14:喧嘩に花火とも。
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因幡は早くもその熱気にやられそうだった。
目の前の光景が陽炎で揺れている。
「おい、てめーが因幡桃矢か?」
「くくく、マスクなんかして風邪でも引いたか? フラフラじゃねーか」
他校の不良が現れたことには今気付いた。
「あ?」
メンチ切ろうとしたがうまくいかない。
他校の不良達は明らかに弱っている因幡にほくそ笑まずにはいられなかった。
チャンス。
全員の顔が物語っている。
「そのままおっちねやあああ!!」
全員が廃材を手に突進してきた。
マスクで隠された因幡の口が楽しげに笑う。
(こいつらじゃ、物足りねえんだけどな…)
ゴッ!!
数分後、道端には他校の不良達が血まみれで転がされていた。
因幡の足はドラッグストアに近づきつつある。
(もっと強ぇ奴…いねえのかな…)
達成感を得られなかったのか、不満げな表情を浮かべていた。
ドラッグストアの自動扉を潜り、中に足を踏み入れる。
冷房の涼しい風を浴び、暑さの苛立ちが徐々に消えていく。
「いらっしゃいませー」
店員の声を聞き、風邪薬コーナーに向かった。
「えーと…、やっぱ即効性がいいな…」
あと、できればサイフが痛まないもの。
「……んっ」
一番上の棚に置かれてある、デカデカと“即効性”と書かれた薬箱に手を伸ばそうとしたが、届かない。
あと数センチというところだ。
「!」
背後に立った誰かが取ってくれた。
「はいコレ」
「夏目!?」
そこには店員姿の夏目が立っていた。
数日ぶりの知り合いに自然と口が緩む。
「あ…、ああ、そっか、おまえドラッグストアでバイトしてるって言ってたもんな。ここだったのか」
「そっ。…風邪?」
「うん。昨日より悪化してるから薬買いに来た」
「そっちも大変だね…」
「…「そっちも」?」
引っかかりを感じた因幡は片眉を上げて尋ねる。
「……神崎君と姫ちゃん、東条のことについて今度こそ真剣に考え始めたんだよね…。下の奴らごっそり持って行かれちゃったからさ」
夏目は苦笑しながら答え、因幡はうんざりした顔を返した。
「…前までジャンプ読んでたクセに」
「もうそんなことしてる余裕もないみたいだよ。…下の奴らなんてオレらだけいれば十分なのにさ…。プライドがそうさせないみたい…」
「……オレが代わりにそいつ潰してやろうか…」
疼き、思わず口をついて出てしまう。
「え?」
「あ、いや…」
いくら喧嘩が物足りなかったとはいえ、どうかしている。
「…お会計よろしく」
「ありがとうございます」
2人はレジカウンターに向かい、会計を済ませる。
「オレ、もうすぐでバイト終わるし…、送ってこうか?」
「気遣うなよ。行きもひとりで来れたし」
「そっか」
「ありがとな」
薬の入ったレジ袋を手にし、出入口へと向かう。
「ありがとうございましたー」
外に出て、灼熱の太陽に再び身を焦がされそうになる。
蝉の騒音が耳障りだ。
「暑……」
店に戻りたくなったが、我慢して家へと向かう。
その道中、さっき現れた他校の不良とは違う、別の不良達が登場した。
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