13:夏のサバイバル。
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「クソ!」
ただでさえ長引く追いかけっこに体力を消耗しているというのに、デジカメのキャッチボールをする5匹に悪戦苦闘を強いられる。
朝日が昇りつつあるのか、辺りが徐々に明るくなってきた。
森を抜け、海に近い岩場まで来てしまう。
「はぁっ、はぁ…」
一度立ち止まり、前屈みになって息を整える。
その様子を見たサル達は横一列に並び、バカにするように跳ねた。
「キキキッ(大したことねえ人間だな!)」
「キキッ(オレ達の島に勝手に入ってくるからだ!)」
「ウキキッ(これは通行料としてもらってくぜー!)」
「ウキ―――ッ(とろいんだよバーカ!!)」
「ウキ―――ッキ(ぎゃはははっ!!)」
サル達の言ってることが理解できたのか、プチッ、と因幡の血管が切れる。
キレたあまり、血の気が引いている。
サル達の動きを確認しながら一度森に戻った。
「?」
サル達は諦めたのかと首を傾げたが、遠くから、ベキッ、となにかが折れて倒れる音が聞こえ、しばらくして因幡がヤシの実を抱えて戻ってきた。
「…!!」
その悪魔のような笑みを見たサル達は思わずたじろぐ。
「さあ、今度はサッカーで遊ぼうか」
次の瞬間、2匹のサルが同時に空へ吹きとんだ。
「「ウキ―――ッ!」」
ヤシの実をぶつけられたからだ。
因幡は続けて2つのヤシの実を足下に落とし、岩場に落下する前に空中でヤシの実を2つ同時に蹴り飛ばした。
すると、最初にデジカメを盗んだサルの左右にいた2匹も空へと吹っ飛んだ。
「ウキ…」
ワールドカップを狙えそうなほど、的確な蹴りだった。
「ほら…、まだヤシの実はこんなにあるんだぜ?」
「キキ…ッ」
殺られる、と悟ったサルは急いで首にかけたデジカメをとり、後ろへと投げ捨てた。
「あっ!!」
因幡は急いで走り、ジャンプし、宙でそれをキャッチする。
「取った…!! …あれ?」
着地しようとした岩場は数センチ先だった。
因幡はそのまま真っ逆さまに海へと落下してしまう。
「うそおおおおお!!?」
ザブ―――ンッ!
「がぼっ、うく…っ」
水中で、出っ張った岩に背中をぶつけ、その衝撃で口の中の空気を吐き出してしまった。
(息が…っ!)
それほど深くないためすぐに上昇できると思ったが、
「!!」
岩と岩の間に右足が挟まり、抜けなくなっていた。
「ぐ…っ」
力を入れて抜こうにも、息が足りないせいで脚の力に集中できない。
「……っ」
意識が薄れ始めたとき、目の前にぬっと男の顔が近づいた。
「~っ!!」
驚いて反射的に最後の力を振り絞り、コブシを振った。
ゴッ!
「ごぼっ!!」
横っ面にクリーンヒット。
「がぼっ(てめー、なにしやがる! 助けてやろうとしてんじゃねーか!)」
海面に差し込む光のおかげで顔が確認できた。
(神…崎…!?)
神崎は、サルにヤシの実をぶつけた始めたところから見ていた。
因幡が落下するところまで見たあと、海に飛び込んで助けに来たのだ。
(キレイにお見舞いしてくれやがって…! そんだけ元気あるなら自力で上がれっつーんだ)
神崎は降下し、因幡の足を傷つけないように慎重に引っ張った。
だが、思った以上に手強く、時間がかかる。
「…!」
見上げると、いつの間にか因幡は意識を失い、脱力している。
(クソ…!!)
空気の補給に行ってるヒマはない。
こんな時、漫画のように岩を蹴り割れたらどれだけいいか。
「…っ」
そろそろ息も限界が近い。
(…こういう時、残りの息を口移しで相手にやるシーンがなんかの漫画であったな…。………………ムリ。命の恩人が逆に命取られる)
呆気なく断念。
(抜けろコラァァァ!!)
片方の岩を反対に引っ張ると、わずかな隙間ができたのかようやく足が外れた。
(よし!)
神崎は因幡の右腕を自分の首にかけ、急いで上昇する。
こちらも意識が朦朧としてきた。
(あと少し…!)
そして、眩しい海面から顔を出した。
「よっしゃ!! 出…」
ザッパーン!
しかし、空気を吸う前に、タイミング悪く大きな波に飲み込まれてしまい、沈んでしまう。
(あ…、コレ…、マジでヤバい…かも…)
「…?」
絶対絶命かと思われたその時、一瞬海面の光を遮るなにかが通過した。
それは徐々に神崎と因幡に近づき、その手をとり、腕を首にかけて上へと上昇する。
(こいつ…)
顔は確認できなかったが、綺麗な長髪が目の前でふよふよと揺れたのがわかった。
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