92:本日は、青天です。
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ビシリッ、と崩壊の音が響き渡った。
城の壁に大きな亀裂が走ったからだ。
それは外からも窺うことができた。
「城が…!!」
春樹が指をさす。
それからすぐに、周りに異変が起き始めた。
動きを停止していたイバラが崩れ落ち、ガラスのように粉々に砕けていく。
「あいつら…、やったか…」
早乙女は崩壊を始めようとする氷の城を見上げた。
「!!」
日向は、砕けたイバラの欠片が青白く光っているのを見た。
何が起きようとしているのか。
警戒して一歩引こうとしたが、人の形を成していく光に引きかけた足を止める。
現れたのは、ジジに取りこまれたはずの卯月達だ。
気絶しているのか、全員倒れたままである。
光は、崩れゆく氷のイバラと伴い、次々と人の形を成した。
バッドフラグメントや、バッドパーツまで現れる。
「!」
稲荷の傍らにも現れるが、卯月ではなく、知っている顔の人物だ。
すぐに駆け寄って抱き起こす。
「しっかり…!」
「その人…」
寿は凝視した。
稲荷が抱き起こしたのは、最初にジジに取りこまれたはずの桜だった。
「う…」
わずかに揺すられた桜は、意識を取り戻した。
最初に、こちらを覗き込む稲荷の顔を見て、困惑の表情を浮かべる。
「桃…ちゃんは…。私……」
ジジによって氷漬けにされてしまったことまでしか記憶がない。
まるで悪夢を見ていたかのようだ。
稲荷は安堵させるように優しく微笑む。
「助かったのは、妹さんのおかげだ…」
「桜姉!!」
遅れて春樹が駆けつけてくる。
「春樹…」
「大丈夫!?」
膝を折って桜と目を合わせた。
桜は、家に置いてきたはずの春樹がこの場にいることに驚く。
「あなたどうしてここに…」
「オレのことはいい!! なんともないのか!?」
「え、ええ…」
服が汚れているということは、家を飛び出しここまで追ってきて、戦っていたのだろう。
察して、「春樹こそ…」と頬に手を当てた。
「桜…」
日向も駆け寄ろうとしたが、目の端に映った真っ白な髪に足を止めてそちらに振り向く。
少し離れた場所で、コハルがうつ伏せに倒れていた。
「…!!」
鼓動を大きく打ち鳴らし、足先がそちらに向けられる。
近づき、膝をついて震える手でコハルを抱き起こし、「コハル…」と呼びかけた。
「ん…」
夢の中から浮上して気が付いたコハルは、ゆっくりと目を開け、日向と目を合わせて微笑む。
「ただ…いま」
日向は込み上げた気持ちのままに、ぎゅっと抱きしめた。
コハルは夫の背中に手を回して優しい力で抱きしめ返す。
「心配かけて…ごめんなさい…。信じて待っててくれて…ありがとう……」
本当は、いつでも危険な城の中に飛び込みたくて居た堪れなかったというのに。
それでも、妻を信じてじっと耐えて待っていてくれたのだ。
「ああ…」
コハルも桜も戻ってきた。
ジジが魔力を解放せざるを得ない状況に立たされたからだ。
しかし、まだ終わっていない。
早乙女は目を細めた。
(ジジの魔力が消えてねぇ…!!)
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