15:魔界に来ちゃいました。
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「死ぬうううううっっっ!!!」
一方、因幡は必死に砂漠の上を駆け、魔獣から逃げていた。
因幡の後ろでは、巨大なイカとタコが這って因幡を追っている。
「だから! なんで砂漠にイカとタコがいるんだよ!! デタラメすぎるってーのっっ!!」
行けども行けども砂、砂、砂。
体力には自信があったが、砂に足をとられるせいで、そろそろ疲れてきた。
しかしタコとイカの足は容赦なく因幡を叩きつけようと振るいまくる。
「ぎゃああっ!! オレがなにしたってんだああああ!!」
左右に逃げながらそれらを避け、途中で大きな岩を見つけた。
因幡はそれに回り込み、一か八かと蹴り上げる。
「シュ―――ット!!」
吹っ飛んだ岩は宙で2つに割れ、見事イカとタコの頭にぶつかり、2匹を倒した。
「ぜぇっ、はぁっ、クソッ、体力もたねーぞ、ボケが…っ」
手の甲で汗を拭い、息を整える。
脱水症状の前兆か、目眩までしてきた。
(まずい…。水が欲しい…)
喉はもうカラカラだ。
汗もすっかり服に染み込んで気持ちが悪い。
「もうムリ…、これ以上体力削ってたまるかよ…。なにが来ても無視だ、無視っ」
そう心に決めて、帰り道を見つけるために歩きだす。
すると、砂からまたなにかが出現した。
3mはあるだろう、大きな赤いイソギンチャクだ。
「…テレレーン。勇者因幡は砂漠キモイソギンチャクと遭遇した」
気を紛らわすために呟き、そのままスルーしようとした。
追いかけてくる様子はない。
「勇者因幡は逃げるを選択」
すると、イソギンチャクは「ゲゲゲッ」と鳴き、頭上の口からなにかをプッと噴き出した。
「?」
それは因幡の足下に落ちた。
ヨダレにまみれた、どこかで見たことがあるサングラスだ。
「……………」
ザァッ、と因幡の血の気が引いた。
イソギンチャクはすっきりした様子で砂の中に潜ろうとする。
「姫川ああああああっっっ!!!」
勇者因幡は急遽、戦うを選択。
砂漠キモイソギンチャクに飛び蹴りを食らわせ、中のモノを吐き出すまで何度も殴り踏みつける。
「オラァッッ!! 姫川出せやああああっっっ!!」
フルボッコ。
かなり体力を削りながら殴った挙句、砂漠キモイソギンチャクは先程食したモノを吐き出した。
「ぅ…っ」
「よかった! まだ原形が残ってた…。…あれ?」
ヨダレと砂にまみれたそれは、因幡が知らない人間だった。
「げほっ、げほっ、と…、溶けかけた…」
その男は身を起こし、因幡と目を合わせる。
「あ、因幡」
「は?」
ビビるほどのイケメンに名を呼ばれ、因幡の頭上に「?」が浮かぶ。
男は体中の砂を払い落としながら「てめーが助けてくれたのか?」と言った。
「いや…、え、誰?」
「あ?」
逆に男の方が驚いている。
「おまえ…、それマジで言ってんのか?」
「いやいや、あんたみたいなイケメン、出会ってたら覚えてるって(母さんの資料として)」
男はため息をつき、ポケットからポマードを取り出し、「見てろよ」と言ってから長い銀髪をポマードの液体で固め始めた。
腕を組んで黙って見守る因幡は、形成されていく見慣れた髪型に言葉を失った。
最後に、男は因幡の手からサングラスを取り上げてかけ、完成させる。
「じゃーん」
「姫川!!?」
どこからどう見ても姫川になった。
「うそっ!! さっきのイケメン兄ちゃんは!!?」
「だから、さっきのもオレだっつってんだよっ!」
これがギャップ。
因幡は痛感した。
「うわぁ…。残念なイケメン…;」
「なんだと!?」
「もったいねぇ。オレもギャップとか好きだけどよ…。なんでリーゼントなんてしてんだ」
「ポリシーだ、ポリシー! 否定するなら砂に埋めんぞ! てめーのオールバックとサラシと同じだ!! てめーだってもったいねえことしてんだからな!!」
「そう言われてみれば…。……あ、もしかして無人島騒ぎの時、神崎が見た人魚って…」
わからない人は“夏のサバイバル。”を見よう。
「ここはどこだ。目が覚めたら砂漠に放置のうえ、ヘンな生き物に食べられて死にかけるし…」
姫川は背を向けて話を逸らそうとする。
因幡は、恥ずかしいのか、と口元をニヤニヤとさせた。
「あ、オレの他にもうひとり食われたんだ」
「え?」
タイミング良く、砂漠キモイソギンチャクがそのもう一人を吐き出した。
「げほっ、げほっ」
姫川の時と同じくヨダレと砂まみれ。
今度は一発で誰かわかった。
「相沢!?」
相沢は一度サングラスを取って顔の砂を払ったあと、かけ直して因幡に振り返った。
「あはは…。ひょっとして、助けてくれた?」
「おいおい…。まさか、入院組が連れてこられたのか? しかもバラバラに…」
そうなると、神崎、城山、陣野もこちらに来ているのかもしれない。
「そうだな…。気付いたらオレと相沢の2人だけだった。しかも、現状に呆けてるうちに背後からいきなり丸呑みだ」
「オレもすぐに動けなかったな…」
不謹慎だが、因幡はこの時ひとりでないことに安堵した。
姫川は携帯を取り出し、執事に電話をかけようとしたが繋がるはずがない。
舌打ちし、通話を切る。
「オレ達は、寝てる間に未知の土地にほっぽりだされたってことか…」と姫川。
「しかもこの季節最悪なところに…」と相沢。
「とにかく、帰る方法もそうだが、神崎達も心配だ。おまえらのように、ヘンな生き物に食べられてなきゃいいけど…」と因幡。
その時、また砂からなにかが現れた。
「ボエ゛エ゛エ゛」
あのクジラだ。
それを見上げる相沢と姫川の顔が真っ青になる。
「「クジラ…???」」
「あ、オレが最初に倒した奴だ」
「「倒した!!?」」
誰が貼ったのか、クジラの額には絆創膏が貼られていた。
「なんだ? また蹴り食らいたいのか?」
ギロリと睨みつけると、クジラはビクッと震え、「ボエ゛~」と小さく鳴いた。
すると、そのクジラの下からまたなにか出てきた。
その光景に因幡は何度目かの肝を冷やす。
「ゴエ゛エ゛エ゛エ゛!!!」
因幡が倒したクジラよりさらに3倍大きな、小山くらい巨大な、6つ目のクジラが小クジラを頭に載せて出てきたからだ。
その鳴き声に全身が震えた。
「おお、涼むねぇ、このデカさ…」と相沢。
「日よけになるよなぁ」と姫川。
「……あの小クジラ…」と因幡。
親クジラは我が子を痛い目に合わせた人間3人を6つ目で睨み、大口を開けて追い始める。
「保護者連れてきやがったあああああっっ!!」
3人は全力で逃げ出す。
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