87:いつか見た夢の中で。
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男鹿とシルバが戦っていたフロアには、電撃を纏ったコブシを食らい、煤まみれで仰向けに倒れたシルバがいた。
完全に気を失っておらず、小さく呻く。
「っぐ…」
(一体、蝿の王からどれだけの魔力が消費されただろうか…)
自身の役目はあくまで足止めと、男鹿とベル坊の体力と魔力を削ることだ。
(我輩の役目はここまで…。あとは…、こちらが体力を取り戻してからゆっくりと傍観させてもら……)
「……なぜ?」
思考を一時停止させ、口から疑問がこぼれた。
足先と指先が徐々に氷漬けになっているからだ。
シルバだけではない。
東邦神姫との戦いに敗れた、『バットパーツ』全員が凍り始めたのだ。
唯一意識をしっかりと持っているダッチは、手のひらが氷に覆われながら、「そうか」とひとり冷静に納得していた。
「『バッドパーツ』…。所詮はジジの一部からもらった魔力だ。使用が終了すれば、『フラグメント(欠片)』の奴らと同じ末路だ。オレ達が勝ったとしても」
侵食する氷は、胴体を覆った。
それでもダッチは大人しくしていた。
もう今更暴れても無駄だと悟ったからだ。
「×××。最後に面白ぇ奴と戦えたから、いいけどよ」
*****
男鹿は自ら開けた天井の穴から、玉座の前にある廊下へと出て来て、神崎達と再会した。
「近道だったか。おまえら早ぇな」
「遅刻だぞコラ」
東条は男鹿に近づき、手を差し出して穴から引っ張り出す。
「…全員そろったようね」
全員傷だらけだが、怖気づいた者はひとりもいない。
扉と向き合い、睨みつける。
この扉の向こうに、ジジに身体を乗っ取られた因幡が待っているのだ。
「!」
氷の塵が扉の隙間に吸い込まれるように入っていく。
また誰かが、ジジの魔力の餌食になったのだろう。
神崎はコハルがやられてしまったことを思い出し、コブシを握りしめた。
「行くぜ」
男鹿、東条、神崎、姫川は扉の前に立ち、同時に扉の戸が吹っ飛ぶ威力で蹴った。
バン!!
蹴り飛ばされた2つの戸は、玉座の両脇に吹っ飛んで砕けた。
玉座に腰掛け、肘掛に頬杖をついて待っていたのは、因幡の顔で微笑むジジだ。
「なごりが戯れていたゲームとやらで見たことがあるな、この光景…。待ち構えていた魔王はこう言うのだ。「よくぞここまで辿りついたな。褒めてやろう」。やってきたのは勇者ではなく、貴様も魔王だがな」
皮肉を込めて言うジジは、くつくつと笑った。
そして男鹿達に嘲笑の眼差しを向け、言葉を続ける。
「さて、セーブとやらは済ませて来たか?」
.To be continued