88:あなたにはいますか?
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ポタ…、と机に水滴が落ちた。
「因幡?」
神崎と姫川がぎょっとする。
「…あれ…? なんか…」
拭っても拭っても、涙がとめどなく溢れてくる。
いつもの日常を過ごしていた、いつものように楽しい日々を過ごしている、はずなのに。
「ど、どうした?」
神崎が尋ねると、因幡は首を横に振って「わからない」とか細く答えた。
「…けど…、すごく…苦しい…。悲しい……」
「悲しいんだよ…」と心情を打ち明ける。
「まるで、自分で大事な物を壊してしまったような……」
ぎゅっと締め付けられる胸の痛みが何かはわからない。
見えない痛みは訴えるように長引き、意味があるはずのない涙に困惑してしまう。
そして、また睡魔がゆっくりとやってくる。
なんでもない事だ、と言うように。
神崎の伸ばした手が、因幡の頭を撫でる。
「寝ろよ」
「疲れてんだ。ずっとケンカ続きだったからな」
姫川もそう言って笑った。
(ああ。そうだ、眠ってしまおう。きっと悪い夢を見てしまったんだ…)
机に伏して目を閉じようとした。
けれど、涙はいつまで経っても止まらない。
明日になれば、きっと忘れているはずで、またいつもの日常が訪れるのだと思っていた。
けれど、胸の痛みは増すばかり。
一度頭を起こして尋ねる。
「今は…、寝ちゃいけない気がするんだ…。なぁ、オレは…―――」
本当に、すべてが本当の自分なのか。
起き上がった因幡の頭を、また優しく撫でる手があった。
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