89:本当の。
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「ぐうううう!!!」
まるで何かを必死に押さえこんでいるようなジジの様子に、姫川は目を見開いて凝視していた。
「な、なんだ…?」
脂汗を滲ませ、鼓動を打つたびに、あるはずのない痛みがジジを襲う。
「引っ込め…!! 我に…逆らうなぁああ!!!」
苦悶の表情に、引きつった笑みが浮かぶ。
「こっちのセリフだバーカ…」
「!!」
今確かに、知った表情が垣間見えた。
右足から流れ出る波紋は止まらない。
姫川は腹部に別の熱を感じた。
「…?」
傷口を覆っていた氷が淡く光っている。
姫川だけではない。
男鹿、東条、邦枝、そして神崎の傷口を覆っている氷面も同じだ。
(―――あったけぇ…)
消えかけた意識が、温かな手に引き上げられるように浮上し、神崎は薄く目を開けた。
パリンッ
氷が砕けると、そこにあったはずの傷は完全に塞がっていた。
「傷が…」と姫川。
「癒しの魔力…?」と邦枝。
東条と男鹿も驚いていた。
ベル坊は嬉しそうに「アーイ!」と男鹿の顔に抱きつく。
“アイシングドロップ-ラビットティアーズ”
ジジは歯を食いしばり、胸の中心を強く押さえつける。
「勝手な…っことを…、が…っ、貴様…!!!」
がくがくと膝を震わせ、内で暴れる精神と戦った。
しかし、抵抗も長くは続かない。
「『負の力』だぁ…? 陰気クセェ!! 萌え上がる『腐の力』ナメんなぁああああああああ!!!」
「なんだそれはあああああ!!!?」
身体の主導権を勝ち取ったのは、因幡だ。
パァン!!!
1つの身体が、2つに分かれた。
そのまま床に倒れたのは、因幡となごりだ。
2人とも、その服装はジジに乗っ取られた時のままだ。
「因幡!!」
近くにいた姫川は声を上げた。
「因幡…」
痛みが残りながらも体を起こした神崎も因幡を見る。
「ど…うなったの…?」と邦枝。
「……………」と東条。
「……やっとか…」と男鹿。
東邦神姫と男鹿は、大の字に仰向けに倒れた因幡に近づき、見下ろした。
「……悪り…、待たせた…」
引きつった笑みを浮かべる因幡に、男鹿達の表情に安堵が見えた。
「遅すぎだっつの」
「へへ…」
差し出した男鹿の手を、因幡はしっかり握りしめた。
因幡達の少し離れた場所で倒れているなごりの指が、ぴくりと動いた。
見開かれたその目は、憎々しげに赤黒く染まっている。
まだすべて終わったわけではないようだ。
.To be continued