08:黒い狐にご注意ください。
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目が覚めても悪夢には変わらなかった。
「よう…、久しぶり…」
そこにいたのは、顔右半分を包帯で巻かれた豊川だ。
髪は最後に見た時より伸びて後ろでくくられていた。
「……2度とその面みたくなかったけどな」
因幡はロープで両手を背中の後ろに縛られ、両足もくくりられて転がっていた。
ここはどこだ、と辺りを見回すとどこかの地下駐車場であることがわかる。
車がないということは、使用中止されている場所だろうか。
黒狐のメンバーは30人ほどいる。
「…おまえ、今、因幡桃矢とか名乗ってあの石矢魔に通ってんだって?」
豊川は長い鉄パイプの先端を引き摺らせ、因幡の周りをぐるりと歩く。
「そうだけど?」
「まあ、その火傷じゃ、女の子もカッコもできないか…」
「どっちにしろ、するつもりはねーよ。…その顔どうした? えらく男前になったじゃねーか」
すると、豊川の顔が怒りで歪む。
「…あぁ?」
ガッ!
「…っく!」
背中を打たれ、鈍い痛みに顔をしかめた。
「ざけてんじゃねーぞ、コラ」
「痛…っ」
豊川は因幡の目の前にしゃがみ、その髪をつかんで引っ張り上げた。
その目は血走っている。
「てめーがつけたモンだろうが」
豊川は左手で包帯をずらし、その痕を見せつけた。
「…!?」
その部分は火傷になって残っていた。
「まだ痛むんだよ…、この火傷がさぁ…!」
「待てよ、オレがつけただと!?」
身に覚えがなかった。
「ふーん、しらばっくれるんだ? あれだけ派手に暴れておいて?」
ゴッ!
「っ!!」
鉄パイプで頭を撲られ、何度も体に打たれ続ける。
「忘れたとは言わさねえよ!? 仲間に火傷負わされたあと、てめーなにしたかわかってんのか!? てめーんとこのリーダーもろとも、てめーが病院送りにしたんだろうが!! あれはなんだったんだ!?」
(なに言ってんだ…? こいつ…)
あの時のことを思い出す。
火傷を負わされたあと、気がつけば黒狐や夜叉のメンバーが倒れていたのだ。
因幡はただひとりそこに立ちつくしていた。
まさかとは思っていたが、あれは全部自分ひとりでやったものか。
手元が滑り、豊川の手から鉄パイプが離れ、地面に転がる。
豊川は肩で息をし、汗を拭い、転がって動きを止めた鉄パイプを取りにいく。
「黒い狐は、一度噛みつかれれば、食いちぎる勢いで噛み返す…。やられたら数倍やり返せってことだな。2度と歯向かわないように…徹底的に…」
鉄パイプを拾った豊川はそう言いながら、また因幡の元へと戻り、振り上げた。
「巣(居場所)ごと潰してやる」
(巣…? そんなもん…)
目の前が霞む中、因幡の脳裏に、たまり場にしていた3年の教室が浮かんだ。
(そういや…、仮の巣にしては…、けっこう悪くなかったな…)
ガキィ…ン!
耳をつんざくほどの金属音が駐車場中に響き渡った。
「…女相手に、ちょっとやりすぎじゃねーの?」
そこに現れた人物に、因幡の目が大きく見開いた。
「姫…川…!?」
.To be continued