で何をしているのかと思えば、どこかに電話をかけていた。
オレは耳を澄ませてみる。
「蓮井、今から警備会社とコンタクトをとってくれ。…ああ、今から上げる特徴の奴らを監視カメラで追うように…。で、見つけたら即座に取り押さえろ。生死は問わねえ…と言いてえとこだが、できれば生きてオレの前に連れてこい。オレが直々に屠る」
(怖ぇ――――っっ!!!)
静かに怒り、ケータイを耳に当てている姫川からブラックオーラが露骨に放出され、オレの胃を締め付けるどころか、近くにいる子どもを泣かせ、犬を怯ませ、猫を威嚇させ、カラスを呼び寄せた。
(やべぇ!! イケ川なのにイゲス川じゃねえか!!!)
事の重大さに気付くのが遅すぎた。
オレはすぐにそこから離脱し、できるだけ遠くに逃げようとした。
その最中、オレと春樹のケータイが同時に鳴りだして取り出してみると、神谷と姫路からだった。
オレは両手のケータイの着信ボタンを押して両耳に当てる。
「おまえら!! 今すぐにそこから逃げ…」
““因幡く―――ん?””
瞬間、オレは顔を真っ青にした。
左右の耳から聞こえたのは、どちらもケータイの持ち主の声じゃなかった。
“ちょっとお話が”
“あるんですけど”
ああ、これかなりブチ切れてるな。
逃げ場がどこにもなくなってしまった。
地球の裏側へ逃げても必ず追ってくるに違いない。
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