14:喧嘩に花火とも。
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時計の長針はまた一つ動き、時刻は午前4時をまわった。
前のめりになった姫川の腹に、相沢の膝蹴りがめり込む。
「がはっ。うぐっ」
「くっ」
相沢と陣野の前に、神崎と姫川は手も足も出ず、生傷ばかりが増えていく。
相沢は、再びうずくまる姫川を見下ろした。
「どーした? さっきまでの威勢は?」
「こ…の…」
ガンッ!
「……っ!!」
立ち上がろうとした神崎だったが、陣野の足先にアゴを蹴りあげられ、仰向けに倒れた。
「神崎さん!!」
「くるなっ…」
駆けつけようとした城山を、神崎の言葉が制する。
「タイマンだ。邪魔したらてめぇぶっ殺すぞ」
「……っ」
痛む体を起こし、神崎は再び立ち上がろうとした。
そんな神崎を見据えながら陣野は口を開く。
「……もういいだろう…。おまえ達は弱い。さっさと認めて楽になれ」
「あ゛ぁ?」
神崎は手の甲で口端の血を拭い、睨みを利かす。
同じく姫川も。
陣野は続ける。
「自分でもわかっているのだろう? 実力の伴わない者がトップにまつり上げられる。そんなことはよくあることだ。意地になったところでなにもないぞ」
「そうそう。オレが不思議に思ってるのは、なんでキミが2人の下についてるかってことだ…」
相沢は肩越しに、先程から不良達を止めている因幡を見る。
因幡は2人がやられている間も、割り込もうとはせずにただ向かってくる敵を返り討ちにしていた。
「キミ、最初はいきなり東邦神姫に喧嘩売ったんだって? だったら気付いたはずでしょ。実力の差に…、「ああこいつら自分より下」だって…」
因幡は振り返らずに言い放つ。
「オレを挑発してるつもりなら無駄だぜ。加勢はしない。…けど、ひとつだけ言い返させてもらうと…、オレは、弱い奴についた覚えはねぇから」
「エラそーに…!」
「相沢さん! 早く終わらせてください!」
「そしてこいつを一緒に畳みましょう!」
角材の向こうで遠巻きに不良達が犬のように喚いている。
因幡は足下の角材を蹴り、蹴られた角材は不良達の頭上を越え、カラン、と音を立てて落ちた。
全員が「え?」と後ろを振り返り、滝のような冷や汗を流す。
「はい。入ったー」
因幡は邪悪な笑みを浮かべ、先頭から順番に蹴飛ばしていく。
「「「「理不尽っ!!」」」」
相沢の視線が神崎と姫川に戻り、笑い混じりに言う。
「あのコも意地張るよねー…。キミ達にとっては逆にチャンスなのにさ。もう重たい看板背負わなくて済むんだ。メッキを剥がしてくれた男鹿ちゃんに感謝しないと…」
「…っ、貴様ら…っ!!」
「城山っ!!」
神崎達をバカにされ、城山の足が再び動こうとしたが、神崎の一喝がそれを止める。
「けっ。わかってねーのはてめーらだ」
「あぁ。まったくだ」
よろめきながらも、神崎と姫川は真っ直ぐに立って言い放つ。
「「意地は、通してなんぼだろーが」」
全員が驚いて目を見開き、因幡は口元に笑みを浮かべた。
「背負った看板が男をでかくすんだよ」
「ま、オレ達七光だけどね」
その時、どこからか小さな拍手が聞こえ、全員がそちらに顔を向けた。
「熱くるしいねー。2人とも、いつからそんな熱血になったのよ」
すぐ横の駐輪場の上に、夏目がしゃがんでこちらを見下ろしていた。
「色んなトコ見てきたけど、ここが一番面白そーだ」
「夏目…」
呟いた相沢の隣に着地した夏目は、すかさず陣野の頭をつかんで引き寄せ、その顔面に膝蹴りを叩きこんだ。
なにが起きたのかもわからず、陣野は後ろの茂みに倒れる。
「―――さぁ、反撃開始といきましょーか」
「夏目! てめー、美味しいトコとってんじゃねーよっ」
最後の不良を地面に転がした因幡は、夏目を指さした。
「こっちはガマンしてカス共の相手してたのによぉ!」
「ああ、因幡ちゃん。ダメじゃん、家抜け出しちゃ。お母さん心配してたよ」
「だからなんで母さんと連絡取り合ってんだよっ」
「……そろいもそろいやがって…」
神崎はため息をつく。
「あれ? もしかして5対1になるの?」
相沢は陣野を見下ろして尋ねる。
「心配すんな。てめーの相手はオレだ」
姫川は自身を指さすが、神崎は納得いかず「ちょっと待て」と待ったをかける。
「陣野がやられたんだ。こいつの相手はオレがするべきだろ」
「はぁ? ボロボロのクセになに言ってんだ。夏目はてめーんとこの手下その2だろーが。てめーがやったも同じなんだから下がってろよ」
「納得いくか! てめーこそボロボロだろーが!」
相沢をめぐって2人は睨み合う。
それを並んで眺める城山、因幡、夏目。
「…てめえがややこしくしたんだからな」
「あはは。そーみたい」
「あの…、早く決めてくれる?」
さすがの相沢も困惑の表情を浮かべている。
「待ってろ! ジャンケンで決めっから!」
「「さーいしょーはグー!!」」
しかし、同時にパーを出す姫川と神崎。
「てめぇセコイことしてんじゃねーよっ!!」
「人のこと言えんのかこのやろーっ!!」
胸倉をつかみ合い、こちらの方が今にもタイマンが始まりそうだ。
(夜が明ける…)
因幡が欠伸をした時だ。
ゴッ!!!
突如、校舎が大爆発した。
瓦礫が雨のように降ってくる。
「「「「なにいいいいいい!!!?」」」」
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