09:独りぼっちじゃありません。
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因幡の頭から流れた血が足下にぽたぽたと落ちる。
露出した腕や頬にはアザが目立った。
裏道を抜けたあと、因幡と姫川は河原の堤防を歩いていた。
この先を行けば病院は近い。
「黒狐のこと…知ってんのか?」
「ああ。地方じゃ有名で最凶グループだ。…なにか因縁があるみてーだな」
横目で見られ、因幡は躊躇したが、話すことにした。
どうせ喋らなくても、あとで調べられるだろうと諦めたからだ。
「…昔住んでた町で…、そいつらと潰し合いをしたことがある…。最終的にオレひとりで潰したけど、最近また復活したらしくて、奴らはそれを根に持ってる」
「…とんだ逆恨みだ」
淡々と話した因幡に、そう返した。
「奴らはそういう奴らだ。プライド高い奴の集まりだから、逆恨みとわかっていても復讐は必ずやり遂げる。えげつない形で…。…だから…」
因幡は姫川の手から離れ、前を歩いた。
「ここまででいいし、もう…オレに関わらないほうがいい。…勝手にオレの方から関わってきてこう言うのもなんだけど…」
そう言って足を引きずるように歩き出したとき、肩を強くつかまれた。
「!」
「気に入らねえな。まるで…、オレ達がボッコボコにやられてしまうから、みたいな言い方じゃねーか」
振り返ると、こちらを睨みつける姫川の顔があった。
因幡も負けじと睨み返す。
「……そう言ってんだよ。いくら東邦神姫でもな。しかもおまえ、この間1年坊に負けたろーが」
「あの時の借りはきっちり返すつもりだ。たった一回負けて「はいこいつダメです弱いです」って決め付けてんじゃねーよ!」
「1回でも負けは負けだ! 特におまえは複数で行動して勝つタイプだろ! なんださっきのあの部下の数! 黒狐より少ねーじゃねぇか!」
「オレは金と頭脳を使って勝つタイプだ! てめーにはねぇ戦法だろうが!」
胸倉をつかまれ、因幡もその胸倉をつかみかえす。
「ああないね! 卑怯ならてめーより上だけどな! 放せやコラ」
「その卑怯な手でオレや神崎に勝ったことあったか!? オレより弱ぇ奴が!! てめーこそ放せや」
「あれはまぐれで勝ったって気付いてねえのか!? リーゼントの角度変えっぞあぁ?」
「1回でも負けは負けだっつったのはどこのどいつだ!? デコにラクガキすんぞ」
最後に幼稚な言葉を付け加えつつ、互いは一歩も譲らなかった。
「大体てめーにゃ関係ねーだろが。オレの問題だ!」
「あるね! どうせ頭の足りてねぇてめーのことだ。これ以上深入りされないように撲られ続けて終わりとか思ってんだろ! さっきの無抵抗さがそうだ!」
「…!」
図星を突かれ、今度はなにも言い返せなかった。
「てめーはもう石矢魔の不良だ。よそモンにナメさせんじゃねーよ。オレ達がそれを許さねえ」
因幡はゆっくりと胸倉をつかむ手を放した。
少し遅れて姫川もその手を放し、サングラスを指先で上げる。
「なにカッコつけてんだてめーは」
「!」
はっと振り返ると、息せき切らせる神崎と城山がそこにいた。
「さっきから聞いてりゃ…」
「神崎…、城山…」
「因幡…、このヤロウ、派手にやられてきやがって…」
神崎は因幡に近づき、その頭を小突いた。
「痛てっ」
「ちゃんと倍で返してきたんだろーな!?」
「い…、いや…、ロープで縛られてたし…」
「ああ!? ロープだぁ!? てめーなら自力で引き千切れんだろーが!! 言い訳してんじゃねえ!!」
人差し指で額を突かれ、「うっ」と仰け反ってしまう。
(なんで…、自分のことみたいに怒ってんだ…?)
額を押さえる因幡は理解に苦しんでいる。
「どこのどいつだこのヤロー!」
「落ち着けよ、神崎」
熱くなる神崎に対し、冷静な姫川はなだめようとする。
「とにかく、先に因幡を手当てしないと…」
城山は「大丈夫か?」と因幡の肩を支える。
「あ…、ああ…」
「どーこ行くのー?」
「!!」
いつの間に追いついてきたのか、黒狐に囲まれてしまった。
豊川は鉄パイプで軽く肩を叩きながらこちらにやってきて、嗜虐的な笑みを見せる。
その後ろには伏見も一緒だった。
4人は背中合わせになり、黒狐のメンバーを見る。
足止めのおかげか、先程よりは少なくなっていた。
「そこらへんのチンピラじゃ、オレ達全員を叩き伏せるのは不可能だ。オレ達は強い奴しか仲間に引き入れない」
「そういう…こと…」
豊川は鉄パイプを構え、伏見は両手のメリケンサックを見せつけた。
そして、豊川は携帯を取り出し、番号を押して通話モードにして耳に当てる。
「……ああ、稲荷さん…。はい…、「…やっていいよ」だってさ」
黒狐のメンバーが全員得物を手に一斉に向かってきた。
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