13:夏のサバイバル。
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「マジだって! 信じろよっ!!」
朝日が照らす砂浜にて、神崎は全員に訴えた。
夏目も微妙な顔をしている。
「信じろって言われてもねぇ…。2人とも気を失ったまま浜辺に打ち上げられてたわけでしょ? 夢でも見てたんじゃ…」
因幡と神崎は砂浜で仰向けに寝かされていた。
気を失っていた2人を発見したのは、夏目と城山だった。
2人を発見した城山はすぐに姫川達に知らせに行き、しばらくして因幡に続き神崎が目覚めた。
神崎は慌てて辺りを見回し、自分達を助けた者を見つけようとしたが、それらしいものはいなかった。
「因幡、てめーは見たよな!?」
「悪い…。見る前に気ィ失ってた…;」
元気な神崎とは違い、因幡は溺れかけた余韻が残っているのか、ヤシの木の下で仰向けになってぐったりとした顔で休んでいた。
その胸にはしっかりとデジカメが握られている。
「とにかく間違いねぇ!! オレ達を助けたのは…、人魚だ!!」
神崎は言いきった。
「人魚…」
さすがの城山も疑いの眼差しを向ける。
「ああ、しかもスッゲー美人だったぞ! 髪もスッゲーサラッサラだったしな!!」
バカン!!
「おぐっ!」
神崎の後頭部にヤシの実が直撃して割れた。
投げたのは姫川だ。
「それでも飲んで目ェ覚ませ! なにが人魚だ。そのツラでバカ言ってんじゃねーよ! 溺れて少ねぇネジでも飛んだか」
「はっはーん。姫川、てめー羨ましいんだろ?」
「あ゛?」
「残念だったなー。てめーでも口説きたくなるような人魚だったのによぉ!」
「…それ以上人魚っつったら海の底に沈めんぞ!!」
「ムキになるなよみっともねー」
ついにスタンバトンまで取り出した。
見兼ねた因幡は立ち上がり、背後から姫川の肩に触れる。
「神崎の言う通りだ。ムキになるようなことじゃねーだろ」
「うっせぇ。夢見がちなこいつの目を覚まさせてやんだよ!」
姫川は因幡の手をどかすと、スタンバトンを手に神崎を追いまわし始めた。
夏目と城山は急いで止めに入る。
「…?」
因幡は姫川の肩に触れた右手を見つめた。
(…あいつ…、濡れてる?)
肩に触れた時、わずかに湿っていた。
因幡は姫川の様子を眺めている乗組員達に近づき、尋ねる。
「…なあ、姫川って、神崎達がオレのこと探してる間、ずっと一緒にいたんだよな?」
乗組員達はきょとんとした顔になる。
「あ…、いえ…」
「坊っちゃまは…」
その時乗組員は、因幡越しにこちらを睨みつける姫川の視線に気付いた。
立ち止まってスタンバトンを構え、スイッチを入れて青白い電流を見せつける。
「「「ずっと一緒にいらっしゃいました」」」
「…? ふーん…?」
考え違いか、と思ったとき、頭上から強風が巻き起こった。
見上げると、大きなヘリがこちらに降りてくるではないか。
ヘリの扉が開き、スーツ姿の茶髪の男性がスピーカーを片手に顔を出した。
「竜也坊っちゃまー!!」
「蓮井!」
「なに…? えっ、迎え…?」
ヘリから縄梯子が下ろされ、砂浜にいた全員がヘリへと上がった。
乗組員達は「助かった」と抱きしめ合い、喜びの涙を流す。
「姫川財閥の執事、蓮井と申します」
「どうも。…よくオレ達がここにいるってわかったな?」
清潔なタオルを渡された因幡は髪を拭きながら蓮井に言う。
蓮井は薄笑みを見せて答えた。
「ええ。GPSから、竜也坊っちゃまの居場所があの島だと確認できたので…」
「あれ…、でも、姫川の携帯水没したのに…」
「…………なにも携帯だけではございませんよ、因幡桃様」
「なに今の間! どこに埋め込んでんだ! つうかオレ名乗ったっけ!?」
蓮井はその質問には答えず、神崎達にも清潔なタオルを配っていく。
因幡はわずかな恐怖心を抱きながらも、無事、姫川のヘリで家まで送り届けられた。
水着姿のままで。
家に帰ってきて早々、母親が出迎えてくれる。
「おかえり桃ちゃん!!」
「おふっ」
いきなり熱い抱擁をされ、顔色の悪い顔を頬に擦りつけられる。
「姫川君の執事さんから聞いたわ。無人島でサバイバルしてたそうじゃないの! もう、心配で夜も寝られなかったわ!」
「いや、あんたは完全に仕事の徹夜だろ」
母親の視線はしっかりとデジカメの入ったカバンに向けられている。
早く風呂に入りたいので、因幡はカバンからデジカメを出して母親に手渡した。
母親は早速、デジカメのデータを確認している。
「…言っとくが、期待できるようなものは撮れてねーぞ…」
文句を言われる前に、因幡は母親の横を通過して風呂場へと向かう。
「きゃー!! 良い写真があるじゃない!」
「…?」
そんな良いものを撮っただろうか、と首を傾げながらも水着を脱いだ因幡は浴室の扉を閉めた。
母親は急いで1階の仕事部屋へと向かった。
中では、女性アシスタント達が屍のような顔でトーン貼りやベタ塗りをしている。
いきいきとした顔で戻ってきた母親は写真を見せつけた。
「みんな、娘がいいもの撮ってきてくれたわよ!」
それを見たアシスタント達は生気を取り戻していく。
母親が目をつけたのは、最後の写真だった。
溺れて気を失いながらも、因幡はずっとデジカメを握りしめていたので、ちょっとした衝撃で偶然撮れてしまったのだろう。
その写真には、気を失った神崎を砂浜に寝かせ、息をしているか確認するため、顔を近づける人魚の姿が写っていた。
.To be continued