10:蹴り、つけてきます。
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「姫川!!」
壁に肩を打って顔をしかめていた神崎は叫ぶ。
伏見の顔は神崎に向き、「次は…おまえだ」と見た目に反した素早い動きで神崎の首をつかみ、壁に押し付けた。
「う…ぐ…っ」
その力強さに、持っていた金属バットを落としてしまう。
意識が遠のきかけたとき、伏見は背中に鈍い衝撃を感じた。
「!」
姫川にスタンバトンで撲られたのだ。
ガッ!!
肩越しにそれを見た隙をつき、神崎はそのアゴを爪先で蹴りあげた。
「っ!」
伏見は呻き、その手を緩めた。
神崎は自力でその手から抜け出し、伏見の後ろに回り込み、姫川と並ぶ。
「ゲホッ、がはっ」
首の圧迫感から解放され、神崎は噎せる。
後頭部からは血が流れ、わずかな目眩を覚えた。
「おい、意識あるか?」
「てめーこそ…、けほっ、あんだけ派手に吹っ飛ばされときながら…」
「ああ…、コレのおかげ」
姫川は裾を上げ、腹に隠し持っていたセラミック板を見せつけた。
それでも、背中から横転してしまっため、顔や腕は擦り傷があり、服も汚れてしまっていた。
「サックがなけりゃ、ヤロウのコブシ潰してるとこだ」
「また懲りずにんなモンを…」
呆れる視線を向ける神崎に、姫川は口端を吊り上げる。
「とりあえず、1個だけわかった。あいつ…、男鹿より格下だ」
「ムカつくクソヤロウと比べんじゃねーよ。余計に負けらんねーだろが」
神崎は額を伝ってきた血を手の甲で拭い、姫川とともに伏見と向かい合った。
「おまえら…全員…半殺し…」
振り返った伏見は指をさし、宣言する。
その言葉に、感情は読みとれなかった。
「やっぱりこいつ、鉄で出来てるって。オレ、けっこう…、いや、ちょっと本気で蹴ったし…」
「……そうだな…。実際、機械みたいな奴だよ、てめーは。…知ってて、まだこんなこと続けてんのか?」
「…!」
姫川のサングラス越しの鋭い眼差しと意味深な言葉に、伏見の目がピクリと動き、コブシを握りしめた。
その反応に神崎は、なんだ、と目を細める。
「……貴様…!」
伏見は姫川と神崎に向け、握りしめたコブシを振り下ろそうとし、神崎と姫川は構えた。
ガン!!
その時、伏見の後頭部に校舎の机が直撃した。
神崎と姫川は驚いて目を見開き、伏見はその衝撃に前のめりになったが倒れはしなかった。
「昔よりもタフになったか、伏見」
「おまえ…!」
「因幡…」
伏見越しを見た2人は、こちらに向かって歩いてくる因幡を見た。
伏見もゆっくりと振り返る。
「因幡…か…」
「……………」
向かい合う、伏見と因幡。
因幡は伏見と睨み合いながら、その後ろにいる2人に言う。
「神崎、姫川、豊川を追ってくれ」
予定外の頼みに、2人は一瞬だけ目を合わせて言い返す。
「ふざけんな! それはてめーの役割だろーが!」
「オレのシナリオじゃ、豊川を叩くのはてめーなんだ! 勝手に書きかえてんじゃねえ!!」
「ああ。だけど、そのシナリオ通りにいくためにはこいつが邪魔なんだ。…その前に逃げられちゃ、話終わっちまうだろ。…頼む」
その真剣な顔に、神崎と姫川は同時にため息をつき、肩を落とした。
「…因幡、早くこねえとオレが全部取っちまうからな」
「これ以上計画狂わせると、オレがキレるぜ」
2人はそう言い残すと、踵を返し、階段に向かって走った。
「逃がすか…!」
伏見は2人を追いかけようとしたが、因幡がそれを許さない。
「聞いた通り、てめーの相手はオレだっての!」
因幡は背後から伏見の左脇腹に左脚の爪先をめり込ませた。
その集中的な痛みに伏見は動きを止め、振り返り際にコブシを振るったが、因幡は後ろに飛んでそれを避ける。
「…豊川を…、見くびるな…。あいつは…、黒狐の…右腕だ…。奴ら…、半殺しじゃ…済まされない…」
伏見のその言葉に、因幡は不敵な笑みを浮かべた。
「てめーこそ、見くびってんじゃねーよ。あいつらはこのオレに勝ったんだ」
「…勝った…だと?」
「あ、信用してねーだろ。本当の話だ」
伏見は因幡の目を見て、はったりではないことを悟る。
「つまり…、オレが負ければ…、オレは…あいつらより…弱い…」
「そういうことだ」
因幡は爪先で床を軽く叩いた。
「面白い…!」
そう言いながらも、伏見は無表情のまま因幡に突進し、コブシを振り下ろした。
「っと!」
因幡は横に飛び、それをかわす。
的を外したコブシは木造の床を突き破り、1階の廊下が見えた。
「…残念なのが…、あいつらの活躍シーンが写メに撮れないことかな」
そう言って、因幡は床を蹴って伏見の真上に飛び、その顔面を踏みつけた。
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