01:全員、ブッ転がします。
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職員室で担任の数学教師と話したあと、早速、因幡は教師と並んで自分の教室へと向かった。
教師はチラチラと、隣を無愛想に黙って歩く因幡の全体を見る。
特徴的なオールバックに赤メッシュ、右耳には黒のイアリング。
一見柄は悪そうだが、その顔は整っていて、普通の男子生徒より身長も低い。
HRのチャイムが鳴ったというのに、廊下のあちこちに生徒がたむろしている。
なのに、隣を歩く教師は注意もしない。
むしろ、目を逸らし、関わらないようにしている。
そんな弱気な教師を横目で見、因幡は内心で呆れてため息をこぼす。
(こんな教師ばっかか…)
職員室にいた他の教師達も草食動物のように大人しかったことを思い出す。
しかし、因幡にとっては好条件でもあった。
2年の教室の前で止まり、教師に続いて因幡も教室の中に入る。
そこにいたのは、窓際で固まって雑談をする生徒達、席に座って携帯をいじっている生徒、呆けた顔で耳に入れたイアホンで音楽に聴き入っている生徒、様々だ。
教師が教卓の前に立ち、一度、全員の視線がそちらに移される。
普段なら、それは一瞬に終わることだった。
その教師の隣に因幡がいなければ。
「転校生を紹介します」
因幡は全員を見渡したあと、黙ったまま黒板に自分の名前を書き始める。
「なんだよ、マシな面してるかと思えば、ヤロウかよ!」
「女子じゃねーのかよ、女子!」
「ヤロウはすっ込んでろ!」
因幡は背中でそれを聞き、笑みを浮かべていた。
実は、それらが因幡にとって至福の言葉だからだ。
口元の笑みを隠さず、名前を書き終えた因幡は満足げに振り返った。
もう1度教室を見渡し、そして、教師が「自己紹介して」と言い切る前に息を吸い、声を上げる。
「名前、因幡桃矢! 性別、男! 年、16歳! 好きなもの、アメ!」
コブシを黒板に叩きつけ、全員の注目を浴びさせた。
いきなりの自己紹介にその場にいる全員は目を丸くし、嘲笑や呆れを見せる。
「ヒュー、熱いねェ!」
「春ボケかよ!」
「馬鹿は大歓迎だぜ!」
煽る生徒も現れたところで、因幡は肝心だと言わんばかりに「そして…」と言葉を続ける。
「目標、石矢魔統一!!」
その声は廊下にまで響き渡り、瞬間、完全に全員の顔色が変わり、座っていた者も同時に立ち上がった。
「ああああん!?」
その場にいた全員を敵に回し、予想以上のリアクションに、因幡はフッと鼻で笑った。
「てめー、頭わいてんじゃねーのかァ!?」
「おめーみてーなチビが石矢魔とれるかっての!」
「転校してきたからって調子に乗ってんじゃねーぞコラァ!!」
「ブッ殺すぞ!!」
「いっぺん死ね!!」
奥の席の生徒が大きく振りかぶり、手に持っていた、中身の入ったコーヒーの缶を投げつけた。
すると、因幡は素早く教卓に右手をつけて軽くジャンプし、教卓を乗り越える勢いで投げつけられた缶を蹴り飛ばした。
「うげっ!」
シュートされた缶は反対方向に返り、投げつけた本人の顔面に当たった。
それと同時に教卓を乗り越えた因幡が床に着地する。
教師も、教室にいる生徒達も、廊下から窺う生徒達も驚愕していた。
因幡はポケットからオレンジ味のポップキャンディーを取り出して袋を外し、口に含んだ。
「さて、とりあえず、ここからスタートだな。2年で一番強い奴はどいつだ!?」
そこで廊下から登場したのが、緑髪の双子―――真田兄弟と、スキンヘッドで傷だらけの男―――キラーマシーン阿倍、「グッナイ」とポーズを決めるグッドナイト下川が次々と現れた。
「オレ達兄弟を呼んだのはどこのどいつだァ!?」と真田兄。
「石矢魔統一なんてふざけたこと抜かしやがって!!」と阿倍。
「グッナーイ」と言わずともがな下川。
その周りの生徒も武器をとるなどして臨戦態勢だ。
因幡は「よっ」と後ろにジャンプし、教卓の上に立って楽しげで不気味な笑みを浮かべ、中指を立てた。
「まずはこの場にいる全員、ブッ転がす!!」
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