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夢小説設定
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「―――というわけだが、早速アプリゲームにハマり始めて、こっちが何もしてなくても電池が大量に消費されるっていうw」
なごりのスマホは早くも3分の1の電池を消費していた。
ジジ自体、ゲームを直接プレイしたことがなかったので、もう夢中のようだ。
“なごシリよ。次は我の勝利だ”
“フフン。返り討ちにしてやんよw”
スマホの中ではジジとなごシリが対戦中だ。
「なごシリとも仲良くなったようで、常に充電しとかないと文句言われるし」
「どうしたらいい?」と半泣きで尋ね、
「思いっきり持て余してんじゃねえか。作ったり、拾ったりした責任はとれよ」
因幡は呆れながらもっともなことを言い返す。
そこで気付いた事がある。
「―――ちょっと待て、ジジが生きてるってことは…」
期待が生まれる。
シロトたちも生きているのではないか、と。
「……ジジにはもう、シロト達を繋げておくだけの魔力も残っていない…。オレも期待したけどな…」
「……そうか」
シロトの願いは、同じ歴史を繰り返さないこと。
なごりがいる限り、もう同じ歴史は辿れないだろう。
因幡はポケットから靴紐を取り出し、もう一度、シロトの最後の言葉を思い出す。
『桃、ありがとう』
(シロト…、オレは信じてる…。ひょっとしたら、おまえがどこかで……)
だからなのだろう。
シロトの為に、嘆きの涙が出ないのは。
まだどこかで繋がっているような気がして。
「…ところで、噂で聞いたけど、おまえ、転校するって?」
「ん? ああ、そうそう。あとで言おうと思ってたんだ。海外の学校に行くつもり」
思い出したように頷くなごり。
「母親とも再会できたし、親子仲良く一緒に暮らせばいいのに。…離れてた期間が長かったんだろ?」
「まあ…。でも、オレも18の男子だし、一般的にはそろそろ親離れだろ? 適度な距離感でいいんだよ。それに海外に行っても、鮫島もいるし、いつだって里帰りが出来る。もちろんユキも連れてくつもりだ」
さぞや喜ぶことだろう。
ジジを倒すために、わざとそれなりの距離感を置いていたのだから。
もう2人の間に壁はない。
「それにしたってなんで海外?」
「オレも世界が見たいから。それに、海外だったら同性と結婚できるだろ? もうユキの体は成長して戻すことができない。…だから、責任を取る」
「責任って、ユキは責めねえし、おまえがしたいからするんだろ?」
図星を突かれ、なごりは珍しく顔を赤らめた。
普段の彼なら照れまで隠しきれていただろう。
それを見て因幡は安心して「ははっ」と笑った。
「向こうでも仲良くやれよ、バカップル」
「…バカップルと言えば…、あの2人の事はけじめついてんの? オレは引っ越し準備とかで忙しいから見送りできないけど」
「……………」
すぐに神崎と姫川の事を指されたのだとわかった。
ジジに見せられた夢を思い出す。
神崎達が留年してしまって学校に残り、いつもの日常を過ごす夢。
あれは因幡の望みが見せた幻影だ。
現実は違う。
出席日数さえ足りれば卒業できてしまうのが石矢魔高校なのだ。
別れの日は、桜の満開時だろう。
一度黙り込んだ因幡だが、小さく笑って返す。
「オレもな、卒業しねえといけねーんだ。あいつらから…―――」
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