92:本日は、青天です。
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「なぜ…!! なぜ貴様がそこにいる!!?」
ジジは目を疑った。
落下したはずの因幡が、自身よりも遥か高い上空にいるのだから。
追っていた男鹿も、目を丸くした。
「ジジ!! 決着つけんぞ!!!」
「戯言を!! 今の貴様にそんな魔力が残っているわけないだろう!!!」
その通りだ。
魔力は底を尽きかけているが、それでも、因幡の覚悟は揺らがない。
たとえ片足をなくしてでもやらなければならないのだ。
「その点なら、ご心配なく♪」
ジジより先にほくそ笑んだのは、なごりだった。
自身が持つ限界までの魔力をスマホに集め、因幡に向けて画面をタッチした。
「“オーバートランスミッション”!! 頼むぞクロト!!」
スマホから放たれた黒い光はうさぎの形を成し、光速でジジの横を通過して右靴に宿り、魔力を爆発的に増幅させた。
右靴に、白と黒の光りが混ざり合い、ドリルのように渦を巻く。
“シロト!!”
“クロト!!”
シロトとクロトの心も一つになる。
「な…んだと…!!?」
光は巨大化し、ジジに迫る。
後方では男鹿がコブシを構え、再び雷を纏った。
「「ああああああ!!!」」
“ゼブルブラスト”!!!
“ラビットシューズ”!!!
ジジは、特大の2つの閃光に挟み撃ちされた。
眩い光は空を包む。
“シロト…”
“…なんじゃ?”
“遠い昔のあの日、飢えた村人に食われそうになった、あの時、オレ達は突風のように速く逃げることができた…。いくら、力を回復させてたとしても、あそこまであの力は出なかったんじゃないか…”
“……………”
“オレ、思ったんだ…。あの時…”
シロトとクロトの脳裏に、大人の後ろに隠れて窺っていた少女の顔を、ふと、思い出した。
声を押し殺して泣いていたのだ。
『逃げて』
『ここから逃げて』
『おねがい』
『生きて』
それが少女の心からの願いだ。
“想い”によって力が発揮される2匹は、だからこそ逃げ切れたのではないかと考える。
“―――忘れて、人間を憎んでしまうほど、ジジ様の闇に当てられたのかもしれん…”
あの少女の想い出さえ。
“シロト…、やっと一つに戻れた”
“…クロト…”
互いに寄り添って生きてきたあの温かさを、今、ようやく取り戻すことができた。
心地良く意識が薄れゆく中、シロトは改めて感謝する。
“桃、ありがとう”
パアン!!!
魔界への入口とともに暗雲が散り散りに飛散し、朝を迎えた澄み渡る青空が広がった。
かつてこれほど身近に空を感じたことがあっただろうか。
「青……」
大の字になり、落下する因幡だったが、まるで空の中に飛び込んでいるような感覚を覚えた。
「いい天気だな」
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