奴らがウチに来ました。
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そんなわけで、オレは陰ながら珍高の奴らのサポートに回ることになった。
我ながらお人好しだと思うが、内容が内容なだけに、実は楽しんでいるオレがいるのも事実なわけで。
あと、人の住所勝手に教えた奴らへの報復もあった。
珍高の奴らには納得のいく写真を撮影してもらって、とっとと帰ってもらおう。
蓮井さんと夏目にメールを送って聞いたところ、姫川はお出かけ、神崎は家にいるらしい。
オレは撮影組を二手に分かれさせた。
姫路・東山は姫川の方へ、神谷・邦彦は神崎の方へ。
神崎と姫川、2人の現在地は電車を使うほど離れてもおらず、オレは移動しながらサポートすることにした。
無線機なんて便利ものは持ち合わせてないため、オレは春樹からケータイを借り、姫路には春樹のケータイへ、神谷にはオレのケータイへかけさせるように指示を出していた。
最初に神崎を狙う。
見つからないように、オレは近くの手頃な5階建てのマンションの屋上から首にかけた双眼鏡で神谷達を見守りながらケータイで指示を出すことにする。
わかっていたことだが、神崎のガチな極道の家を前に、早くも神谷と邦彦がカメラを手に竦み上がっている。
組員たちに怪しまれる前に、神谷達を電柱の陰に隠れさせた。
“さすが神崎さん…っ!! 極道の息子ってのは本当だったんですね!”
怯えてるのか興奮してるのか、神谷の声が震えている。
「落ち着け。こっちには組員の動きが見えるから、オレの言う通りに移動してくれれば問題ねえ。問題は神崎だが…、あいつどこに…、お、いたいた」
広い敷地だし、こちらがぐるりと移動しなければならないと思ったが、予測通り、自室にいる神崎をレンズ越しに捉える。
二葉ちゃんと遊んでいるかと思えば、半裸で部屋に取り付けてあるサンドバッグでキックのトレーニングをしていた。
日課にしているのかと思うと感心してしまう。
「チャンスだ。おまえらが欲しがりそうな画になる。そのまま右に移動して、曲がったところでどっちかが肩車して撮れ」
言う通りに、神谷と邦彦の2人はオレが指示した場所へ移動し、ジャンケンして負けた方が勝った方を肩車した。
カメラを手にして神崎を狙うのは神谷だ。
塀から顔を出し、神崎の姿を捉える。
ちょうど、神崎はトレーニングを終えたのか、首にかけたタオルで顔の汗を拭い、ヨーグルッチを飲んでいる。
“ほああああっ!!”
「騒ぐな」
神崎の男らしい姿を一目見るなり、神谷が興奮した声を上げた。
片手で持っているカメラのシャッターをひっきりなしに押し続けている。
これは見るのが楽しみだ。
そろそろずらからせようとした時だ。
被写体の視線が窓越しに神谷達を捉えた。
神谷もそれに気づいてはっとする。
“ヤバ…、気付かれた!”
「早く逃げろっ!」
シャッターを押し続けたおかげでカメラ目線も手に入ったはずだ。
急かすと神谷は邦彦の後頭部を叩いて肩からおろしてもらい、2人仲良く猛ダッシュでそこから逃走しようとした。
神崎はというと、慌てる様子もなくどこからか小さなホイッスルを取り出し、ピィ―――ッ、と高らかに吹く。
すると、外で待機していた屈強な強面の組員達が神谷達の逃げ行く先を先回りして取り押さえ、神輿のように、わっせわっせ、と担いで神崎の家に戻り、「そぉ―――れっ!!」と先程神谷達が覗いていた塀から神谷達を投げ入れ、腕を組んで立っている神崎の前に落とされた。
「あ―――…」
さすが次期組長。
組員達を自分の手足のように動かしてみせた。
神崎は冷めた目で神谷達を見下ろし、無言の圧力をかけている。
神谷と邦彦は引きつった笑みを浮かべて誤魔化そうとするが、神崎の背後に浮かんでいる般若の前には言い訳もできそうにない。
その上、庭に現れた先程の強面集団に囲まれれば起き上がることさえ叶わないだろう。
オレはその様子を双眼鏡で眺めながらどうやって助けるべきかと考えたが、野生の勘なのか、神崎がこっちを睨んだ気がして思わず仰け反った。
「…っ!!」
そこから再び双眼鏡で覗こうとは思わない。
神谷達には悪いが、こっちにも屈強な集団が来襲する前に退散することにする。
「おまえらの犠牲は無駄にしないぞ―――っ!!」
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