92:本日は、青天です。
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「!」
ジジごとブッ飛ばしたと思っていた男鹿は、感じ取った気配に空を見上げた。
「おいおい…」
思わず口角を引きつらせてしまう。
暗雲の中心に、さらに真っ黒な穴が空いた。
そこから生温い風が流れ込んでくる。
空に出現した穴から、魔界の空気が伝わってきた。
因幡達は氷のかまくらから出る。
「まさかあの穴…」とフユマ。
「魔界に繋がってんのか!?」と因幡。
「ウソでしょ…」と邦枝。
「やっつけたんじゃねえのかよ!?」と神崎。
全員、茫然と空を見上げる。
「残念だ」
突如背後から聞こえた声に、因幡は反応が遅れた。
ドカッ!!
「…ッ!!?」
横っ腹に、バレーボールサイズの真っ黒な球体がぶつかってきた。
まるで巨牛がぶつかったような衝撃だ。
まともに喰らい、油断していた因幡の体は軽々と壁があった先へと吹っ飛ばされてしまう。
「な…!!」
「因幡!!!」
放り出された先は、何もない、空中だ。
カッと目を見開いた神崎と姫川は同時に駆け出し、絶壁ともいえる壊れた壁の向こうを見下ろした。
「ウ…ッ」
少し下で、因幡は、摩天楼の壁に張り付いていたイバラをつかんで落下を免れていた。
トゲが手のひらに食い込み、支える腕に血が伝う。
「…っ」
先の戦いで、体力も精神力も限界だ。
自身の体を支えているだけでも辛い。
「てめぇ…!!」
一度因幡が落ちた方向を見た男鹿は、ふよふよと宙を漂うモヤを鋭く睨んだ。
「我は…、終わらん……」
一度体を拡散させ、男鹿とベル坊の雷撃の直撃を免れたジジは、先程よりも一回り小さな球体に戻った。
「長きに渡る計画は潰えたが、終わらんよ。我は、この身が亡ぶまで何度も繰り返そう。100年、1000年かかろうとな…。再び、我の一族を作り出し、舞い戻る!!!」
残りすべての魔力を集めたのは、魔界へ繋がる空間を作り出すため。
そこへ逃げ込み、再び人間界へ君臨する機を窺いながら、魔界に身を潜める気だ。
卯月の歴史が作り出される前のように。
ジジなら可能だろう。
「因幡、つかまれ…!!」
一方、神崎は姫川と東条に手をつかんで支えてもらいながら、因幡に手を伸ばした。
あと一歩動けば、こちらが落ちてしまう。
ぱら、と足場も崩れそうで危うい。
「…っ」
つかまっているイバラにヒビが入った。
悟った因幡は、ジジと対峙する男鹿を見る。
「男鹿!!」
「!」
男鹿がこちらに振り返り、因幡はニッと笑った。
「オレなら大丈夫。だから、あと、任せた」
託すと同時に、イバラが崩れ、地上に向かって落下していく。
「!!!」
「因幡―――っ!!」
神崎が叫んだ。
男鹿は目を見開き、すぐに助けようとしたが、不気味に笑う声に足を止める。
「もう会うことはないだろう。精々、ひと時の平和を噛みしめろ。哀れな者どもよ」
嘲笑したジジは、自ら開いた空間へと逃げようとする。
「く…っ」
因幡を助けるか、ジジを追うか。
どちらも取り返しのつかない選択だ。
『あと、任せた』
因幡の言葉を反芻する。
「クソッ!!!」
ジジを追うことを選択した。
一瞬判断が遅れたせいでジジの方が速い。
かつん、となごりの傍に何かが落ちた。
男鹿が持っていた、なごりのスマホだ。
瞬発的にジャンプした拍子に落ちたようだ。
“なごり”
「! …タイミングがいいな」
クロトに声をかけられ、なごりは感じ取った気配に口角を上げ、スマホを取り出した。
「ああ。主人公なら、ここで快進撃を見せねーとよ。そうだろ、因幡」
画面をタッチすれば、なごシリが表示される。
“ご用件はなんでしょー? マスター”
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