10:蹴り、つけてきます。
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2人のメンバーを途中の踊り場で足止め役に仕向けた豊川は、屋上に来ていた。
柵からグランドを見渡し、黒狐の明らかな劣勢を眺める。
この校舎も、いつ攻め込まれるかわかったものではない。
屋上にも逃げ道は確保してある。
ペントハウスの上にロープがあったはずだ。
それを使って屋上から下りて逃げればいい。
そして、さらに勢力を上げて再び因幡への復讐を再開する。
バンッ!!
「!!」
鉄パイプを持ったまま、ペントハウスへと上がる梯子に手をかけたとき、突如屋上の扉が吹っ飛んだ。
屋上に足を踏み入れたのは、神崎と姫川だ。
「…宇賀と…倉野は?」
「「瞬殺してきた」」
2人は、踊り場で待ち構えていた黒狐の2人をたった数秒で階段から落としてきた。
豊川は梯子から手を離し、たじろいだ。
「てめーら…、こんなことして…、稲荷さんが黙ってると思うなよ!!」
「ああ? そのてめーらの大将はどこにいんだ?」
「あの人は、めったに人前に現れないんだ。けれど、命令は的確。オレはその人の言葉をそのまま他の奴らに伝達しているだけ…。それだけで…、黒狐はデカくなったんだ…!」
「豊川、思いこみも大概にしろ」
「「!!?」」
別の男の声に驚いた神崎と豊川は辺りを見回した。
豊川には聞き覚えがある声だ。
「い、稲荷さん!?」
しかし、その姿はどこにも見当たらない。
「どこ見てんだ」
声の出どころは、姫川だった。
口元に近づけているその手には、豊川の携帯が握られていた。
はっとした豊川は慌てて自分のズボンのポケットに手を突っ込んで探る。
「よっぽど慌てて逃げたんだろうな。…大事なモン落としやがって」
「姫川、なんだそれ? どういうことだ? 説明しろよ」
「そういやおまえにはまだ話してなかったな…。…稲荷秋久は、夜叉とは違う別のグループの奇襲に遭い、今も入院中だ。つまり…、今までの稲荷秋久は、全部こいつ(豊川)の自作自演だったんだよ」
「なに!?」
神崎は驚いて豊川に顔を向けた。
豊川はポケットに手を突っ込んだまま、うつむいている。
それを見据えながら姫川は続けた。
「携帯には変声機能がつけられてある。因幡に聞かせたのは…、あらかじめ録音しておいた声だ。…このこと、他の黒狐が知ったら、リンチ確定だな」
「……化け狐の皮が、はがれたってことか…」
今まで隠し通してきたことが露呈してしまえば、ただでは済まされないだろう。
だが、豊川は焦るどころか、諦めたように肩を落とし、白状した。
「…てめーを敵に回したのが間違いだったな…。…稲荷さんがやられたことは、オレと伏見しか知らない。…知らせちゃいけなかったんだ。だから…、オレが稲荷さんのフリをして、稲荷さんがやられたことを流される前にそのグループを潰してやった。徹底的にだ」
豊川はそう言いながら、鉄パイプの先端を引っ張り、ゴムのキャップを外した。
その部分は、斜めで切り取られたのか鋭く尖っている。
「黒狐は、オレと、伏見と、稲荷さんで作ったグループだ。…リーダーが闇討ちされたからって簡単に潰されて終いだなんて、あってたまるかよ…! あの人が戻ってくるまで…、黒狐は最強最悪でなきゃいけない…! オレが保たなきゃいけないんだ!!」
顔を上げた豊川の雰囲気が変わった。
等身以上の鉄パイプを構えるその姿は、ただの不良でないことを露わしていた。
「秘密は絶対だ。喉を潰し、舌を裂き、手足の指の骨を全部折ってやるよ。秘密を守るためなら、オレは…!!」
.To be continued