09:独りぼっちじゃありません。
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伏見を含め、全員が開いた口が塞がらない状態だった。
「え…、なにが起こった今…!? あの豊川が…!」
因幡は混乱状態に陥った。
そこで城山が説明してくれた。
「説明しよう! 神崎さんはチェーンを引っ張られると、キレて力が普段の3倍になる!!」
「なにその設定!!?」
全員のツッコミを代表する因幡。
神崎は「ほっとけ!」と顔を赤くしている。
「いいから、てめーは早く手ェ冷やせ!」
姫川は神崎に駆けより、火傷を負った手をつかんで川につけた。
「ぐあっ、バカ! 握んな! 痛てーよ!」
神崎は姫川の肩を叩きながら痛みを訴える。
「おい! とりあえず逃げるぞ!」
姫川は因幡の、神崎は城山の肩を貸し合いながら走った。
それを阻止しようと黒狐のメンバーが来るが、姫川は熱された鉄パイプをがむしゃらに振り回す。
「どきやがれ!!」
だが、目の前に伏見が立ち塞がる。
厄介な相手に、因幡達は足を止めた。
「行かせ…ない…」
伏見が一歩踏み出したとき、横から誰かが足をかけ、伏見の巨体を転ばせた。
「!?」
何事かと見ると、そこに夏目が立っていた。
「夏目!?」
驚いて声を上げる姫川に、夏目は爽やかな笑みを見せる。
「血路はオレが開くから、走って!」
次々と、目の前に立ちはだかる敵を夏目が蹴り倒していく。
堤防をのぼり、ただひたすら走った。
*****
インターホンを何度も鳴らされ、先に家に帰ってきた因幡桃の弟・春樹が扉を半分開ける。
「どちらさ…ま」
そこに立っていたのは、怪我を負った自分の姉と4人の男だった。
「…もしかして、因幡君の弟?」
夏目の質問に、戸惑いながらも「はい…」と春樹は答え、姫川が連れている因幡に視線を移す。
「桃姉…!?」
必死に走ったせいでぐったりとしている。
病院はすでに黒狐のメンバーに待ち伏せされていたため、入ることができなかった。
「あらあら、どうしたの…?」
奥から現れたのは、因幡の母親だ。
寝起きなのか、髪がボサついている。
部屋に上げられた5人は1階のリビングで手当てを受けていた。
城山は床に敷かれた布団で、因幡はソファーで寝かされていた。
夏目は城山に包帯を巻き、春樹は因幡の額の傷にガーゼを貼り、姫川は神崎の右手に消毒液を含ませたコットンを押し当てている。
「痛ってえええ!!」
沁みる消毒液に神崎は叫ぶ。
「騒ぐなバカ。素手で焼きパイプ触るよかマシだろ。こんなもん」
「おっまえ、ぐりぐりすんじゃねーよ!;」
現状にそぐわず、ひとりそんな言葉を聞いてニヤニヤしている母親。
(なんだか卑猥…)
「…酷いやられ方だな…。また、奴らとモメたのか…」
春樹は水を含ませたタオルで因幡の顔を拭う。
「……黒狐のこと…、知ってるのか?」
姫川の問いに、春樹は振り返らずに答える。
「ああ。地元でも有名だったし、姉貴が関わってたのも知ってた…。…姉貴は……」
その時、春樹の口に因幡の手が覆いかぶさり、言葉を切らせる。
「…いい。春樹…、オレが全部話す…。全部…」
ソファーから上半身を起こした因幡は、神崎達を見た。
全員の視線がこちらに注目している。
隠し事はなしだ、と因幡は心に決めて口を開いた。
夜叉のこと、黒狐との抗争のこと、仲間に裏切られたこと、火傷のこと、復讐のこと、自分が女を捨てたこと。
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