01:全員、ブッ転がします。
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その騒ぎは3年の校舎にも伝わっていた。
慌ただしい生徒達に、3-Aの席で足を投げ出し、ヨーグルッチを飲んでいた神崎は首を傾げた。
「騒がしいな…」
「どうしたんだろうね?」
夏目も怪訝な表情で窓の割れた扉越しから、野次馬になって教室を通過していく生徒達を目で追う。
「調べてきましょうか?」
城山がそう言いだしたとき、携帯をいじながらゆっくりとこちらにやってくる人物がいた。
「2年にスゲー転校生が来たらしいぜ」
「姫川…」
姫川は薄笑みを浮かべながら城山と夏目の間を通過して神崎の前に立ち、持っていた携帯の画面を見せた。
「見ろよ」
それは、2年の教室にいた部下から送られてきた動画だった。
神崎を挟むように、夏目と城山も覗きこむ。
神崎は、教卓に立って中指を立てた因幡に注目する。
「この教卓に立ってる赤メッシュが転校生か?」
経緯はわからないが、真田兄弟達を相手にしているシーンだ。
決めゼリフを吐いたあと、突然、因幡は真田兄弟達越しを見て唖然とした表情を浮かべた。
“お…、おまえは…、石矢魔真のトップの…!!”
因幡のリアクションに、その場にいた誰もが後ろに振り返った。
そんな中、携帯のカメラだけが因幡を撮影していた。
「あ」
声をもらしたのは、神崎だった。
先程の因幡の驚きの顔が豹変し、悪魔のような笑みになった。
同時に、因幡は高くジャンプし、はっと見上げる真田兄弟の顔面を踏みつけ、それを踏み台に再び飛び、空中で阿倍の顔面に回し蹴りを食らわせ、着地と同時に目の前の下川に強烈なキンテキを食らわせた。
“グッ…ナイ……ッ(死)”
ほぼ同時に倒れる2年のトップ達。
その時間、5秒未満。
周りの不良達と、それを見ていた神崎組も唖然となる。
「……………」
“振り返ったってことは…、いるんだな? 真のトップってやつが…”
因幡は悪魔の笑みを浮かべたままそう問い、そのあと、その理不尽な強さを見せつけるように次々とその場にいる不良達を殴り、蹴りつけ、沈めていった。
撮影した生徒も巻き添えを食らったようだ。
画面が消えても、神崎達は暗い画面を見つめたまま動かない。
「まさか、あんな手でくるとはね…」
夏目は感心するように言った。
「あいつらが馬鹿なだけだ」
逆に、神崎は呆れていた。
姫川は携帯の画面を自分に向け、キーを操作し、同じ動画を見る。
「そいつは言えてるが、このあとは全員宣言通りその場に転がされていた。んで…、意識のある奴からオレ達、“東邦神姫”のことを聞いたらしい」
「久しぶりだぜ、そんなバカは…」
神崎は後頭部に手を組み、背もたれにもたれた。
「神崎さん、だったら、そいつ、ここに殴りこみにくるんじゃないですか?」
城山の言葉に、夏目は「だろうね」と頷き、言葉を続ける。
「東条君はバイトで学校いないし、クイーンはまだ戻ってきてないし…、だったら、神崎君か姫ちゃんを狙ってくるかもね」
「へっ、その時は即効病院送りにしてやるよ」
そう言いながら、神崎は机の端に置いていた新しいヨーグルッチに手を伸ばしたが、空をつかんでしまう。
「あ?」
怪訝な顔をしてそこを見ると、いつの間にかヨーグルッチがなくなっている。
「情報はやったんだ。情報料としてもらってくぜ」
神崎のヨーグルッチは姫川の手にあり、今まさにストローが差されたところだ。
背を向けて教室を出て行こうとする姫川に、神崎は眉間に深い皺を作り、声を上げた。
「ふざけんなてめぇ!! 頼んでもねえのにてめぇが勝手に教えた情報だろうが! 城山! 取り上げろ!」
「はい!」
姫川に指をさして下された命令に城山は従った。
姫川の右手首を素早くつかみ、引っ張り合いになる。
「ああ? 汚い手で触ってんじゃねーよ」
サングラス越しに城山を睨み、姫川はドスの利いた声を出して抵抗した。
「放せよデカブツ!!」
思わず姫川の右手に力がこもる。
ブシャアアアアッ
すると、握りしめられたヨーグルッチは、差されたばかりのストローから大量に噴き出し、中身をぶちまけた。
「あーあ…。てめーのせいだぞ」
姫川は城山を見上げるが、目を丸くしている城山の視線はその背後に向けられていた。
同じく、神崎と夏目も。
不審に思った姫川は肩越しに、その視線の向かう先に振り返った。
「…あ?」
そこには、いつの間に入ってきたのか、ヨーグルッチまみれでうつむいている因幡の姿があった。
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