91:しっかりつかんでください。
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「なごちゃん!!」
「なごり!!」
因幡となごりの戦いが終わると同時に、玉座の部屋に駆けつけてきたのは、フユマとユキだ。
なごりの身内が来てしまい、因幡はどう説明しようかと考える。
だが、なごシリからこちらの現状を把握しているフユマとユキは責めることなく、なごりに駆け寄った。
「なごちゃん! しっかり…!」
「ユキ……」
ユキの声に反応し、うつ伏せに倒れたまま、左目を開いてユキを見上げる。
こちらが困惑してしまうほど、不安げな顔がそこにあった。
自分の為に駆けつけて来てくれたのだと思うだけで、瞼の裏が熱くなる。
フユマはゆっくりとなごりの半身を起こした。
「…気を付けろ、まだ中に…」
肝心のジジが剥がれていない。
因幡に注意され、フユマが「え」と言葉を発すると同時に、ビクリッ、となごりの体が大きく跳ねた。
全員の視線が集まる。
“なごりぃ!!!”
「ぐ……っ」
心臓をわしづかみされるような感覚を覚えた。
ジジが再び支配しようと、内部でもがいているのだ。
「離れろ…!! ユキ!!」
脂汗を滲ませるなごりは、苦しげにのたうちながらも耐える。
しかし、なごりに意に反して伸ばされた右手は、脇にいるユキの首をつかんだ。
「う!!」
「ユキ!!」
フユマがなごりの手をつかんで外そうとするが、空いている左手がフユマを薙ぎ払った。
「ぐあ!!」
すぐさま反応した東条が、飛んできた身体を受け止めた。
打たれた衝撃が大きかったのか、フユマの口端から血が流れる。
「あいつまだ…!!」
観戦はここまでだ。
男鹿達が立ち上がった。
「は、く……ッ」
ミシミシと音を立てるユキの細い首。
ユキは苦しげになごりの手首をつかむが、か弱い力では外すこともままならない。
焦燥にかられ、なごりも自力で外そうとするが、石になったかのように右手が緩んでくれなかった。
「やめろジジ…ッ!!!」
このままではユキの首をへし折ってしまう。
内にいるジジはくつくつと笑った。
“ならば、我にすべてを預けろ。貴様は大人しく、従順な我の言いなりになればいいのだ!! クロトのようにな!! 貴様は永遠に我の傀儡だ!! 貴様も我の中で、理想の中で永遠を!!”
“…なごり”
「!」
昏倒しかける直前、ふと、クロトの声が聞こえた。
それは因幡とシロトの耳にも入った。
すると、なごりの手が徐々に緩み始める。
“!? クロト!?”
クロトの意思が、ジジを妨害しているのだ。
“なぜ邪魔をする…!!”
“なごりは…、オレとは違う…!!”
今度は、因幡がなごりに呼びかけた。
「なご、てめーはスゲェよ。それだけ頑張って耐えて来たてめーを、誰が嫌うんだ!?」
「ぐ…!」
「てめぇは、他人の作ったクソなウソで、家族を傷つける気か!!?」
「んなこと…っっ!! 許すわけねえだろうがぁあああ!!!」
“!!”
ユキの首から手が離れようとする。
「なご…ちゃ……」
「ユキ…!!」
ユキの手が、優しくなごりの手首に触れた。
「なご、今のてめぇ自身をしっかりつかんでろ。不安ならユキの目を見てろ。そこに映ってるのも、確かにてめーなんだ」
ユキの瞳には、必死に、ユキの為に抗おうとする自分自身が映っていた。
「頼む…!!」
なごりの合図とともに、立ち上がった因幡は左足を思い切り突き出した。
足裏はなごりの胸の中心を打つ。
だが、勢いのついたキレのいい蹴りだというのに、なごりに痛みはない。
バッ!!
代わりに、なごりの背中から黒いモヤの塊が飛び出した。
“ぎゃあああああ!!!”
ジジだ。
ジジの本体が、なごりの体から蹴り飛ばされた。
「ジジ…!! 覚えとけ、全部がてめーの想い通りにならねえってな!!!」
.To be continued