85:コブシの重さ。馬鹿の覚悟。
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「……いい加減に゛しろ…!!」
タンの苛立ちは募るばかりだ。
何度沈めても、東条は何度も身を起こして立ち向かってくる。
「ぁああああ!!!」
苛立ちのあまりに叫び、両腕を振り下ろして東条を床に叩きつけた。
「……っ……」
それでも、東条はまた立ち上がる。
血を吐きだしても、足がもつれそうになっても、視界が揺れても、何度も。
タンはうろたえ、たじろいだ。
「な゛ぜ…、立てる…!? だるまみたいに゛、な゛んども…!!」
「負けるわけにはいかねえからだ…」
東条は当然だと言わんばかりに笑みを浮かべて答える。
「倒れろ…!!」
何度も。
「倒れろよ…!!」
何度も。
「倒れてくれよ!!」
何度も、東条は立ち上がる。
一抹の恐怖を覚えたタンは、ついにしびれを切らし、自らのコブシで連続で殴りつける。
「どうしてそこまであの゛女゛に゛こだわる!!? あいつは一度おまえらから遠ざかろうとした…!! 追いかける必要がな゛いはずだ!! その価値も…!!」
東条がうつ伏せに倒れる。
しかしまた起き上がろうと床に両手をついた。
「価値ってなんだ…? オレはあいつとも喧嘩してぇし、何より、「もったいねぇ」と思っただけだ」
「…もったいな゛い?」
「因幡はまだまだ強くなる。男鹿と戦ったあとなら尚更だ。もっともっと力をつけるはずだ。オレにはわかる…!! 相手が強くなるほど何度もケンカふっかけたくなるじゃねえか!! ジャマするバカヤロウは容赦しねぇ」
「そんな゛垂れ下がったコブシで、な゛に゛ができる!!?」
言い放たれたと同時に、東条は両手のコブシを振り上げ、ガンッ、と床が割れるほど強く打ちつけた。
「!?」
そして、立ち上がると同時に、今度はタンに向かって右のコブシを振るう。
(馬鹿が…。またボールの゛ように゛弾き返して…)
重力操作で東条のコブシを軽くしようとした。
ゴッ!!
「!!?」
だが、東条のコブシはタンの左頬にめり込み、ブッ飛ばした。
衝突した壁にはヒビが刻まれ、床に落ちる。
頭の中は疑問だけが浮かんでいた。
(な゛…、力が…、発動しな゛い…!!?)
「道を開ける事くらいはできる」
ポタポタと東条のコブシから血が滴り落ちた。
それを見たタンは気付く。
同時にゾクッと戦慄し、鳥肌を立てた。
(コブシの皮膚ごと傷つけて、無理やりオレの゛“ライムグラビティ”を剥がした…!!? 正気か!! こいつ!!?)
東条は上半身の服を脱ぎ、腹を覆っていた霜を引き剥がした。
コブシの傷を見ると、再び霜に覆われそうになっていたので、また床にコブシを打ちつけて剥がしてからタンに突進して殴りつける。
「ぐぁ!! がっ!」
(バケモノ゛か!!?)
ギラついた瞳に睨まれ、身が竦む。
「おまえ、コブシが死ぬ゛ぞ…!!」
「死なねえよ。たとえ壊れようが、背負ってるモンの重さは届く」
「く…っそぁあああ!!」
ゴッ!!
タンのコブシが東条の眉間を殴りつける。
しかし、今度は倒れなかった。
殴られた個所から血を流そうが踏み止まり、歯を食いしばって思いっきり振りかぶる。
「おおおおっ!!!」
ゴガンッッ!!!
真正面から渾身の一撃を顔面に喰らったタン。
頭部は床に完全にめり込み、ピク、ピク、とわずかに身体が痙攣したあと、動かなくなった。
タンが気を失ったことを証明するかのように、タンの両腕と、東条に張り付いていた霜が剥がれ落ち、消えてなくなる。
東条はそれを一瞥し、脱いだ服を拾って着直し、背を向けて扉へと歩みながら言い放った。
「おまえのコブシは、軽すぎてつまらん」
東条VSタン―――勝者・東条英虎
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