08:黒い狐にご注意ください。
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扉を開けると、逃げたはずの仲間が隣の部屋でまとめて積み上げられていた。
「…ああ、そういうことか…」
逃がされたと思ったはずが、隣の部屋で待機していた他の黒狐のメンバーに重傷を負わされたのだろう。
全員、打撲が目立った。
因幡はひとり冷静に現状を把握した。
かつては一緒に助け合い、笑い合った仲間だった。
女扱いもなかった。
なのに、自分の身が危うくなれば、あれだけ信頼していたリーダーさえ、こうも簡単に裏切るものなのか。
「因幡…」
体を引きずり、最初に裏切った仲間が声をかけてきた。
「その…、助けを呼びに行こうとしたら…、奴らが…」
「いいよ。そんな気づかい。…どうせ助かっても呼びにいかなかったんだろ?」
「…え?」
顔が強張り、目が泳いだ。
図星だ。
「余計なことをしたら、あとが怖いからな」
黒狐はそんな連中だ。
誰もが報復を恐れ、元はたくさんいた夜叉のメンバーも次々と抜けてしまった。
中には、黒狐に寝返った者もいるくらいだ。
因幡はゆっくりと積まれた仲間の横を通り過ぎる。
「最後に…、救急車くらいは呼んでやるよ」
その背を見た仲間達はゾッと背筋を凍りつかせた。
服は焼け焦げて後ろ髪の毛先も焼けおち、そこに痛々しい火傷を見たからだ。
「……夜叉は解散だ。あとは、オレがやる」
因幡は振り返らずにそう言い残し、出入口の扉を閉めた。
のちに、黒狐のほとんどのメンバーは病院送りとなった。
だが、肝心のリーダー・稲荷は見つけられず、そのまま因幡は他の町へと引っ越した。
その町でも、うまくはやっていけなかった。
前に住んでいた町が近かったため、黒狐を潰したことが知れ渡ったからだ。
避ける者、利用しようとする者が続出し、ついには乱闘事件を起こし、退学となった。
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