11:蹴り、つけました。
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ガシャアンッ!
「あぐっ!!」
廊下側の教室の窓ガラスを突き破り、因幡は掃除用具入れのロッカーに背中をぶつけた。
その衝撃に、ロッカーが凹む。
教室に足を踏み入れた伏見はただ静かに、ぐったりと前のめりになって座り込んでいる因幡を見下ろし、踵を返した。
だが、突然右足首をつかまれて足を止め、肩越しにそれを見下ろす。
「はぁ…、はぁ…」
息も絶え絶えな因幡が、伏見の足首をつかんでいた。
這ってきたのか、床には伸びた血痕がある。
「……そのまま…、寝てろ…。女を…いたぶる趣味は…ない」
「女扱いしてんじゃ…ねーよっ。それとも、男相手だと…、そんな趣味があるのか?」
因幡は伏見の上着の裾に手を伸ばしてつかみ、それを支えに気力を振り絞って立ち上がり、
「らぁっ!!」
伏見の背中に渾身のコブシをぶつけた。
だが、伏見の体はビクともしない。
それでも、悪あがきのように何度もコブシをぶつけた。
伏見にはまったく効いていない。
伏見は小さくため息をつき、振り返り際に因幡の左肩に裏拳をお見舞いした。
避けることができなかった因幡は、積み上げられた机にぶつかり、左肩を右手で押さえつけた。
「う…っ」
それでも、因幡は机を支えに立ち上がろうとする。
「…因幡…、あの時のこと…謝る…」
「ああ!?」
「気付いてる…はずだ…。稲荷さんの…正体に…」
「……………」
因幡は姫川に聞かされたことを思い出し、口を開く。
「…ああ。…姫川が調べてくれた…。聞かされたときは…、唖然としたけど…」
「……秘密を…守ってくれる…なら…、オレから…、豊川に…2度と手だししないよう…、言っておく…」
「…は?」
因幡の目付きが鋭くなり、怒りに任せてコブシを机に叩きつけた。
「寝言は寝ていいやがれ、伏見! このまま悪化していくあいつを放っておくつもりか!? ずっと騙し通せるとでも思ってんのか!? 目を覚まさせてやろうとは思わねえのか!!?」
「仲間なのに」と言おうとしたところで、伏見は遮るように言う。
「……オレじゃ…、ムリだった…」
その時のことを思い出して悔んだのか、伏見はコブシを握りしめた。
「だったら、オレ達があいつを叩き起こしてやるよ!!」
その力強い言葉に、伏見は目を見開く。
「因幡…」
「情けなんて犬にでも食わせろ。オレ達は不良だ。決着のつけ方くらい、ちいせぇ脳みそでわかってんだろ」
「……オレを倒さなければ…、豊川にも…勝てない…」
「…ようやく息がつける巣を見つけたんだ。もう…、潰させてたまるかよ…!!」
よろめきながらも、因幡は支えである机から手を離して立ち、口端の血を拭い、立てた親指を下に向けた。
「絶対、てめーをブッ転がす」
そう言って見せた因幡の瞳は、真っ赤に染まっていた。
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