08:黒い狐にご注意ください。
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ジャンケンの結果、城山と因幡が近くのコンビニへお菓子とジュースを買いに向かった。
城山が持っているカゴに次々とポテチやチョコレートを放りこんでいく。
「うすあじとコンソメなら…」
「…コンソメ」
城山に選ばせ、放りこむ。
「えーっと…、ヨーグルッチは3個?」
「足りんっ。もう5個追加だ」
「…乳性飲料大量摂取でよく腹壊さねーよな、神崎の奴。オレなら吐き戻す;」
そう言いつつ、ポップキャンディーを大量にカゴの中に放りこんでいく。
「因幡こそ、そんなに食べてよくおなかがゆるまないな;」
他にも、ジュースはコーラといった炭酸を追加する。
レジに並び、会計は2人で割り勘。
ビニール袋をひとつずつ持って、肩を並べて帰り道を歩く。
「その…、いきなり押し掛けてすまなかった。家の人に迷惑かけてないか?」
「いいよ。母さん以外仕事や学校で出かけてるし…。母さんは徹夜続きだったから、夜まで絶対起きないし」
「……神崎さんと…、姫川も、心配していた」
「え?」
因幡は城山に顔を向け、城山は前を見ながら言葉を続ける。
「あのファミレスから、おまえ、見舞いに来てないだろ」
「…あ…、ああ…」
もうこれ以上関わるのは危険だと思ったからだ。
たまに病院の前に来ては様子を見に来ただけで中に入ろうとはしなかった。
「トイレから戻ってきてから様子が変だったのは、神崎さん達も気付いてる。…オレ達に、なにか隠してないか?」
横目で見られ、因幡はふいと視線を逸らす。
「……別に…。オレだってヒマ人じゃねーんだ。そんな…、毎回見舞いなんて…」
笑みを作ろうとするがうまくいかない。
無意識に早歩きになってしまう。
家へと向かう坂道に差しかかった。
「因幡…」
「ないから!!」
「!」
足を止めて怒鳴り声を上げた因幡に、城山も足を止める。
「なにも隠してないから! これ以上オレのことに突っ込んでくんな! 仲間ヅラすんな! どうせ、いざとなったらおまえだって裏切るんだろ! 夏目も、あの神崎や姫川だって…」
「因幡…?」
どうしてこんなに苛立つのか。
気がつけばそんなことを口走っていた。
因幡にとってその気づかいがとても心苦しいのだ。
たとえどんなに一緒にいても、所詮は他人。
自分の身が一番カワイイもの。
そんなことはあの時を境にはっきりと実感しているはずだった。
その身をもって。
理解できないのは、そんなことがあったのに、まだその他人と一緒にいることに固執している自分自身だった。
もうこれ以上長く浸ってはいられない。
「……城山…、あとで神崎達に言おうと思ったけど…」
少しためてから言い放とうとしたとき、
「!!」
城山の背後から、金属バッドを振り上げた人影が見え、すぐに城山の胸倉をつかんで引き寄せてかわした。
「な…!?」
空振りした金属バッドは電柱に当たった。
城山は驚いて振り返り、その存在に気付く。
曲がり角から現れる、15人の黒い長袖の服を着た男達。
「なんだこいつら…!?」
全員の手の甲には、黒い狐の刺青が彫られていた。
(黒狐…!)
見覚えのある刺青に因幡は構える。
「因幡…」
「!」
曲がり角から声が聞こえ、出てきたのは、2mを越え、額には横一線の傷がある細目の巨漢だった。
他の黒狐のメンバーは道を開ける。
「ふ…、伏見…」
伏見紅一。
豊川が右腕なら、左腕にあたる男だ。
「豊川…、稲荷さん…、呼んでる……」
片言で告げられ、因幡は「このバケモンが…」と冷や汗を流しつつ、口端を吊り上げる。
黒狐壊滅のとき、その頑丈さは知っていたので不意をついてコンクリートの塊をその頭にぶつけたり橋から突き落としたりなどムチャをやってようやく病院送りにしたことがある。
それが今ではけろりとしているのだ。
色んな意味で誰もが肝を冷やす話だ。
「因幡…、来い…」
「貴様…、因幡になんのようだ」
城山は因幡の肩をつかんで引き、伏見の前に出た。
2人が近づいてわかることだが、城山の方が体格負けしている。
「城山…!」
「おまえ…、邪魔…」
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